マッハ数

無次元数

流れの速さを、その場の音の速さで測った数

何を言っている?

流れの速さを、その場所の音の速さで割った数です。空気の中の音の速さは気温でほぼ決まるので、同じ時速で飛んでいても、冷えた高い空では音速が下がり、この数のほうは上がります。分母のほうが動きます。教えてくれるのは空気が縮むかどうかの一点で、速度の言い換えではありません。地上の乗り物は、いちばん速い列車でも0.3に届きません。

読み方の目安

0.3より下なら空気は縮まないものとして扱えて、台風の突風もこの内側に収まります。0.8あたりから翼の一部だけが先に超え、1をはさむ帯では抵抗が急に立ち上がります。1を確かに超えると衝撃波が斜めに張り付き、後ろへ長く伸びていきます。旅客機が巡航するのは0.8前後で、この帯をうまく通すことが設計の難所になります。

どこで使われているか

旅客機や戦闘機の設計、ロケットの噴射口、タービンの羽根、風洞での試験に使います。ソニックブームが地上のどこへ届くかを見積もるときにも欠かせません。飛んでいる間は高度で分母が変わるため、圧縮が効くかの判定は高さごとにやり直します。水の中では音速が空気の4倍以上あり、めったに問題になりません。鞭の先が鳴るのは1を超えた合図です。

はまりどころ

音速は決まった値ではなく、気温が下がるほど遅くなります。地上と上空では、計器に同じ数字が出ていてもマッハ数は違うので、高度ごとに読み替えます。1のところに硬い何かが待っているわけでもありません。初期の機体が壊れたのは壁ではなく抵抗と揺れの急な変化のせいで、マッハ1に壁があるという言い方は避けたほうが正確です。

解説動画: 解説:面積とマッハ数の関係/JoshTheEngineer

まず密度が変わらない流れ: 密度が変わらない流れなら質量保存だけで話が済む。面積が減れば速度は増え、面積が増えれば速度は減る。速くしたいなら細くする、という直感どおりの答えになる。ところが流れに密度の変化を許した途端、この直感が通じなくなる——そこがこの解説の出発点。

密度の変化とマッハ数: 密度の変化を扱うには運動量保存も要る。圧力を密度とエントロピーの関数として書くと、等エントロピーの流れではエントロピーの項が消える。残った密度に対する圧力の変わり方は音速の二乗にあたる。マッハ数をその場の速度をその場の音速で割った値と決めると、密度の変化率は速度の変化率にマッハ数の二乗を掛けた分だけ逆向きに動く。

非圧縮とはマッハ0のこと: マッハ数が小さいとその二乗はさらに小さいので、速度が変わっても密度はほとんど動かない。逆に大きいと、速度の変化が大きな密度変化を生む。非圧縮はマッハ数がゼロと言い換えられ、それは音速が無限大、つまり擾乱が無限に速く伝わるという意味になる。密度変化が効きはじめる目安はマッハ0.3あたり。

亜音速と超音速で逆になる: 最後に得られるのは、面積の変化率がマッハ数の二乗から1を引いた値と速度の変化率の積になる、という関係。亜音速では係数が負で、面積が増えれば速度は減る。ただし効き方は非圧縮と同じではなく、マッハ0.5なら0.75倍。超音速では係数が正に変わり、面積が増えると速度も増える。

スロートが最小になる理由: マッハ1では1から1を引いてゼロになり面積が変化しない。そこは面積の最小か最大だが、最大はありえない。亜音速で面積が増えれば減速し、超音速で面積が増えれば加速して、どちらも音速から遠ざかるからだ。残るのは最小、すなわちスロート。ロケットノズルや風洞が絞ってから広げる形なのはこのため。