フルード数

無次元数

流れの勢いと、波が伝わる速さを比べた数

何を言っている?

流れの勢いと、重力が水面を平らへ戻そうとする働きの比です。言い直せば、流れの速さを水面の波が広がる速さで測った数になります。波の伝わる速さは水が深いほど速くなるので、同じ速さで進んでも浅い場所ほど値は上がります。上下できる水面があってはじめて意味を持つ数で、満杯の管の中では出番がありません。重い冷気が下にたまった空気にも、同じ考え方の数を使います。

読み方の目安

1より小さいうちは、下流で起きた変化が波となって上流へさかのぼれます。1という値は波の速さに追いついた印で、これを超えると波は上流へ戻れず、流れが水面を押し切ります。1を超えていた流れが1より下へ落ちる場所では水面が段のように持ち上がり、跳水が立ちます。浅瀬を走る水が白く波立つのも、1を超えた側の姿です。堰の真下がいちばん見やすい場所です。

どこで使われているか

川や水路、ダムの放流部の設計、船の航跡や波を立てる抵抗の見積もりに使います。船を長くすると同じ速さでも値が下がるため、長い船ほど波を立てにくいという勘所につながります。水理模型ではこの数をそろえて縮尺を決め、粘りの側のレイノルズ数は同時には合わせられません。ずれる摩擦のぶんは、あとから計算で足します。

はまりどころ

水深を代表に取るか、船の長さを取るかで値が変わるので、川と船では別の数だと思うほうが安全です。数字だけを渡されても比べられないため、代表の長さを必ず添えます。浅いほど値は上がりますから、同じ速さでも川底が上がった先で波の立ち方が急に変わります。潮で水深が動く河口では、同じ船でも時間帯で値がずれます。

解説動画: 【流体力学・水理学⑤】――フルード数と開水路/筑波大学山本研究室 OPEN COURSEWARE

開水路ではベルヌーイが変わる: 川のような開水路では、ベルヌーイの式を比エネルギーという形に置き換えて使う。深いところの圧力は上に乗っている水の重さで決まる静水圧なので、これを全水頭の式に入れると基準の高さの項が消え、速度の分と水深だけが残る。高さをどこに取っても同じ式で通せる。

比エネルギー図の上と下: 横軸に比エネルギー、縦軸に水深をとると、45度の直線は流速ゼロの止まった水にあたる。流量があれば必ず流れるので実際は曲線になり、その上側は比エネルギーの割に水深が大きい深くてゆっくりの常流、下側は水深が小さく流速が大きい浅くて速い射流。ちょうど境目が限界流。

フルード数は何と何の比か: 限界流の流速は、水深に重力加速度を掛けた値の平方根で決まる。フルード数は、その場の流速がこの限界流速の何倍にあたるかを表した数。1より小さければ常流、1より大きければ射流。さきほどの図のどちら側にいるのかが、水深や流量を見比べなくてもこの数ひとつで決まる。

川幅が変わるときの整理: 川幅と水深が場所ごとに変わる川では、比エネルギーが流下方向に一定なので、流れの向きに微分するとゼロになる。流速を流量と断面積で書き直し、川幅も水深も位置の関数である点に注意して整理すると、水深の変化率が川幅の変化率に係数を掛けた形にまとまり、その係数にフルード数の二乗が入る。

答えは常流か射流かで逆転: 常流では係数が正なので、川幅が狭まれば水深も下がり、広がれば上がる。射流ではフルード数の二乗が1を超えて符号が裏返り、川幅が狭まると水深はむしろ上がる。幅が変われば水面は上がるのか下がるのかという問いはどちらも正解で、もとの流れがどちらだったかで答えが決まる。