液膜が粒になるまで

霧の作り方

霧は、液の膜が糸になり、糸が切れて粒になります。この起きやすさは、動かす力と表面張力の釣り合いで決まります。

どんな仕組みか

どの方式でも、液はいきなり粒にはなりません。まず膜や糸に伸ばされ、そこが波打って切れます。これが一次分裂で、できた粒が気流の速度差でさらに割れるのが二次分裂です。切れやすさは動かす力と表面張力の釣り合いで決まり、それを一つにまとめた無次元数がウェーバー数です。粘りの効きはオーネゾルゲ数が受け持ちます。液の側の話は液が変われば粒も変わるへ。

粒径と圧力の目安

ウェーバー数は密度×速度の2乗×代表長さ÷表面張力、オーネゾルゲ数は粘度÷(密度×表面張力×代表長さ)の平方根で、後者はウェーバー数の平方根÷レイノルズ数に等しくなります。回転式では Boize と Dombrowski 1976 が体積中位径は回転数の−1.09乗に比例、Chen ら 2024 が無次元径は Re の−0.814乗と St の−0.530乗に比例という式を出しました。

根に届くまで

根に届くまでに、分裂と合体がもう一度起きます。細かい粒ほど空気と一緒に動くので、根に当たらず気流をよけて通り過ぎます。飛んでいる間に表面から水が減れば、出口の粒径のまま届くわけでもありません。よけるか捕まるかの分かれ目はストークス数と捕まる割合、蒸発の分は飛んでいる間に蒸発するが受け持ちます。

詰まりと劣化

分裂の条件が崩れると、粒径より先に噴霧の形が崩れます。穴が摩耗して広がると膜が厚くなり、切れる位置が遠のいて粒は粗くなります。異物が一部を塞ぐと膜が非対称になり、片側だけ筋のような太い流れが出ます。霧が片側にしか届かないと霧ではなく水滴が落ちるは、どちらもこの膜の崩れ方から読めます。

誰が、何を、どう測った値か

分裂の三形態は Hinze と Milborn 1950 の回転カップの観察、相関式は Chen ら 2024(Frontiers in Plant Science 15:1470745)の表にまとめられています。無次元数の定義そのものは Lefebvre と McDonell の噴霧工学の教科書にある公知の内容です。いずれも工業と農薬散布の測定で、噴霧栽培の装置で確かめ直した例は見当たりません。

解説動画: Introduction to Atomizers and their design-1/nptelhrd

霧にかかる代価: 動画は、噴霧に入れた力の行き先を二つに分けます。ひとつは飛んでいく粒それぞれが持つ運動のエネルギー、もうひとつは細かく分けたぶん増えた表面の側です。表面を広げるのに要る分はごく小さく、大半は粒を速く動かすほうに取られると述べます。細かくしたいだけなら速さは要らないはずで、そこが噴霧の割の悪いところだ、という置き方で講義は始まります。

一次分裂と二次分裂: 圧をかけた液を通路で加速し、流れが不安定になったところで塊に割れる——ここまでが一次分裂だと動画は言います。できた塊がさらに割れるのが二次分裂で、こちらはまわりの流れしだいで決まり、どのノズルから出たかはもう関係しないと述べます。設計で効かせられるのは前半だけという切り分けが、このあとの話の枠になります。

穴から出た柱が切れる: 軽油の噴射弁を例に、丸い穴から出た液の柱は、止まっている空気との速度差で表面が乱れ、横から粒がはぎ取られていくと説明します。できる粒は穴の直径より小さいのがその証しだと言います。空気と触れる面を増やすために穴は複数にしますが、小さくしすぎると異物で塞がるため、そこが本数の上限になります(→ノズルから霧が出なくなる)。

渦で薄い膜にする: いちばん広く使われているのは、接線方向の穴から液を入れて渦を作る方式だと言います。旋回は狭い出口で速くなり、中心には空気の芯ができて、液は出口の直径の1割に満たない厚さの膜になります。膜は内側と外側の両面が空気に触れるので、まっすぐ出す穴に比べて触れ合う面が二倍になり、出たあとは円錐に広がっていきます。

膜の厚さが粒を決める: 動画は、膜の厚さが粒の大きさを決める二つの要素のひとつだと述べます。同じ流量でも接線の穴を増やせば、前へ出る速さは変えないまま旋回だけを強められるので、膜はさらに薄くなる。速さに取られる分を減らしたいという最初の話が、ここで具体的な作りになります。この構造は水圧だけで霧にするノズルの内側にも通じます。