懸垂(チンニング)

背中

背中の広がりを作る自重の基本種目

効く筋肉

主に働くのは広背筋と大円筋で、肩甲骨を下げながら引き寄せる局面では僧帽筋下部や菱形筋が加わります。肘を曲げる上腕二頭筋、体を一本の棒のように保つ腹筋群も補助に回り、上半身の引く力をまとめて鍛えられます。

やり方

肩幅より拳ひとつ広い位置を順手で握り、肩をすくめずに肩甲骨を下げてからぶら下がります。胸をバーへ近づける意識で肘を体側に引き下ろし、顎がバーを越えたら2秒ほどかけて戻します。5〜8回を3セットが目安です。

フォームの注意

反動で脚を振ると肩と肘に衝撃が集中します。腕から引くと背中に入らないので、肩甲骨を下げる、次に肘を引く、という順番を崩さないでください。下ろすときは肘を伸ばし切る手前で止め、肩がすくんだ状態から切り返さないようにします。

バリエーション・代替

回数が出ないうちはインバーテッドロー(斜め懸垂)やラットプルダウンで同じ軌道を軽い負荷から練習できます。楽になってきたらディッピングベルトでプレートを足すか、下ろす動作だけをゆっくり行う方法で強度を上げます。

解説動画: 背中に効く懸垂:握り方・スタート姿勢・引き方/今古賀翔【トレーニング科学】

握り方と手幅: バーは小指側を強く握る。親指と人差し指で握り込んで小指側が握れていないと肩関節を外旋しにくくなり、背中に負荷が乗らない。手幅は肩幅より拳1つ分広めが標準。これより狭いナローグリップは三角筋前部や僧帽筋に逃げやすく、ワイドグリップは広背筋に、逆手のアンダーグリップは上腕二頭筋に負荷が集中する。

スタート姿勢の作り方: バーを握ったらまず肩関節を外旋させる。腕を外にひねって肘を内側に入れるような動きで、同時に肩甲骨を下制する。こうすると自然に胸が張れ、この姿勢が懸垂のスタートになる。肩を上げたまま腕を上下させても広背筋には力が入らないので、肩を下げて下方回旋させた状態を作ってから引き始める。

バーではなく肘を腰にぶつける: 広背筋は上腕骨から胸椎・腰椎にかけて付いているため、バーを体に引きつけるのではなく、上腕骨や肘を腰にぶつける意識で動作すると背中をより使える。動作中は胸を張ったまま真っすぐ上がり、そのまま真っすぐ下ろす。軌道が斜めになったり足の勢いを使うと負荷が抜けるので避ける。

重量設定の目安: 懸垂の重量設定はベンチプレスと同じ総重量を目標にするとよいとしている。体重80kgでベンチプレス100kgを5回挙げるなら、20kg加重して総重量100kgで5回できるようになるという計算。大胸筋など前側が強すぎると肩が前に出て猫背の原因になるため、背中も鍛えて姿勢を保てるよう筋力のバランスを整える。

解説動画(海外・英語): Pull-ups vs Chin-ups: The Big Difference/FIT4EVER

順手(プルアップ)と逆手(チンアップ)で使う筋肉が変わる: 動きは同じでも握りが違うだけで負担の配分が変わる。逆手のチンアップは体の前側、つまり上腕二頭筋と大胸筋の関与が増え、順手のプルアップは背中側、とくに僧帽筋下部(肩甲骨を支える筋)の関与が増える。EMGの比較ではチンアップは二頭筋の活動が52%高く、プルアップは広背筋の活動が14%高い。ただしこれは自重で1回だけ引いた場合の数字。

自重1回の数字と、実際のトレーニングは別物: 筋肥大のためには限界近くまでセットを組む。チンアップのほうが強いので回数を多くこなせるし、加重するときも重い重量を足せる。つまりチンアップでは広背筋と二頭筋で負荷を分け合う形になり、二頭筋が手伝うぶん1回あたりの広背筋への負荷は下がる。加えて別の研究では、チンアップは肘の可動域がプルアップより8度大きいため、二頭筋を太くする用途ではさらに有利になる。

どちらを選ぶか。片方だけにする理由はない: チンアップは「より大きな複合種目」だが、いつも一番大きな種目をやりたいわけではない。疲れている日や、すでに二頭筋を追い込んだあとで広背筋だけを追い込みたい日にはプルアップが向く。重くならないぶん消耗が少なく、他の筋肉に持っていかれにくいので、広背筋が伸び悩んでいる人が広背筋だけを限界に近づけるのに使いやすい。まっすぐなバーは肘が痛くなる人が多いので、アングルの付いたバーや吊り輪(リング)に替えると同じ重量のまま楽になる。片方だけ選ぶなら筋肥大にはチンアップだが、両方やるのがいちばん良い、というのが結論。