摩擦抗力
力と抵抗
表面をなでる向きに働くほうの抵抗
何を言っている?
流れが表面をなでるときに、進む向きと逆へ引きずる力です。壁のすぐ上では流体が速さゼロで貼りつき、少し離れると外の速さに戻ります。この薄い層の中にできた速さのずれが、粘りを通じて表面を後ろへ引っぱります。なでられた面積の分だけ積み上がるので、細長い物ほど無視できません。
読み方の目安
同じ面でも、整ったまま流れれば小さく、乱れると数倍まで増えます。細長い物ほど割合が大きく、船体や旅客機の胴体では抵抗の半分から八割がこれです。逆に、ずんぐりした物や垂直の板ではほとんど効きません。同じ距離でも、遅く長く進むほどこの分の割合は上がります。
どこで使われているか
船底の塗装、旅客機の巡航、水道管やダクトで失われる圧力の計算、境界層をどこまで細かく扱うかという判断。長い管ではこれが積もって先へ行くほど圧力が下がり、ポンプの仕事の多くは、その損失を埋めるためだけに使われます。競泳の水着が肌をなめらかに覆うのも同じ狙いです。
はまりどころ
表面を磨けば必ず減るとは限りません。すでに乱れた流れでは、ある高さより低い凹凸は層に埋もれ、手をかけても変わりません。逆に、わざと乱して剥離を後ろへずらし、全体としては抵抗を下げる設計もあります。どちらが得かは、狙う速さを決めてからでないと判断できません。
解説動画: 07-2 流体力学 境界層とはく離/物理・数学を一から学びなおす-デルタ先生
抗力の二つの成分: 抗力は摩擦のぶんと圧力抗力に分かれる。動画の大半は圧力抗力と剥離の話だが、最後に、剥離が起きにくい流線形の物体では摩擦のほうが大きくなる場合が結構ある、と釘を刺す。摩擦は面に対して面内方向にかかる力の合計。
境界層という遅い層: 壁のすぐ近くでは粘りの影響で流速が落ちる。この遅い領域を境界層と呼び、主流の速さの99%以下という線で切ることが多い。その外側は粘りを無視してよいポテンシャル流れ領域。摩擦がどこで効くかは、この層の中の話になる。
レイノルズ数で変わる: レイノルズ数は慣性力と粘りの力の比。流れが速いほど、また粘りが小さいほど剥がれる点は前へ来る。粘りは上の粒子を引っ張って一緒に流れようと誘う役なので、それが弱いと上の層が勝手に飛んでいく、と説明する。数が大きいほど境界層は薄い。
乱流だと剥離が遅い: 壁沿いは層流と乱流の順に変わり、間に遷移領域が挟まる。乱流では流体が混ざって速さが均され、剥がれる点が後ろへずれる。層流のように全員そろって剥がれず、斜め下へ入り面に沿い直す粒子が出るから。その利用例がゴルフボールのディンプル。
サメ肌に溝がある訳: 摩擦が表面の凹凸で決まるならつるつるが最善に思える。だが魚の肌はざらついている。細かい溝のある表面は流れを整え、乱れた流体が壁へ当たり散らかるのを抑えるので、かえって摩擦が減る。競泳の抵抗を減らす話として一時期話題になった通り、つるつる一択ではない。