ラットプルダウン

背中

器具: マシン / 難易度: 初級

ラットプルダウンは、懸垂の動きを重量で調整できるマシン種目

効く筋肉

広背筋と大円筋が主役で、引き切る局面では僧帽筋中下部と菱形筋も働きます。男性15人のマシン研究では、握り幅を肩幅の1〜2倍の範囲で変えても、動作全体の広背筋・僧帽筋・棘下筋の活動は似ていました。懸垂の代わりに、体重の一部を機械が支えて引けるので、重量を細かく選べます。懸垂がまだできない段階から背中を引く感覚を育てられます。

やり方

ラットプルダウンマシンのパッドは、膝が当たってかかとが少し浮く高さに合わせます。低すぎて足裏が床に着くと、戻す動きを深く伸ばせません(ATHLEAN-X)。バーは、肩幅の1〜2倍の順手で握り、上胸部へ引き下ろします。戻すときは2秒かけてゆっくり伸ばし、慣れてきたら伸び切った位置で1〜2秒止めます。10〜12回を3セット行うのが目安です。

フォームの注意点

戻す局面で腰が一緒に上がると、広背筋が十分に伸びません。ATHLEAN-Xは、腰を下げたまま距離を保つことが肝だと説明しています。バーを前に通す形は、広背筋の筋電図の大きさと最も一貫して結びついたとレビューは述べます(Di Fonza ら 2026)。首の後ろへ通す形と比べ、前に通す形のほうが主動作筋全体の活動が大きいと、男性14人の研究の著者は結んでいます(Padovan ら 2024)。

バリエーション・代替種目

手幅による差は研究で割れます。男性15人のマシン研究では、下ろす局面では広い握りのほうが広背筋と棘下筋が高く、上げる局面では狭い握りより中間の握りで上腕二頭筋が高くなりました(Andersen ら 2014)。男性40人の別の研究では、握りや体の傾きを変えた7通りの型の間で広背筋の差は出ませんでした。三角筋後部では、体を30°傾けた広い順手が、広い順手より高くなりました(Buonsenso ら 2025)。

出典

  1. 論文・英語 Andersen V ほか(2014) Effects of grip width on muscle strength and activation in the lat pull-down
  2. 論文・英語 Di Fonza D ほか(2026) Electromyographic Analysis of Latissimus Dorsi Activation During Common Resistance Training Exercises: A Narrative Review
  3. 論文・英語 Padovan R ほか(2024) High-Density Electromyography Excitation in Front vs. Back Lat Pull-Down Prime Movers
  4. 論文・英語 Buonsenso A ほか(2025) Electromyographic Analysis of Back Muscle Activation During Lat Pulldown Exercise: Effects of Grip Variations and Forearm Orientation
  5. 動画・英語 ATHLEAN-X How to do Lat Pulldowns (AVOID MISTAKES!)

解説動画: ラットプルダウンの基本と3つのグリップの使い分け/ザ・きんにくTV 【The Muscle TV】

使う筋肉と動きの理屈: 主に使うのは広背筋と大円筋。広背筋は骨盤あたりから上腕骨まで広がる、体の中でもかなり面積の大きい筋肉で、脇の下あたりに大円筋がついている。骨盤と上腕骨の距離を縮めたり伸ばしたりすることで働く筋肉なので、背中という意識しにくい部位でもこの関係を頭に置いて動かすとよい。

基本フォーム: 手幅は、腕をまっすぐ上げてから円を描くように肘を曲げてきた位置が目安。握りは親指を外すサムレスグリップにし、小指・薬指側で引くと広背筋を意識しやすい。 動作中は常に胸を張り、肩甲骨を下げた状態を保つ。腕で曲げるのではなく肘を骨盤に寄せるイメージで引き、バーは鎖骨の少し下まで下ろす。バーを戻すときも肩甲骨は下げたままで、肩と一緒に上がってしまわないようにする。

ありがちな間違い: 肩が上がって腕だけで引いてしまうと広背筋が働かず、腕のトレーニングになってしまう。反動を使って上半身を後ろに引っ張るのも同様で、重い重量を扱えているつもりでも広背筋には効かない。 上体を倒しすぎると引く角度が変わり、他の部位に効きやすくなる。初心者は上半身を固定し、体をまっすぐ保ったまま行うのがよい。

グリップ別の効き方: 上から握るオーバーグリップは肩関節の内転の動きで、収縮を意識したいときに向く。アンダーグリップは肩関節の伸展の動きになり、上腕二頭筋が関与する分やや高重量を扱え、ストレッチ感も得やすい。ただし二頭筋や三角筋後部に逃げやすい。中間がパラレルグリップで、二頭筋の関与も収縮もストレッチも中程度になる。どれが良いかは骨格や好みによる。

ビハインドネックと初心者への注意: ビハインドネックは手幅を少し広めにとり、やや前傾して首の後ろへ引く。肩甲骨が開いたり閉じたりするため、広背筋に加えて僧帽筋の中部・下部にも刺激が入り、背中の厚みづくりに向く。背中を丸めないこと。 使い方が分からないうちは高重量を避け、軽い重量で肩甲骨を下げる・上げるといった背中の動きを何度も練習してから行うとよい。

解説動画(海外・英語): How To Build A V-Tapered Back: Lat Training Dos and Don’ts/Jeff Nippard

懸垂とプルダウンの役割を分ける: どちらか一つならプルアップを選ぶが、プルアップは5〜10回で重量を伸ばしていく主役、プルダウンは効いている感覚を作る種目という役割分担で両方入れるのが良い、としている。なお自重の懸垂ができない人がプルダウンで懸垂の力を付けようとするのは遠回りで、アシスト付きの懸垂のほうが移りが良い。プルダウンで懸垂を強くしようとするのは、腕立て伏せでベンチプレスを強くしようとするようなもの、というたとえを使っている。

何を使っているのか、重量はどれくらいか: 順手のラットプルダウンの主動作は肩関節の内転で、広背筋と大円筋・小円筋が腕を体側へ引き下ろす。バーを完全な真下には引けないので肩関節の伸展も混ざり、これも広背筋と上腕三頭筋の長頭が担う。肘を曲げるぶんは上腕二頭筋と上腕筋。重量は体を後ろへ倒すほど重く扱えるが、重すぎると腰と反動が仕事を持っていって広背筋への負荷はむしろ減る。経験上は8〜12回がちょうどいい。グリップは色々あるが、順手のミディアムグリップで首の前に引く形が力・二頭筋・広背筋のバランスが最も良い。

座り方から引き方まで: 座る前に膝パッドの高さを合わせる。つま先立ちにならないと膝が固定できない高さだと安定を失い、毎回尻が浮く。かかとが着かないなら足元に10〜25ポンドのプレートを敷いて足を上げる。バーは肩幅の1.5倍ほどで握る。親指を掛けないサムレスグリップは広背筋を感じやすくなる人が多く、ベンチプレスと違って落としても危険がないので使ってよい。座ったら胸を持ち上げて胸椎を伸ばした(反らせた)姿勢を作る。引き始めはまず肩甲骨を下げ、それから肘を体側へ引き下ろす。上から見て肘は10〜15度だけ前。手や腕で引くのではなく、肘を下と内へ運ぶ意識。ボトムでバーが胸骨の上部に軽く触れるところまで。戻すときは広背筋が伸びるのを感じながら積極的に耐える。肘が伸び切ったら、また胸を上げて肩甲骨を下げてから次の1回へ。

どこまで倒していいか。そして多い失敗: 背もたれの角度論争については中間の立場で、自然に感じて、より重量を扱えるなら中程度に倒してよい。ただし横から見てケーブルがほぼ直線を描いていることが目安。上級テクニックとして引くときだけ多少の反動を使い、戻す局面はしっかり耐えるのは、広背筋にエキセントリックの過負荷をかける合理的なやり方として許容している。ただし完全に制御を失って、実質インバーテッドロー+重量落下、になっているのは論外。最も多い失敗は体の振りを使いすぎること。次に多いのが肩の内転が足りないことで、肘を前へ45度も持ってきてしまうと肩関節の伸展ばかりになる。肘が前に出るのは10〜15度まで。逆手(スーピネイテッド)で引く場合は二頭筋で引きすぎるのがよくある失敗で、腕はつなぎ目と考え、プルオーバーのように肘を下へ運ぶ。逆手のときは手首を痛めないよう肩幅くらいまで狭める。