レイノルズ数
無次元数
流れが乱れるか整うかを分ける代表的な数
何を言っている?
流れが持つ勢いと、粘りが引き止める力の比です。速さ、流れる物の大きさ、液体や気体の粘りの三つで決まり、単位を持たない裸の数になります。単位が消えているぶん、風洞に置いた小さな模型と、実際に走る車や飛ぶ翼を同じ土俵に載せられます。形がそろっていてこの比が同じなら流れも似るので、実物を作る前に確かめられるわけです。風洞や水槽での試験は、比をそろえて初めて意味を持ちます。
読み方の目安
管を流れる水なら、2000前後までは筋の通った静かな流れが続き、4000を超えると乱れが居座って戻らなくなります。境目は入口の形やわずかな振動でずれるため、幅のある目安として読みます。人が歩く速さで動く空気や水は、たいてい数万から数百万に入り、すでに乱れの側です。効くのは粘りそのものではなく粘りを密度で割った値で、水は空気よりねばついていても重いぶんこの値が小さく、同じ条件なら空気より大きな数になります。
どこで使われているか
航空機や車の模型試験、配管やポンプの設計、気象の計算、血管を流れる血の見積もりまで、流れを扱う場ならまず確かめる数です。層流と乱流が入れ替わる地点や、境界層の厚みの見当がつきます。ポンプの資料に並ぶ抵抗の表も、たいていこの数が横軸です。虫の翅や毛細血管のように小さくて遅い世界では、値が小さく粘りが主役になります。
はまりどころ
大きい=速いではありません。粘りの小さい液体を使ったときも、体の大きな物のまわりでも同じように上がります。どの長さを代表に取るかで値は何倍も動くので、長さの取り方をそろえない比べ方には意味がありません。乱れ始める境目も装置ごとに違う値になり、教科書の数字がそのまま出るとは限りません。粗さや振動の少ない管では、もっと先まで整った流れが続きます。読み違いはレイノルズ数が大きい=速いという読み違いで正面から扱います。
解説動画: 【大学物理】レイノルズ数とは何か【流体力学】/予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」
代表の速さと長さを決める: 翼の断面を例に、まず基準になる量を選ぶ。ぶつかってくる一様な流れの速さを代表速度、翼の根元の長さを代表長さとする。取り方は一通りではない——この系ではここを基準にすると決めただけだ。二つを掛けて動粘性係数で割ると、単位が打ち消し合って無次元の数になり、どの単位系で測っても同じ値になる。
同じ数なら流れは相似: 流体の方程式を基準の量で割って書き直すと、式に残る係数はレイノルズ数だけになる。だから形が相似で境界の条件も同じなら、この数が一致するだけで流れの形まで相似になる。動画の例では、実物の半分の大きさの模型で同じ流れを再現したいとき、流体を変えないなら流す速さを2倍にする。半分の大きさだから流れも半分、とはならない。
微生物が泳ぐドロドロの水: 代表長さだけが小さくなるとどうなるか。動画は微生物を持ち出し、体の長さが人間の100万分の1だとしたら、と考える。同じレイノルズ数になるのは、動粘性係数が100万倍の流体の中を人間が動いている状況だ。微生物にとっての水は、人間で言えばそれくらいドロドロした液体——同じ数なら環境も相似、と読み替えられる。
円管で層流から乱流へ: 円管に水を流し、管内の平均流速を代表速度、管の内径を代表長さに取る。ゆっくりなら着色した液体はまっすぐ平行に流れ、勢いを増すと乱れる。層流と乱流の境目が臨界レイノルズ数で、円管ではだいたい2040、上下10ほどの幅とされる。本には2000から4000と書かれることが多いが、丁寧に実験すると数万でも乱れずに済んだ報告もあるという。
勢いと粘りのどちらが勝つか: 速度差をならす粘性は流れを安定させ、勢いを保とうとする慣性は乱れる側に押す。レイノルズ数はこの二つの影響の比だ。ナビエ–ストークス方程式では慣性の項が速度の2乗で効き、粘性の項は速度の1乗なので、速くするほど慣性が勝つ。ただし講師は「粘性力ぶんの慣性力」という定番の言い方には自分は納得できていないと断っている。