ヒップスラスト

脚・尻

器具: バーベル / 難易度: 中級

ヒップスラストは、お尻に最も重い負荷をかけられる種目

効く筋肉

大殿筋を主に使い、ハムストリングスが補助します。鍛えた女性13人の10RMでの筋電図(Contreras ら、2015)では、バックスクワットより大殿筋・大腿二頭筋の活動が大きくなりました。バックスクワットとの比較では、未経験の大学生34人(Plotkin ら、2023)はお尻の筋肉の伸びが同程度、鍛えた女性22人(Barbalho ら、2020)は大殿筋の厚みがバックスクワット群で大きく増えました。

やり方

ベンチに肩甲骨の下あたりを当て、膝を立ててバーを股関節の上に置きます。あごを軽く引いたまま床を押し、肩から膝までが一直線になる高さまで上げて1秒止めます。8〜12回を3セットが扱いやすい配分です。

フォームの注意点

上げ切る位置で腰を反りすぎないよう、肋骨を締めて骨盤をわずかに後傾させて終えます。短距離選手11人の測定(Otsuka ら、2021)では、6RMでのヒップスラストはデッドリフトと並び、バックスクワットより腰仙部(腰と骨盤の境目)を伸ばす力が24%、股関節を伸ばす力が42%大きくなりました。鍛えた男性19人の分析(Brazil ら、2021)では、股関節を伸ばす力は上げる間に小さくなりました。

バリエーション・代替種目

バーが重いうちは自重のグルートブリッジで動きを覚えます。男性10人の筋電図(Kennedy ら、2024)では、バーベルのグルートブリッジのほうが大殿筋の活動が大きく、ヒップスラストは外側広筋が大きくなりました。トレーナー7人が足の位置と、力を向ける方向(股関節の外旋か膝の曲げ)を変えた4つの型を行うと、中殿筋を除く筋の活動が型ごとに変わりました(Collazo García ら、2020)。

出典

  1. 論文・英語 Contreras B ほか(2015) A Comparison of Gluteus Maximus, Biceps Femoris, and Vastus Lateralis Electromyographic Activity in the Back Squat and Barbell Hip Thrust Exercises
  2. 論文・英語 Plotkin DL ほか(2023) Hip thrust and back squat training elicit similar gluteus muscle hypertrophy and transfer similarly to the deadlift
  3. 論文・英語 Barbalho M ほか(2020) Back Squat vs. Hip Thrust Resistance-training Programs in Well-trained Women
  4. 論文・英語 Otsuka M ほか(2021) Kinetics in lumbosacral and lower-limb joints of sprinters during barbell hip thrust compared to deadlift and back squat
  5. 論文・英語 Brazil A ほか(2021) A comprehensive biomechanical analysis of the barbell hip thrust
  6. 論文・英語 Kennedy D ほか(2024) Electromyographic differences of the gluteus maximus, gluteus medius, biceps femoris, and vastus lateralis between the barbell hip thrust and barbell glute bridge
  7. 論文・英語 Collazo García CL ほか(2020) Differences in the Electromyographic Activity of Lower-Body Muscles in Hip Thrust Variations

解説動画: スミスマシンでのヒップスラストのやり方/ホリデイチャンネル

概要: スミスマシンを使ってお尻を鍛えるヒップスラストの手順を、セッティングから順に解説している。まずバーの真ん中にクッションを置き、左右のストッパーを持ち上げて横へスライドさせながら一番下まで下げる。バー自体も持ち上げて手前に引き、一番下まで下ろしておく。マシン側の準備を先に済ませてから体の位置を合わせる流れになる。

ベンチと体の位置を合わせる: 股関節の真上にバーが来るようにベンチを設置し、足は肩幅に開く。一度お尻を持ち上げてみて、背中から肩甲骨まわりがしっかりベンチについているかを確認する。ついていない場合はベンチを前後に動かして自分に合う位置へ調整してから動作に入る。

動作のポイント: 股関節の真上にバーを置き、足は肩幅のまま、お尻を持ち上げて下ろす動きを繰り返す。持ち上げたときに腰が反らないよう注意する。お尻に効かせるにはかかとに重心を乗せ、上げきったところでお尻をキュッと締める意識で行うとよいとしている。

重さと回数の目安: 始めは自分の体重の半分の重さで、10〜15回を2〜3セットが目安。慣れてくれば体重と同じくらいの重さでも扱えるようになるとしている。スミスマシン以外でも、慣れた人はオリンピックバーで行えると紹介している。

解説動画(海外・英語): How To Build Great Glutes with Perfect Hip Thrust Technique (Fix Mistakes!)/Jeff Nippard

スクワットより尻が育つ、という研究がある: ヒップスラストはほぼ純粋な股関節の伸展で、膝にゴムバンド(ヒップサークル)を掛ければ股関節の外転でも大殿筋を狙える。ブレット・コントレラス博士が320kg超、体重54kgのケイティ・ソニエが230kg超で複数回という映像が示すとおり、重量をどこまでも伸ばせる一方で、尻に効いている感覚も作りやすいという珍しい種目。2015年のコントレラスらの研究でバックスクワットより大臀筋の筋電位が高く、その後の一卵性双生児を6週間比べたケーススタディでは、ヒップスラストをした側のほうが尻の上部・下部とも明らかに大きくなった。理由はヒップスラストは股関節が伸びきった位置とその先で尻に負荷が乗るのに対し、スクワットやデッドリフトのような垂直方向の種目はトップで張力が抜けてしまうから。

セットアップが唯一の弱点。ベンチの高さで決まる: 専用台がないなら3手順。まず自分のすねの高さに合うベンチを選び(デクラインベンチが合うことが多い)、滑って後ろへ動かないようラックや壁に付ける。次にバーに厚いパッドかタオルを巻く。最後にベンチの手前でバーに重量を付ける。重量は筋力目的なら4〜8回、筋肥大目的なら8〜15回。技術が固まるまでは軽くから始め、記録更新のためにフォームを崩さない。

上げ切りと骨盤の向き: バーが股関節の真上、パッドがバーの中心に来る位置に座り、上背部をベンチに預ける。足幅は肩幅よりやや広め、つま先は15度外。軽い重量でトップですねと太ももが90度になる位置に足を調整する。動作前に尻を締め、床を蹴るというよりは、尻を締めて重量を真上へ運ぶ意識で、これ以上伸びない位置まで股関節を伸ばす。視線は上を見ずにまっすぐ前、あごと肋骨は下げたまま。トップでは尻の間にコインを挟んで落とさないつもりで締める。さらに腹を軽く丸めて骨盤を後傾させると、尻が最大限に働き、腰の反りすぎを防げる。手はバーが左右にぶれないよう支えるだけで、腕で持ち上げない。

尻より前ももに効くとき、そして多い失敗2つ: 前ももに効くなら足をもう少し前へ置いてみる。ただし人によってはハムストリングスへ移るので、足幅・股関節の位置・つま先の角度を触って自分の比率に合う位置を探す。強度を上げたいならトップで1〜3秒止める。筋力狙いならトップでさっと締めてすぐ下ろす。下ろす動作は落としたくなる誘惑が特に強い種目なので、2秒かけて伸ばしながら降ろす。最も多い失敗はトップで股関節を伸ばし切らないこと。重すぎる場合もあるが、たいていは伸ばし切ると焼けるように熱いから避けている。トップで尻が焼けていないなら伸ばし切れていない。股関節は必ず膝より高い位置に来る。もう一つは尻ではなく腰を反らせて伸ばすこと。腰を反らせた状態と、腹を軽く締めて腰を平らにした状態で尻を締め比べると、平らなほうが明らかに強く締まるのが分かる。代替はグルートブリッジ(可動域は少し狭くなる)、片脚ヒップスラスト、膝バンド付きヒップスラストなど。