揚力係数

力と抵抗

翼がどれだけ空気を曲げているかを表す数

何を言っている?

翼が受ける流れと直角向きの力を、空気の詰まり具合と速さの二乗と翼の面積で割った数です。翼は空気を下向きに曲げ、押した分だけ押し返されて上向きの力を受けます。この数は、同じ翼がどれだけ上手に曲げているかを、速さの違いを消して並べたものだと考えると、読み違えずに済みます。

読み方の目安

迎え角を一度起こすごとに0.1前後ずつ増え、十度から十五度あたりで1.2から1.6の山を迎えます。そこを越えると流れが背中側から剥がれ、数は一気に落ちます。翼の断面の厚みや表面の荒れ具合でも山の位置は動き、同じ機体でも重いほど高い数が必要になります。

どこで使われているか

飛行機の主翼、風車の羽根、船の舵、競技車の逆さ向きの翼。必要な力の大きさから、翼の形と迎え角と面積を決めていく順で使います。離着陸ではフラップで山を高くし、遅い速さのままでも機体を支えられるようにします。模型から発電用の羽根まで、大きさが違っても同じ物差しで比べられます。

はまりどころ

大きいほど良い数ではありません。強く曲げるほど誘導抗力も一緒に育ち、山の手前でも燃費は悪くなります。落ちる原因を速さのせいだと考えると失速は速度が足りないから起きるという誤解に寄りますが、引き金は角度のほうです。翼の面積をどう取ったかでも値は変わります。

解説動画(海外・英語): Understanding Aerodynamic Lift/The Efficient Engineer

翼を言い表す線と角: 翼の断面はいくつかの量で言い表せる。前端が前縁、後端が後縁、その二点を結んだ直線が翼弦線で、翼弦線と流れの向きのなす角が迎え角。上面と下面のちょうど中間を通る線が平均キャンバー線で、その反り具合がキャンバーだ。この二つが、その翼がどれだけ揚力を出せるかを大きく左右する。

圧力の配られ方が揚力: 流線形の翼ではせん断応力がほぼ流れ向きにはたらくため、揚力にはあまり効かない。効くのは圧力の配られ方で、上面が低く下面が高い。しかも上面側の低さのほうが、下面側の高さより大きい。差の大半は前寄りの部分から出る。翼型に特別な力があるのではなく、傾けた平板でも揚力は出る。弾丸のように圧力差が付かない形では出ない。

因果は一方通行ではない: 圧力の配られ方がどこから来るかは難物で、動画は説明を二系統に整理する。速度差から入るベルヌーイ系(循環とクッタ条件で上下の速度差を出す)と、翼が空気を下へ曲げた反作用と見るニュートン系(前方のアップウォッシュと後方のダウンウォッシュ)だ。そのうえで、どちらも因果の順序を前提にしている点に限界があり、速度も圧力も下向きの曲がりも同時に起きて互いに影響し合っていると結ぶ。それでもどちらも理解の助けにはなる、という置き方だ。

反りと角を足すと増える: 曲げる空気の量が増えれば揚力も増える、と考えると見通しが良い。キャンバーを増やしても迎え角を起こしても、より多くの流体が曲げられて揚力は増える。ただし限界があり、この翼型ではおよそ16度で急に落ちる。境界層が付いていられずに剥離し、できた後流が圧力の配られ方を変えるためで、揚力は減り抗力は増える。この急な落ち込みが失速で、航空機にとってはとても危険だ。

対称翼とフラップの使い分け: キャンバーがゼロの対称翼は、迎え角がゼロなら揚力もゼロ。曲技機がこれを使うのは背面飛行がしやすいからで、機首を上げて迎え角を作り揚力を得る。現代の主翼はフラップとスラットで断面を飛行の段階ごとに変える。離陸ではフラップを出してキャンバーを増やし揚力を稼ぎ、抗力も一緒に増えるので巡航では引っ込めて燃費を優先する。