ストローハル数
無次元数
何に効くか: 力を見積もる
ストローハル数は、渦が離れる周期を、速さと太さで測った数。
何を言っている?
物の後ろで渦が交互に離れていくリズムの速さを、流れの速さと物の太さで測った数です。渦がひとつ離れるたびに、物は反対側へひと押しされます。だからこの数は離れる周期の物差しであると同時に、揺さぶりの回数を先に読む道具にもなります。水を張った洗面器で指をゆっくり動かすと、後ろの筋が左右に振れるのが見えます。航空力学を解説する海外のチャンネルPremier Aerodynamicsは、この数をレイノルズ数や抗力係数と並ぶ、流体力学を代表する無次元数の一つだと説明しており、円柱に限らず、板や柱など渦を放つ物なら形を問わず当てはめられます。
読み方の目安
円柱では、かなり広い範囲で0.2前後に落ち着きます。つまり速さを倍にすれば回数も倍、太さを半分にしても回数は倍です。細い電線が高く鳴り、太い煙突が低く唸るのは、この掛け算の結果そのもの。太さと風の速さが分かれば、鳴る音の高さまで読めます。風が強い日ほど音が高くなるのも同じ理由です。Premier Aerodynamicsは、太さ1メートルの柱に秒速1メートルの風が当たる例で、渦が剥がれる周期はおよそ0.2ヘルツと、人の耳にはまだ届かない低さになるが、これが200ヘルツほどまで上がると聞き取れる高さに入り、うるさく感じられるようになると説明しています。
どこで使われているか
橋の桁や煙突、送電線、アンテナの揺れ対策に使います。カルマン渦の周期が、構造そのものの揺れやすい回数と重なると大きく揺れます。そこで断面を変えたり、らせんの突起を巻いたりして周期をずらすのが定石です。風切り音の高さも、風で揺れる構造物の点検も、まずこの数から当たります。円柱のまわりで渦が周期的に剥がれ続けるのは、レイノルズ数がおよそ10万に達するあたりまでだろうと、カリフォルニア工科大学の風洞実験をもとにロシュコ(1954年)は述べています。
はまりどころ
0.2はあくまで円柱の話で、断面が変われば値も変わります。角のある形では渦の離れる位置が縁に固定され、別のふるまいになります。隣に物が並ぶだけでも出方は変わります。さらに物が揺れ始めると渦のほうが歩調を合わせ、数が張り付いて動かないことも起こります。旗のはためきや橋のねじれ振動は別の仕組みが絡み、この数だけでは読めず予測しきれない部分が残ります。1954年、カリフォルニア工科大学のロシュコは、円柱・くさび形・平らな板について理論の計算からこの数を求め、円柱でおよそ0.21、くさび形でおよそ0.17、平らな板でおよそ0.13と、形によって下がっていくことを示しています。太さをどこで測るかも一通りには決まらず、Premier Aerodynamicsは、対象や研究者によって選ぶ辺が変わりうると述べています。
出典
- 論文・英語 Anatol Roshko(カリフォルニア工科大学)(1954) On the Drag and Shedding Frequency of Two-Dimensional Bluff Bodies (NACA Technical Note 3169)
- 動画・英語 Premier Aerodynamics Strouhal Number [Aero Fundamentals #26]
解説動画(海外・英語): Strouhal number/IGTE TU Graz
ゆらぎに番号を付ける: 流れの中で起きるゆらぎや不安定を、単位を持たない形で言い表すために置かれた数。動画の例は流れの中に立てた棒で、ある条件になると棒の後ろにカルマン渦の列ができる。この不安定が棒の後ろの振動として現れ、その振動をこの数で扱う。
何と何の比なのか: 中身は、後ろで起きている振動の回数に代表となる長さを掛け、それを流れの速さで割ったもの。入ってくるのはこの三つで、割った結果は単位を持たない。だから同じ仕組みで起きるゆらぎなら、条件が違っても同じ土俵に載せて比べられる。
大きさが違う設定を並べられる: 使いどころの一つが、寸法や条件が違う二つの設定を比べること。無次元の量をそろえて置けば、そこで起きる不安定の仕組みはよく似た振る舞いになり、この数も近い値に落ち着く。規模の違う設定の結果を並べて読めるのはこのため。
計算と計測の刻みを決める: もう一つが数値計算と実測での使い方。狙う流れの状態についてこの数の値が分かっていれば、それを解像するのに必要な時間の刻み幅や、計測側のサンプリング周波数を先に見積もれる。動画はこの二点を、この数から得られる要点として挙げている。