オイラー方程式
方程式
粘りを外して見通しをよくした式
何を言っている?
ナビエ–ストークス方程式から粘りの項を落とした形です。流体を、ねばりを持たない理想の物として扱います。式が軽くなるぶん見通しがよく、圧力と速さの結び付きだけで大筋を追えるので、壁から離れた広い場所なら実物ともよく合います。壁の近くだけは、別の扱いを足します。
読み方の目安
合うのは壁から離れた場所と、速い流れの外側です。逆に、壁のすぐ近くにできるごく薄い層では合いません。厚みは物の大きさと速さで動き、翼なら数ミリから数センチほどです。そこは境界層として別に扱い、外側だけをこの式に任せるという切り分けが百年ほど前に整えられ、今も設計の土台です。どこを外側と見るかが腕の見せどころになります。
どこで使われているか
翼まわりの大筋の計算、超音速で立つ衝撃波の位置、大気や星の大きな流れ。粘りを外すと計算が速く済むので、設計の初めに形を絞り込む段階で選ばれます。計算の時間が桁で減るぶん、形の候補を何十通りも試せます。風洞に模型を入れる前に、当たりをつけておく段階の道具です。
はまりどころ
このまま押し通すと抵抗がゼロという答えが出ます。前後が対称になり、後ろの圧力が前と同じだけ押し返してしまうからです。実際には流れが剥がれて抵抗が残るので、粘りを外した時点で抵抗の話は扱えないと考えてください。使うなら、境界層の手当てが要ります。
解説動画: 流体力学第16回「オイラーの運動方程式」【機械工学科】/単位が取れる機械工学【メカニカル大学】
質点と同じ立て方: 式の見た目は近寄りがたいが、中身は高校の質点の力学と同じ、というのが動画の筋。まず斜面を登る物体を例に、押す外力・摩擦力・重力の斜面方向の分力を並べ、表面が受ける力と重力で色を分けて整理する。この分け方をそのまま流体粒子へ移していく。
表面に効くのは圧力: 流体粒子の表面に働くのは圧力による力だけとする。上流側の面の圧力を基準にすると、下流側の面は流れ方向の圧力の変化に微小な長さを掛けた分だけずれる、と近似する。両面ぶんを足し合わせると、圧力が下がっていく側へ押す力が残る。
重力は高さの変化で: 重力は密度と重力加速度と体積の積で、面積かける微小な長さが流体粒子の体積にあたる。流線が水平と作る角度をそのまま残さず、微小な長さに対する高さの変化の比に書き換えるのが手順の要で、向きが流れと逆なので符号は負になる。
質量で割ると出る: 圧力による力と重力を足した式にニュートンの第二法則を当て、両辺を流体粒子の質量で割ると、冒頭で見せた形がそのまま現れる。導いてみれば高校の力学と同じという結論で、覚えるより導いたほうが式と仲良くなれる、という立て付け。
定常ならベルヌーイ: 定常な流れなら速度も圧力も流線上の位置だけの関数になるので時間の微分が消え、偏微分の式が常微分の式に落ちる。これを流線に沿って積分するとエネルギー保存、すなわちベルヌーイの式が出てくる、と次回への橋渡しをする。