抗力係数
力と抵抗
同じ条件で並べるための、抵抗のものさし
何を言っている?
測った抵抗を、空気や水の重さの詰まり具合と、速さの二乗と、正面から見た面積で割り、形そのものの性質だけを取り出した数です。単位を持たない比になるので、模型と実物、空気の中と水の中で測った値を、同じ土俵に並べて比べられます。抵抗そのものは速さで動きますが、この数なら形の優劣だけを語れます。看板が強風で壊れるかを考えるときも、まず手に取るのはこの数です。
読み方の目安
垂直に立てた板が1.1から1.3ほど、球は0.5前後、乗用車は0.25から0.35、よく絞った涙形なら0.05あたりまで下がります。同じ速さと同じ面積で比べるなら、この数の比がそのまま受ける力の比になり、半分になれば抵抗も半分です。速さが倍になれば力は四倍ですが、この数そのものは動きません。
どこで使われているか
車体や鉄道車両の開発、建物にかかる風の荷重、落ちる物の速さの見積もり、競技用具の設計。風洞や水槽で小さな模型を測り、レイノルズ数をそろえて実物の値へ持ち上げるときに、この数が橋渡しの役をします。実物では測れない大きさの船や建物でも、模型の値から先に見当をつけられます。
はまりどころ
面積を正面から見た影で取るか翼の面積で取るかで値が変わるため、どの面積で割った数かを確かめないと比べられません。速さと大きさの組み合わせでも動き、球ではある境目を過ぎると急に下がります。同じ車でも、測る施設や条件が変われば一割ほど動きます。比べる前に条件をそろえるのが先です。
解説動画(海外・英語): Understanding Aerodynamic Drag/The Efficient Engineer
係数が肩代わりするもの: 抗力のもとは、面に沿って働くせん断応力と面に垂直にかかる圧力の二つだけ。前者が摩擦抗力、後者が圧力抗力になる。本来は表面ぜんぶの応力を足し合わせれば力が出るが、その分布が分かる場面はまず無い。そこで形の効きも流れの状態もまとめて一つの数に押し込み、風洞での実測か数値計算で決める。
どの面積で割るかで変わる: 係数と組になるのは流体の密度と、定常で一様とみなした流れの速さ、そして基準面積。この面積は係数を決めたときの取り方に合わせないといけない。翼のような流線形では上から見た平面形の面積、鈍い形では進行方向から見た正面の面積を使うのがふつうで、係数の数字はどちらで割ったかまで込みの値になる。
剥離が80度から120度へ: 球の面では、流れが速まる区間で圧力が下がり、途中から遅くなって圧力が上がりに転じる。この逆向きの圧力勾配が強いと壁ぎわの流れが向きを変え、面から離れて後ろに後流を作る。なめらかな球の剥離はおよそ80度で起きるが、境界層が乱れていると120度あたりまで持ちこたえ、圧力抗力が大きく落ちる。
乱れは得と損の両方: ゴルフボールのディンプルや翼の小さな渦発生器は、わざと乱して剥離を遅らせる仕掛け。ただし乱れた境界層は壁ぎわで速さの変わり方が急になり、摩擦の側は増える。旅客機の主翼と垂直尾翼を層流に保てれば全抗力が10〜15%減ると見積もられ、サメ肌をまねた流れ方向の微細な溝でも2%。細長くするほど得とは限らない。
1より小さいときの直線: 球の係数をレイノルズ数に対して描くと、1より小さい範囲だけは直線になり、値は24をレイノルズ数で割ったものになる。ここでは鈍い球でも剥離が起きず、抗力は全部摩擦から来る。代入して出るのがストークスの法則で、重さから浮力を引いた分と抗力がつり合う終端速度が分かる。管に球を落として2つの印の間の時間を測る粘度計はこれを使う。