道具と材料図鑑
乾燥米麹(麹と種菌)
常温で置ける、最初の一袋。蒸した米に麹菌を育てて乾燥させたものです。水分を抜いてあるので常温で保存でき、扱いやすい—— 塩麹・甘酒・味噌のどれから始めるにしても、最初に買うのはこれで構いません。使うときは水や湯で戻すぶん、生麹より仕込みの水分をやや多めにします。
生米麹(麹と種菌)
香りは強いが、日持ちしない。乾燥させていない、できたての麹です。麹らしい甘い香りが強く、酵素の働きも活発。味噌や甘酒の仕上がりに差が出ると言われます。代わりに日持ちがしません—— 冷蔵でも数日から1週間程度が目安で、届いたらすぐ使うか冷凍するかを決める必要があります。
ヨーグルトの種菌(麹と種菌)
市販品を種にするか、専用の粉にするか。牛乳を固めるための乳酸菌です。市販のプレーンヨーグルトをそのまま種にする方法と、粉末の専用種菌を使う方法の2つがあります。前者は手軽で、後者は菌の構成が分かっていて結果が安定します。
納豆菌(種菌)(麹と種菌)
少量でいい。強すぎるから。納豆を作るための菌です。市販の納豆を数粒使う方法でも作れますが、粉末の種菌のほうが量を管理できます。芽胞を作るため100℃の加熱でも死なず、他の菌を圧倒する強さがあります。
米ぬか(麹と種菌)
糠床の本体であり、菌の餌。玄米を精米したときに出る外側の部分です。糠床の本体そのものであり、乳酸菌や酵母の餌にもなります。栄養が多いぶん傷みやすく、鮮度が仕上がりを左右します。
塩(塩と材料)
味付けではなく、守りの担当。仕込みの塩は調味ではなく、腐敗菌を止めて狙った菌だけを残すための条件です。だからレシピの塩分を自己判断で減らすと、失敗ではなく危険側に振れます。塩を控えたいなら、仕込みではなく食べる量で調整してください。
大豆(塩と材料)
味噌も納豆も、ここから始まる。味噌・納豆・醤油・テンペの主原料です。たんぱく質が多く、麹菌や納豆菌がこれを分解してうま味(アミノ酸)に変えます。品種と産地で仕上がりが変わりますが、最初はこだわらなくて構いません。
米(塩と材料)
麹の土台であり、甘みの元。麹を育てる土台であり、甘酒ではでんぷんが分解されて甘みになります。麹菌が菌糸を伸ばすには、粒が立っていて、表面が乾いた状態が要ります—— だから麹づくりでは「蒸す」のであって「炊く」のではありません。
昆布・唐辛子・山椒(副材料)(塩と材料)
味だけでなく、床の状態にも効く。糠床や漬物に加える副材料です。昆布はうま味を足し、唐辛子は香りと辛みに加えて防カビの働きがあるとされ、山椒は香りを立てます。どれも必須ではありませんが、味の輪郭がはっきりします。
ホーロー容器(容器と重し)
酸と塩に強く、においが移らない。金属にガラス質を焼き付けた容器です。酸にも塩分にも強く、においが移りにくく、光を通さない—— 糠床や味噌の仕込みで最も扱いやすい選択のひとつです。中身が見えないのが唯一の弱点になります。
ガラス瓶(容器と重し)
中が見えるので、状態を読める。酸にも塩にも強く、においも移らず、そして中が見える。甘酒・塩麹・ピクルス・サワードウの種など、少量の仕込みに向きます。状態の変化を毎日見られるのは、覚えたてのうちは大きな利点です。
漬物樽・かめ(容器と重し)
量を仕込むなら、これになる。白菜漬け、梅干し、大量の味噌など、重石をかけて水を上げる仕込みに使います。陶製のかめは重くて安定し、温度が変わりにくい。樹脂製の樽は軽くて扱いやすく、価格も抑えられます。
重石(容器と重し)
空気を追い出すための道具。材料を押さえて水を上げ、空気に触れる面を無くすための道具です。水の中に沈んだ野菜はカビません。重石は「押さえる」ためではなく「空気を断つ」ために載せている、と考えると量の見当がつきます。
押し蓋(容器と重し)
重さを、面で伝える。重石と材料のあいだに挟む平たい板です。点で掛かる重さを、面に広げて均一に伝えます。これが無いと重石の下だけ沈み、周りが浮いて空気に触れます。木製、樹脂製、陶製があります。
保存袋(ジッパー袋)(容器と重し)
少量を試すなら、いちばん軽い。袋の中の空気を抜いて封をすれば、それだけで空気を断てます。重石も押し蓋も要りません。味噌や糠床を少量ずつ試すとき、冷蔵庫のすき間で仕込むときに向きます。失敗しても捨てやすいのも利点です。
温度計(はかる道具)
体感は、数字とかなりずれる。発酵の失敗で最も多い原因は温度です。「あたたかい場所」「人肌」といった表現は人によって10℃以上ぶれます。最初に買う道具を1つだけ挙げるなら、温度計—— 麹菌は35℃前後、乳酸菌は20〜40℃、酵母は25〜30℃と、狙う温度が菌ごとに違います。
デジタルスケール(はかる道具)
塩分%は、はかりでしか作れない。仕込みの塩分は%で決まり、%は重量からしか出せません。大さじ何杯という計り方では、塩の粒の大きさで実際の量が変わります。温度計と並んで、発酵で最初に要る道具です。
pH試験紙(はかる道具)
安全側に入ったかを、目で見る。液体の酸性度を色で示す紙です。発酵が進むほどpHは下がり、下がるほど腐敗菌が増えにくくなります。pH4.6以下は、ボツリヌス菌が増えられない目安として使われる値で、瓶詰めやピクルスを仕込むときの判断材料になります。
ヨーグルトメーカー・発酵器(はかる道具)
一定の温度を、放っておいて保てる。設定した温度を長時間保つ箱です。ヨーグルト、甘酒、塩麹、納豆、パン生地の発酵まで、温度さえ決まれば同じ機械で作れます。季節に左右されなくなるのが最大の利点—— 冬に何も起きない、夏に進みすぎる、が無くなります。
食品用アルコールスプレー(衛生と保存)
最初の勝負は、仕込む前に付いている。容器・道具・手を拭くための消毒用アルコールです。発酵の失敗の多くは、仕込む前にすでに入っていた雑菌が原因です。狙った菌が優位に立つまでの数日間、他の菌を減らしておくことが効きます。
さらし・ふきん(衛生と保存)
空気は通して、虫は通さない。容器の口に掛けて輪ゴムで留めると、空気は通しながら、ほこりと虫は防げます。酢、コンブチャ、サワードウの種のように酸素が必要でガスも出る仕込みでは、密閉するより布が正解です。麹づくりでは、蒸した米を包んで保温にも使います。
蒸し器・せいろ(衛生と保存)
茹でると、うま味が湯に出ていく。茹でると水に溶け出す成分が、蒸せば材料の中に残ります。味噌の大豆、納豆の大豆、麹の米は、いずれも蒸すのが基本です。麹づくりでは特に、炊いた米では水分が多すぎて麹菌より雑菌が優位になります—— 蒸す必要があるのは、味の問題だけではありません。