法則と数の図鑑

連続の式(基本の考え方)

入った量と出た量が釣り合うという決まり。管や部屋のように、ある区間を切り出して考えます。中に溜め込む場所がなければ、そこへ入ってくる量と出ていく量は釣り合うはずだ、というだけの話です。水道の元栓を絞らないかぎり、途中の管が太くても細くても、一秒あたりに通る量は同じです。…

質量保存(基本の考え方)

流れても、ものの総量は増えも減りもしない。ものは勝手に増えも減りもしない、という土台の約束です。ある空間の中身が増えたなら、そのぶんだけ外から入ってきたはずだと考えます。形は変わっても量は残るので、渦を巻いても、細かい泡に分かれても、よく混ざり合っても、追いかけるべき総量は動きません。流れの話がどれだけ込み入っても…

運動量保存(基本の考え方)

勢いのやり取りとして力を数える見方。勢い、つまり質量と速さを掛け合わせた量は、外から力が加わらないかぎり相手へ移るだけで消えない、という考え方です。力とは勢いのやり取りだと読み替えると、流れが物を押す理由がそのまま見えてきます。押したぶんは必ず押し返されるので…

エネルギー保存(基本の考え方)

速さ・高さ・圧力が姿を変えて釣り合う。流れが持つ速さのぶん、高さのぶん、押し合う圧力のぶんは、互いに姿を変えながら合計として保たれるという見方です。速くなればどこかが減り、高く持ち上がればまたどこかが減ります。ただし釣り合うのは同じひと筋の流れをたどったときで、途中で羽根やポンプが仕事を足せば合計そのものが増えます。…

流線(基本の考え方)

流れの向きをつないで描いた補助線。ある瞬間の流れの向きを、つないで描いた線です。線に沿う向きがその場所の流れの向きで、線が混み合うところは速いと読みます。実際に線が引いてあるわけではなく、目に見えないものを見るために人が引いた補助線にすぎません。だからこそ、描き方さえ決めれば誰でも同じ図になり、比べることができます。

圧力とは何か(基本の考え方)

面を垂直に押す強さ、流れを動かす差。気体や液体が、触れている面を垂直に押す強さのことです。分子が絶え間なくぶつかる回数と勢いの合計なので、向きを選ばず全方向へ働きます。手のひらを水に沈めても、上からだけでなく横からも下からも押されているのはこのためです。深いところほど上に載る重さが増えるので、下へ行くほど強くなります。…

レイノルズ数(無次元数)

流れが乱れるか整うかを分ける代表的な数。流れが持つ勢いと、粘りが引き止める力の比です。速さ、流れる物の大きさ、液体や気体の粘りの三つで決まり、単位を持たない裸の数になります。単位が消えているぶん、風洞に置いた小さな模型と、実際に走る車や飛ぶ翼を同じ土俵に載せられます。形がそろっていてこの比が同じなら流れも似るので…

マッハ数(無次元数)

流れの速さを、その場の音の速さで測った数。流れの速さを、その場所の音の速さで割った数です。空気の中の音の速さは気温でほぼ決まるので、同じ時速で飛んでいても、冷えた高い空では音速が下がり、この数のほうは上がります。分母のほうが動きます。教えてくれるのは空気が縮むかどうかの一点で、速度の言い換えではありません。…

フルード数(無次元数)

流れの勢いと、波が伝わる速さを比べた数。流れの勢いと、重力が水面を平らへ戻そうとする働きの比です。言い直せば、流れの速さを水面の波が広がる速さで測った数になります。波の伝わる速さは水が深いほど速くなるので、同じ速さで進んでも浅い場所ほど値は上がります。上下できる水面があってはじめて意味を持つ数で…

ウェーバー数(無次元数)

表面張力が形を保てるかどうかを測る数。流れやぶつかりの勢いと、表面張力が形をまとめる力の比です。小さいうちは液体は丸いままでいられ、大きくなるほど平たく引き伸ばされ、やがてちぎれます。効くのは当たる速さと粒の大きさ、液体の重み、そして表面張力の四つで、速さは二乗で効きます。コップに水を勢いよく注いだとき…

ストローハル数(無次元数)

渦が離れる周期を、速さと太さで測った数。物の後ろで渦が交互に離れていくリズムの速さを、流れの速さと物の太さで測った数です。渦がひとつ離れるたびに、物は反対側へひと押しされます。だからこの数は離れる周期の物差しであると同時に、揺さぶりの回数を先に読む道具にもなります。水を張った洗面器で指をゆっくり動かすと…

プラントル数(無次元数)

動きと熱の、どちらが速く伝わるかの比。動きの伝わりやすさと、熱の伝わりやすさの比です。ほかの多くの数と違って、流れの速さが入りません。液体や気体そのものの性質だけで決まるので、同じ水なら、勢いよく流れていても止まっていても値は同じ。流れではなく中身の数で、温度さえ決まれば表から読めます。空気と水と油では…

抗力係数(力と抵抗)

同じ条件で並べるための、抵抗のものさし。測った抵抗を、空気や水の重さの詰まり具合と、速さの二乗と、正面から見た面積で割り、形そのものの性質だけを取り出した数です。単位を持たない比になるので、模型と実物、空気の中と水の中で測った値を、同じ土俵に並べて比べられます。抵抗そのものは速さで動きますが…

揚力係数(力と抵抗)

翼がどれだけ空気を曲げているかを表す数。翼が受ける流れと直角向きの力を、空気の詰まり具合と速さの二乗と翼の面積で割った数です。翼は空気を下向きに曲げ、押した分だけ押し返されて上向きの力を受けます。この数は、同じ翼がどれだけ上手に曲げているかを、速さの違いを消して並べたものだと考えると、読み違えずに済みます。

摩擦抗力(力と抵抗)

表面をなでる向きに働くほうの抵抗。流れが表面をなでるときに、進む向きと逆へ引きずる力です。壁のすぐ上では流体が速さゼロで貼りつき、少し離れると外の速さに戻ります。この薄い層の中にできた速さのずれが、粘りを通じて表面を後ろへ引っぱります。なでられた面積の分だけ積み上がるので、細長い物ほど無視できません。

形状抗力(力と抵抗)

前と後ろの圧力差から生まれる抵抗。物の前と後ろの圧力の差から生まれる抵抗です。前ではぶつかった流れが押しますが、後ろで流れが表面から剥がれると、そこは乱れたままで圧力が戻りません。押し返す力が足りない分だけ、物は後ろ向きに引かれ続けます。前を丸め後ろを絞る形が効くのは、この抵抗を減らせるからです。

終端速度(力と抵抗)

重さと抵抗が釣り合い、それ以上速くならない速さ。落ちる物が、重さと抵抗が釣り合って、それ以上速くならなくなった速さです。速くなるほど抵抗は育つので、どこかで必ず重さに追いつきます。育ち方は大きさで変わり、雨粒ほどなら速さの二乗に近く、霧の粒では速さそのものに比例します。追いついたあとは加速をやめ…

浮力(力と抵抗)

押しのけた流体の重さぶんだけ上を向く力。押しのけた流体の重さと同じだけ、上向きに受ける力です。液体や気体は深いところほど圧力が高いので、物の底を押し上げる力が、上面を押し下げる力より強くなります。その差が引き算で残ったものが浮力で、水が下から引き上げているわけではありません。氷が浮くのも、同じ体積で水より軽いからです。

ベルヌーイの式(方程式)

流線に沿った、速さと圧力と高さの帳簿。一本の流線に沿って、速さの分と圧力の分と高さの分を足すと合計が変わらない、という帳簿です。速い場所では圧力が低く出ますが、これは速さが圧力を下げたという意味ではなく、二つが同時に起きているという関係を書き留めた式です。片方が原因ではありません。

ナビエ–ストークス方程式(方程式)

流れのほとんどを表す、解きにくい一本。流体の小さな一片を取り出し、圧力と粘りと重力に押されて、その一片がどう加速するかを書いた式です。中身は運動の法則を流体に書き直したもので、空気も水も油もこの一本で表せます。血液のように粘りが一定でない液は、粘りの扱いを差し替えて使います。ただし百年以上使われてなお…

オイラー方程式(方程式)

粘りを外して見通しをよくした式。ナビエ–ストークス方程式から粘りの項を落とした形です。流体を、ねばりを持たない理想の物として扱います。式が軽くなるぶん見通しがよく、圧力と速さの結び付きだけで大筋を追えるので、壁から離れた広い場所なら実物ともよく合います。壁の近くだけは、別の扱いを足します。

ポテンシャル流(方程式)

渦も粘りもないと決めた、最も素直な流れ。粘りがなく、渦も立たないと決めてしまった、いちばん素直な流れの型です。速度を一つの量の傾きとして書けるため、単純な流れを足し算で重ねるだけで複雑な形が作れます。紙と鉛筆でも答えが出る手軽さのおかげで、物のまわりの流れの図は昔から引かれてきました。