霧と噴霧図鑑

水圧だけで霧にする(霧の作り方)

水を細い穴から押し出し、薄い膜にして裂く方式です。圧力を上げるほど粒は細かくなりますが、細かくなり方は次第に鈍ります。水そのものの圧力だけで霧を作る方式です。旋回室で回された水が穴の先で薄い円錐形の膜になり、その膜が糸に、糸が粒に切れていきます。空気を送る系統を持たないので…

高圧噴霧と低圧噴霧(霧の作り方)

噴霧栽培は、霧の作り方でいくつかに呼び分けられます。低圧・高圧・超音波という三つの整理が、総説でよく使われます。呼び分けは装置の作りから来ます。Tunio ら 2021 は機械式の霧化器を空気を使う式とエアレス式に分け、エアレス式をさらに高圧と低圧に、圧電式の超音波フォガーを高・中・低の周波数に分けました。…

空気で砕く霧化(霧の作り方)

空気の流れで水をちぎる方式です。低い水圧でも細かい粒が作れる代わりに、空気を送る装置が別に要ります。水と空気を別々に送り、出口で速度差をぶつけて液をちぎる方式です。液の柱や膜が空気のせん断で波打ち、糸になって切れます。水圧を上げずに細かくできる代わりに、空気圧縮機と空気側の配管が要ります。…

超音波で霧を立てる(霧の作り方)

振動子で液面に波を立て、その先端から粒を飛ばします。周波数が高いほど粒は細かく、数µmの霧になります。液面に超音波を当てると細かい波が立ち、波の山の先端がちぎれて粒が飛びます。霧が液面から立ちのぼる形で、圧力で裂く水圧だけで霧にするとは力の出どころが違います。Lang 1962 は波長を…

回転ディスクで飛ばす(霧の作り方)

回る円板の縁から液を投げ出して粒にする方式です。回転を上げると粒は細かくなり、流量を上げると分裂の形が変わります。回る円板の中心へ液を落とし、遠心力で縁まで運んで投げ出します。Hinze と Milborn 1950 は、流量を増やすと分裂の形が直接滴から糸状へ、さらに膜状へ移ることを示しました。…

静電気で吸い寄せる(霧の作り方)

粒に電気を帯びさせ、根の表面へ引き寄せる考え方です。噴霧栽培での報告はまだ少なく、装置の試作が中心です。霧そのものを作る方式ではなく、できた粒に電荷を乗せて的へ引き寄せる考え方です。Cao ら 2025 の総説は帯電のしかたを接触・コロナ・誘導の三つに整理しています。接触は液に電極を触れさせる形…

液膜が粒になるまで(霧の作り方)

霧は、液の膜が糸になり、糸が切れて粒になります。この起きやすさは、動かす力と表面張力の釣り合いで決まります。どの方式でも、液はいきなり粒にはなりません。まず膜や糸に伸ばされ、そこが波打って切れます。これが一次分裂で、できた粒が気流の速度差でさらに割れるのが二次分裂です。切れやすさは動かす力と表面張力の釣り合いで決まり…

液が変われば粒も変わる(霧の作り方)

同じノズルでも、液が違えば粒径は変わります。カタログの粒径は清水で測った値で、養液や展着剤では同じになりません。粒径を決める式には、表面張力・密度・粘度が必ず入ります。だから同じノズル・同じ圧力でも、液が変われば粒径は変わります。表面張力が下がれば新しい表面を作る抵抗が減って粒は細かくなり…

ザウター平均径(粒径と分布)

体積と表面積の比が同じになる球の直径です。表面のやりとりが効く場面では、この値で霧の粗さを言います。霧の集まり全体を、球ひとつで代表させるときの直径です。体積を表面積で割り、6を掛けた値として定義され、記号は D32 と書きます。ひと粒の話ではなく、その霧と同じ体積・表面積の比を持つ球を考えます。…

体積中位径(粒径と分布)

液の体積の半分が、これより小さい粒に入る直径です。農業の噴霧では、この値で粒の大きさを言うのが普通です。液の体積を小さい粒から積み上げ、半分に達したところの直径です。DV50・Dv0.5・VMD はどれも同じものを指します。平均ではありません——体積の累積で切った位置なので…

粒径分布の幅(粒径と分布)

霧は一つの大きさではなく、幅を持った集まりです。幅は (DV90−DV10)÷DV50 のスパンで表します。霧は一つの大きさの粒でできてはいません。(DV90−DV10)÷DV50で幅を一つの数にしたものがスパンで、相対スパン係数(RSF)とも呼ばれます。値が小さいほど粒がそろっているという読み方です。代表値だけでは…

個数基準と体積基準(粒径と分布)

同じ霧でも、数で数えるか体積で数えるかで値が変わります。小さい粒は数では大多数でも、体積ではごくわずかです。直径が半分になると体積は8分の1になります。だから個数で数えた分布は細かい側に、体積で数えた分布は粗い側に山ができます。同じ霧なのに、山の立つ場所が別になるということです。…

粒径の測りかた(粒径と分布)

粒径はレーザー回折や位相ドップラー法で測ります。圧力・距離・液をそろえないと、出てきた数字は比べられません。よく使われるのは三つです。レーザー回折は霧全体に光を通し、体積で重みづけした分布を返します。位相ドップラー法は1粒ずつ径と速度を読みます。感水紙や高速度カメラは跡や飛んでいる姿を画像で数えます。…

噴霧の粒径分類(粒径と分布)

農薬散布の世界には、粒の粗さを言葉で表す分類があります。極細のVFから極粗のUCまでの階級です。粒の粗さを言葉で表す階級で、極細(VF)から粗い側へ順に並びます。区分に使うのは体積中位径です。µm の境目を直接決めた表ではありません——圧力まで決めた基準ノズルの噴霧と比べ、どの区間に入るかで階級が決まります。…

落ちる粒と浮く粒(粒径と分布)

粒が落ちる速さは、直径の二乗におよそ比例します。10µmの霧は1秒に数mm、100µmでは数十cm落ちます。静かな空気の中で粒が落ちる速さは、v=ρd²g÷18µというストークスの式で近似できます。直径の二乗で効くので、大きさが少し違うだけで挙動が分かれます。あくまで空気が止まっている前提で…

小さすぎる霧は届かない(粒径と分布)

細かいほど良い、とは言えません。数µmの霧は空気の動きについて回り、根に触れないまま流れていくことがあります。細かい粒ほど空気の流れによく乗り、根の手前で流線ごとよけてしまいます。繊維に粒が捕まる研究では捕まりにくさが底になるのは 0.3 µm 前後で、そこから下は拡散が効き始めます(Zaid ら 2026)。…

間欠噴霧(当てかたと間欠)

噴霧は出しっぱなしにせず、区切って当てます。休みを挟むことで根が空気に触れ、装置の負担も下がります。噴霧栽培は、根を液の霧に連続または断続してさらす栽培として定義されてきました。実際の装置では出す時間と休む時間を組にして繰り返すのが普通で、これを間欠噴霧と呼びます。休みのあいだに根の表面の水膜は薄くなり…

噴霧時間の長さ(当てかたと間欠)

1回にどれだけ出すかが、根に届く量を決めます。装置によって数秒から数分まで、桁が違うほど幅があります。1回の噴霧を何秒・何分続けるかがオン時間です。間欠噴霧の周期のうち実際に液が出ている側を指し、次までの間隔である休止時間の決めかたとは別の数字です。数秒で切る装置もあれば、数分のあいだ出しつづける装置もあり…

休止時間の決めかた(当てかたと間欠)

次の噴霧までの間隔は、根が乾く速さから決まります。レタスの試験では、15分より30分の間隔が良い結果でした。次の噴霧までの休みがオフ時間です。根の表面の水膜が薄くなるまでが待てる長さで、その速さは根圏の湿度・温度・気流で変わります。湿りが抜けない室では、同じ分数を空けても根は乾ききりません。分数そのものより…

スプレー角と到達距離(当てかたと間欠)

噴霧は円錐状に広がり、離れるほど薄まります。角度が広いほど手前で重なり、遠くには届きにくくなります。ノズルから出た霧は円錐に広がります。その開き角がスプレー角で、離れるほど当たる面は広く、同じ量が薄く配られます。角と距離から範囲を計算する幾何は噴霧角と届く範囲に置きました。ここで見るのは、カタログの角も粒径も…

根の中まで入るか(当てかたと間欠)

根の塊は、内側ほど霧が入りにくい場所です。外側の根が先に粒を捕まえ、奥は届かないまま終わることがあります。根の塊を、細い繊維がぎっしり詰まった層と見ると、霧の入り方が読めます。空気と一緒に入ってきた粒はさえぎり・慣性衝突・拡散・重力沈降のどれかで根に捕まり、捕まった粒はそこで止まります。だから外側の根が先に取るほど…

跳ね返りと壁の水膜(当てかたと間欠)

当たった粒の全部が根に残るわけではありません。跳ね返った粒は壁や床に水の膜を作り、そこから流れ落ちます。面に当たった粒は、そのまま付くとはかぎりません。付着・跳ね返り・分裂の三つに分かれ、どれになるかは粒の速さと大きさ、面のぬれやすさと形で決まります。すでに濡れている面では、当たった粒は膜へ吸い込まれるか…

チャンバーの中の風(当てかたと間欠)

霧は、風のあるほうへ運ばれます。送風や隙間の流れがあると、狙った場所の手前で霧が偏ります。ノズルの勢いが効くのは出口の近くだけで、そこから先は周りの空気が霧を運びます。送風機の風、温度差による対流、隙間から入る流れが重なって、狙った場所と、実際に霧が濃い場所がずれます。細かい粒ほど空気の流れに沿うので…

飛んでいる間に蒸発する(当てかたと間欠)

粒は飛びながら小さくなります。噴霧室の湿度が高いほど蒸発は遅く、乾いた空気ほど早く痩せます。蒸発は粒の表面で進むので、乾いた空気の中では直径の二乗が時間に対してほぼ直線的に減るという近似が使われます。これがD²則です。気温が高く湿度が低いほど、そして粒が細かいほど、消えるまでの時間は短くなります。…