ポテンシャル流

方程式

渦も粘りもないと決めた、最も素直な流れ

何を言っている?

粘りがなく、渦も立たないと決めてしまった、いちばん素直な流れの型です。速度を一つの量の傾きとして書けるため、単純な流れを足し算で重ねるだけで複雑な形が作れます。紙と鉛筆でも答えが出る手軽さのおかげで、物のまわりの流れの図は昔から引かれてきました。

読み方の目安

円柱のまわりでは前後も上下も対称になり、抵抗はゼロという答えが出ます。そこへ回り込む流れを一つ足すと上下の対称が崩れ、上向きの力が現れます。翼の力を循環の量として数える見方はここから始まり、回り込みの強さがそのまま力の大きさに対応します。実際の翼に当てはめるときは、後ろの端で流れが離れるという条件を足して形を決めます。

どこで使われているか

翼の断面を作るときの土台、地下水や土の中の流れ、電気や熱の問題と同じ形の解き方。計算機のなかった頃の翼型の表も、この考え方で作られました。数値計算が主役になった今も、なぜその形で力が出るのかを言葉で説明するときの下敷きとして残り、手で描けるぶん、人に伝える場面にも向いています。

はまりどころ

実物では後ろで流れが剥がれるので、前後対称にはなりません。抵抗ゼロという答えは粘りを外した代償で、現実との食い違いは古くから知られています。壁ぎわの摩擦や、翼が力を失う場面といういちばん知りたい二つは、この型では原理として出てきません。壁のない世界の話だと割り切って使います。

解説動画: 【流体力学】流体力学の全体像/たなおの航空宇宙工学

決めたいのは5つの量: 流体力学の目標は、空間の一点と時刻を指定すればそこの状態が分かる状態にすること。未知数は速度の3成分と、熱力学の状態量のうち独立な2つ(密度と圧力)で合わせて5つになる。量を場として見るオイラーの方法と、粒子を追うラグランジュの方法があり、扱いが簡単な前者が主に使われる。

粘性の項を落とせる条件: 支配方程式はナビエ–ストークス方程式の3成分と連続の式、エネルギーの式で5本。無次元化すると粘性の塊にレイノルズ数分の1が掛かる形が出るので、レイノルズ数が1よりずっと大きければその塊ごと無視できる。粘性を完全に落とした式がオイラー方程式で、以降はすべて非粘性が前提になる。

渦は生まれも消えもしない: 非粘性に加えて外力が保存力、密度が圧力だけで決まる(バロトロピー)を仮定すると、渦度の方程式からラグランジュの渦定理が出る。中身は渦は不生不滅で、最初に無ければずっと無い。まっすぐな流れを考えるかぎり渦なしで解いてよいという保証になる、というのが講師の力点だ。

渦なしなら速度ポテンシャル: 渦が無いとは速度の回転がゼロということ。するとヘルムホルツの定理から、速度は1つのスカラー関数、速度ポテンシャルの勾配として書ける。これを入れて空間で積分すると圧力方程式が出る。渦なしの代わりに定常を仮定した枝では、流線または渦線に沿ってベルヌーイ関数が一定という広い意味のベルヌーイの定理になる。

ラプラス方程式まで来る: さらに非圧縮(流れに沿って密度が変わらない)を足すと速度の発散がゼロになり、速度ポテンシャルはラプラス方程式に従う。微分して速度、圧力方程式で圧力と全部決まる。どの仮定でどの式が出るかを結びつけて覚えろ、というのが動画の一貫した注意だ。