ナビエ–ストークス方程式
方程式
流れのほとんどを表す、解きにくい一本
何を言っている?
流体の小さな一片を取り出し、圧力と粘りと重力に押されて、その一片がどう加速するかを書いた式です。中身は運動の法則を流体に書き直したもので、空気も水も油もこの一本で表せます。血液のように粘りが一定でない液は、粘りの扱いを差し替えて使います。ただし百年以上使われてなお、どんな場合でも解ける道筋は見つかっていません。
読み方の目安
粘りの項と、流れが自分自身を運ぶ項のどちらが強いかで姿が決まり、その比がレイノルズ数です。粘りが勝てば整った流れになり、勢いが勝てば乱れます。どちらが強いかを先に見ると、計算に入る前でも、出てくる答えの姿をだいたい想像できます。式は同じで、比が変わるだけなのに別の世界が現れます。
どこで使われているか
天気予報、車や機体の設計、血流やダムの解析。手で解ける場合はごく限られるので、空間を細かく刻んで数値で追います。数日先の天気を出すためにも、大気を細かく区切って解いています。乱れをそのまま解くと計算量が桁違いに増えるので、実務では近似で補います。
はまりどころ
三次元で、なめらかな答えがいつまでも続くのかはまだ証明されていません。数学の未解決問題として賞金までかかっています。乱流も、統計としての性質は分かっていても一つ一つの渦の行方は長くは追えません。予報が数日先までなのは、初めのわずかな違いが育つからで、式が違うからではありません。
解説動画: 【ミレニアム懸賞問題】文系でも分かるように数学最大の未解決問題を解説/ブレオの理系トリビア
賞金1億円の未解決問題: クレイ数学研究所が2000年に選んだミレニアム懸賞問題は7つあり、解いた人には100万ドル(約1億円)が贈られる。ナビエ–ストークス方程式の解の存在となめらかさは、その7つの一つだ。解けたのはポアンカレ予想だけで、ロシアの数学者グリゴリー・ペレルマンが証明した。
分子を一つずつは追えない: 流体とは、気体や液体のように決まった形を取らず簡単に形を変えられるもの。これをニュートンの運動方程式で扱おうとすると、6.03かける10の23乗個という1モルぶんの分子それぞれに式が要り、コンピュータでも解けない。そこで流体を、ひとかたまりのマクロな塊として捉える道が選ばれた。
運動方程式の流体版: そうしてできたのがナビエ–ストークス方程式で、いわばニュートンの運動方程式の流体版にあたる。空気も水もガスも身の回りにあふれているので、その動きを式で書いて予測できれば便利になる。天気予報や乗り物の空気抵抗の計算ができるのは、この式のおかげだと動画は説明する。
問われているのは解の存在: 問われているのは解き方ではなく、解があるかどうかのほうだ。3次元の空間と時間の中で最初の速度を決めたとき、それに応じる速度の分布と圧力の分布がいつでも存在して、なめらかなまま全体で決まるか。無いなら無いと証明してもよい、という形の出題になる。
いまは近似で回している: この方程式は難しすぎて解けず、解けるかどうかも分かっていない。だから普段は式を単純化して近似解を求めている。解ければ精度よく、簡単に予測できるようになり、天気予報も空気抵抗の計算も良くなる。動画は7問の中でいちばん生活に近い問題だと位置づける。