形状抗力

力と抵抗

何に効くか: 力を見積もる

形状抗力は、前と後ろの圧力差から生まれる抵抗。

何を言っている?

物の前と後ろの圧力の差から生まれる抵抗です。前ではぶつかった流れが押しますが、後ろで流れが表面から剥がれると、そこは乱れたままで圧力が戻りません。押し返す力が足りない分だけ、物は後ろ向きに引かれ続けます。前を丸め後ろを絞る形が効くのは、この抵抗を減らせるからです。NASA グレン研究所の教育解説は、抗力の源に表面の摩擦・形状抗力・翼端の渦による誘導抗力を挙げ、これは形で決まる分です。

読み方の目安

垂直な板ではほぼ全部がこれ、速い流れの中の球でも大半です。NASA グレン研究所の教育サイトの表では、正面の面積を基準にした抗力係数が、平らな板で1.28、対称な翼型で0.045と、30倍近く違います。同じ大きさで比べるなら効くのは後ろ側の絞り方で、前を丸め、後ろをなだらかにするほど小さくなります。

どこで使われているか

車の後ろ姿、トラックの荷台の角、自転車の部材の断面、建物のまわりの風。表面をわざと荒らすゴルフボールのディンプルも、剥がれる位置を後ろへずらし、この抵抗を減らすための工夫です。車を単純にした模型の実験(Zhang ほか、2018)では、後ろの窓と後端の縁から実験用に空気を吹き出して剥がれを抑えると、1か所で6〜14%、4か所そろえて約29%抗力が下がりました。

はまりどころ

細長ければ必ず得、ではありません。長くすれば表面積が増えて摩擦の分が育ち、遅い流れでは摩擦のほうが主役になります。速さや大きさが変われば剥がれ方も動くので、流線形なら必ず抵抗が小さいという思い込みは成り立ちません。荒らせば得でもなく、水中で球を落とした実験(Lyotard ほか)では、溝の模様で抗力が滑らかな球の半分以下になることがある一方、ランダムな粗さでは急な低下は起きませんでした。

出典

  1. 公的機関・英語 NASA Glenn Research Center(Nancy Hall編)(2023) Drag
  2. 公的機関・英語 NASA Glenn Research Center(Nancy Hall編)(2025) Shape Effects on Drag
  3. 論文・英語 B. F. Zhang, K. Liu, Y. Zhou, S. To, J. Y. Tu(2018) Active drag reduction of a high-drag Ahmed body based on steady blowing
  4. 論文・英語 Nicolas Lyotard, Woodrow Shew, Lydéric Bocquet, Jean-François Pinton(2007) Polymer and surface roughness effects on the drag crisis for falling spheres
  5. 動画・英語 The Efficient Engineer Understanding Aerodynamic Drag

解説動画(海外・英語): Understanding Aerodynamic Drag/The Efficient Engineer

抗力は二つの応力から: 流れが物体に及ぼす力のうち、流れと同じ向きの成分が抗力。その正体は二種類の応力で、面に沿ってはたらくせん断応力が摩擦抗力、面に垂直にはたらく圧力のほうが形状抗力、すなわち圧力抗力になる。中身は物体の前と後ろの圧力差で、球のような鈍い形でとくに大きい。

剥がれた瞬間に跳ね上がる: 形状抗力が大きく増えるのは剥離が起きたとき。境界層が面から離れ、後ろに回り続ける流れの後流ができる。この剥離域は圧力が低いので前後の差が開き、抵抗が跳ね上がる。おまけに渦が放たれ振動や不安定も呼ぶ。減らしたいなら、まず剥離させないこと。

80度が120度まで延びる: 球の上面では流れがまず加速し、進む向きに圧力が下がる。ある点から減速に転じ、進む向きに圧力が上がる逆圧力勾配になる。上がり方が強いと壁ぎわの流れは向きを変え、向かってくる流体に阻まれて面から離れる。滑らかな球の層流ではおよそ80度で剥がれるが、層流と乱流の乱流側なら層どうしが混ざって運動量が行き渡り、120度あたりまで粘る。ゴルフボールのディンプルも翼の小さな渦発生器も、わざと乱して剥離を遅らせる道具だ。

減らすほど摩擦が増える: 平板を流れに直角に置くと縁から剥がれっぱなしで形状抗力は大きく、摩擦はほぼゼロ。90度回して流れと平行にすれば剥離域が消え、代わりに摩擦抗力が主役になる。乱流は形状抗力を減らす一方、壁ぎわの速度の変わり方を急にして摩擦のほうは増やす。だから全抵抗が最小の形が、いちばん流線形の形とは限らない。

係数とストークスの法則: 応力の分布を細かく知るのは大半の場合むりなので、実際は抗力係数にまとめる。値はレイノルズ数で動き、直角の平板は必ず縁で剥がれるのでほぼ一定、円板は乱流に変わるところで大きく下がる。球ではレイノルズ数が1より小さい範囲で24をレイノルズ数で割った値の直線になり、剥離が起きず抗力は全部が摩擦。これがストークスの法則で、球の終端速度から液体の粘度を出す粘度計に使われている。