小さすぎる霧は届かない

粒径と分布

細かいほど良い、とは言えません。数µmの霧は空気の動きについて回り、根に触れないまま流れていくことがあります。

どんな仕組みか

細かい粒ほど空気の流れによく乗り、根の手前で流線ごとよけてしまいます。繊維に粒が捕まる研究では捕まりにくさが底になるのは 0.3 µm 前後で、そこから下は拡散が効き始めます(Zaid ら 2026)。噴霧の霧はどれもその上にありますが、数µmまで下がると慣性で当たる力は弱まります。細かいほど良いとは言えない、物理の側の理由です。

粒径と圧力の目安

Tunio ら 2022(IJABE)は4.89・11.24・17.38・26.35 µmの4種を噴霧5分、間隔 15/30/45/60 分、バターヘッドレタスで比べました。いちばん細かい 4.89 µm の超音波で霧を立てる方式はどの間隔でも育ちが振るわず、良かったのは空気で砕く霧化の 11.24 µm を30分間隔で使った区でした。

根に届くまで

反対向きの結果もあります。Lee ら 2026 ではVMD 141〜733 µmの範囲で細かいほど乾物の生産効率が高く、6水準の平均どうしで r=−0.67、P=0.147でした。著者自身がノズル級は粒径・噴霧角・流量・詰まりやすさを同時に変えると断っています。奥まで入るかは根の中まで入るかの話でもあります。

詰まりと劣化

細かい霧を作る口ほど流路が細く、詰まりやすくなります。Lee ら 2026 の作業記録では、いちばん細かいノズルが作期に1回ほど詰まり、粗い級ではほとんど起きませんでした。これは対照を置いた試験ではなく現場の記録です。細かい側を選ぶなら、ろ過と点検の手間も一緒に選ぶことになります。塞がったときの見え方はノズルから霧が出なくなるにあります。

誰が、何を、どう測った値か

Tunio ら 2021(Agronomy 11(1):97)と 2022(IJABE 15(1):79-88)は、同じ研究グループがバターヘッドレタスで行った試験です。Lee ら 2026 は韓国・平昌のツボクサで、作物も装置も期間も違います。2組の結果は逆を向いています。細かさに底があるとしても、どこが底かは霧は細かいほどよく育つ?のとおり決着していません。

解説動画: Aeroponics Droplet Size for High-Pressure Systems/High Tech Gardener

なぜ50なのか: 動画は、高圧の噴霧栽培で狙う粒を平均50マイクロメートルと置きます。人の髪の太さがおよそ100マイクロメートルで、その断面に2粒が並ぶ細かさだ、という言い方で大きさを説明します。ただし、なぜ50がいちばん良いのかは理由がすべて分かっているわけではないとも断り、NASAの研究がこの値を示していると述べるにとどめます。

浮いていられる大きさ: 根に触れるには、霧が空中に留まっている必要があると続けます。気温で動くものの、おおむね100マイクロメートルを下回れば空気中に漂える、という目安を挙げ、噴いてすぐ底に落ちる粒は何の役にも立たないと言います。地上の重力なら50マイクロメートルの粒が8秒ほど漂う、というのが選んだ理由です。落ちる粒と浮く粒の話です。

根毛の3倍まで: 粒の大きさは根毛の太さとも比べられます。動画は根毛の直径を17マイクロメートルとし、その3倍あたりまでに収めるのが目安だと述べます。大きすぎる粒は根毛をよけて回り込み、小さすぎる粒は当たっても跳ね返ってしまう。17の3倍は51で、ここでも50に近い値に戻ってくる、という筋道です。根毛の量にも関わる話です。

跳ね返る乾いた霧: ドライフォグと呼ばれる霧は10マイクロメートル以下の粒が大半を占めます。動画は、この大きさになると表面張力が強く、面に当たっても卓球の球のように跳ね返って水分を置いていかないと述べます。当たっても濡らさないなら養分も渡らないので、そこまで細かくする装置は根に向けて使わない、という判断です。

奥まで届く勢い: 最後は勢いの話です。細かい粒はノズルを出る瞬間こそ速いものの、すぐに減速して、密に絡んだ根の塊の内側まで届かなくなると述べます。届かない中心が腐る元になる、というわけです。また50マイクロメートルは平均値で、その前後に散らばった幅が根の育ち方の幅にもなると結びます。根の中まで入るかへつながります。