腕立て伏せ

胸

器具: 自重 / 難易度: 初級

腕立て伏せは、どこでもできる押す動きの基本

効く筋肉

大胸筋と上腕三頭筋、肩の前側(三角筋前部)が主に働きます。肩・体幹・腕の筋肉を比べた研究(Marcolinら、2015年、健康な成人8人)では、標準的な手幅を含む5種類の腕立て伏せいずれでも前鋸筋・脊柱起立筋・腹直筋・腹斜筋など体幹の筋肉も働いていました(少人数の研究です)。器具なしで押す力と体幹の安定を同時に鍛えられます。

やり方

手は肩幅の1.5倍ほどに広げ、指先をわずかに外へ向けて置きます(ザ・きんにくTVの解説)。頭からかかとまで一直線を保ったまま胸が床から握りこぶし一つ分の高さまで、2〜3秒かけて下ろし、1秒止めてから押し戻します。呼吸は下ろすときに吸い、上げるときに吐きます。1回にかける時間の目安は4〜6秒です(Bro Pumpの説明)。10〜15回を3セットが目安です。

フォームの注意点

腰が反って落ちると腰痛の原因になり、胸への負荷も抜けます。お尻を軽く締めて骨盤を固定し、肘は真横ではなく斜め後ろ45度に引きます。首だけ先に下ろすのも避けます。CALISLIFE自重トレは、下げるときに肩甲骨を寄せずに肘だけ外へ開くと肩を痛めやすいとし、下ろすときに肩甲骨を寄せ、上げるときに開く動きと、左右対称に動かすことを勧めています。しっかり下げて可動域を狭めないことも重要です。

バリエーション・代替種目

きつい場合は手を台に置くインクラインプッシュアップ、余裕が出たら足を上げるデクラインプッシュアップへ進みます。手幅を狭めれば腕、広げれば胸の外側へ比重が移ります。通常と膝つきの腕立て伏せを比べた研究(Suprakら、2011年、男性28人)では、下ろした姿勢のほうが上げた姿勢より手にかかる体重の割合が大きく、膝つきはその変化が通常より大きいとされます。1回もできない場合は、まず膝をついた形から始めるのがおすすめです。

出典

  1. 論文・英語 Suprak DN ほか(2011) The effect of position on the percentage of body mass supported during traditional and modified push-up variants
  2. 論文・英語 Marcolin G ほか(2015) Selective Activation of Shoulder, Trunk, and Arm Muscles: A Comparative Analysis of Different Push-Up Variants
  3. 動画・英語 Bro Pump You're doing push-ups wrong... this is why you're not getting stronger
  4. 動画 ザ・きんにくTV 【The Muscle TV】 【自宅筋トレ】なかやまきんに君の正しい腕立て伏せを学ぼう。
  5. 動画 CALISLIFE自重トレ 腕立て伏せでよくある間違い7つ|正しいフォームについて解説!

解説動画: 正しい腕立て伏せのフォームと効かせ分け/ザ・きんにくTV 【The Muscle TV】

概要: プッシュアップで主に使う筋肉は大胸筋、三角筋の前部と中部、上腕三頭筋で、バストアップしたい人や腕を引き締めたい人に勧められる種目。行うにあたってまず頭に入れるのは、動作の間は常に頭から足まで体をまっすぐ保つことと、常に胸を張った状態で行うことの2点。

手幅と手の位置: 手幅は肩幅の1.5倍程度に広げる。手の位置は肩の真下に来るようにセットし、その付近で体を支える。手の位置が頭側や足側にずれるとターゲットに効果が出ないので、まず肩の真下に置いてから始める。この形で体をまっすぐ、胸を張ったまま肘を曲げる動作を繰り返す。呼吸は下ろすときに吸い、上げるときに吐く。

上部・下部・内側の打ち分け: 腕立て伏せには胸の下・内側・上をそれぞれ効かせるテクニックがある。椅子やソファーを用意して頭側を高くすると胸の下部、足側を頭より高くすると胸の上部に効かせられる。さらに手の位置をより狭くすると胸の内側に効かせられる。同じ種目のまま体の傾きと手幅で刺激の入る場所を変えられる。

回数の目安: まずはゆっくりしたスピードで行い、10〜15回を3セット程度から始めるとよいとまとめている。体をまっすぐ保つこと、胸を張ることという2つの原則を守れる範囲で行うのが前提になる。

解説動画(海外・英語): The Perfect Push-Up To Build Muscle (AVOID THESE MISTAKES!)/Jeremy Ethier

手幅を広げて肘を開くのが最大の失敗: 「胸に効かせよう」と手幅を広げて肘を開く人が多いが、実際には逆で、胸への刺激が減り、肩を痛めるリスクが上がる。押す動作では肘の角度を大胸筋の繊維の向きに合わせる必要があるが、広い手幅だと可動域が短くなるうえ、ボトムで肘が横へ開かざるを得なくなり、角度も張力も三角筋前部のほうに合ってしまう。広い手幅・肘開きと、狭い手幅・肘たたみを比べた複数の研究でも、広いほうは胸の活動が明らかに低く、三頭筋の活動も低く、筋力とパワーの伸びも小さかった(可動域が短いためと考えられる)。手幅は肩幅のやや外側かそれ以下にして、肘は体側へたたむ。角度については肘の位置を調べた研究で、外へ60度を超えると肩がインピンジメントを起こしやすい位置に入るので、60度未満、できれば45度前後。正しく行うと体は真上下ではなく、前後に動く——ベンチプレスの正しいバー軌道と同じ動きになる。

手の向き:内向きにしない、外向きにもしすぎない: 手を少し内向きに置くと、肘が開く動きを誘発するうえ、肩が内旋位に入ってインピンジメントのリスクが上がる。研究では肘関節へのせん断ストレスも増えるとされる。手はニュートラル(内にも外にも向けない)に置き、スクワットで足をねじ込むのと同じ要領で、手を床にねじ込むようにして肩の外旋を作る。最初から手を外へ向けすぎていると、このねじり込みができない。動作中も手の内側ではなく外側に体重が乗るイメージで外旋を保つ。これだけで肩の安定と快適さが変わる。

肘と肩の使い方で、狙う筋肉を変えられる: 同じ腕立て伏せでも、肘と肩の扱いを変えるだけで効かせる場所を寄せられる。胸に寄せたいなら肘の屈曲を減らす——セットアップで手をわずかに後ろへ置き、肘を手首の真上に保ったまま動作する。これは複数の腕立てのバリエーションを比べた2005年の論文の結果と一致する。三頭筋・腕に寄せたいなら逆で、肘の屈曲を最大化する——肘をたたんで、手から離れるように後ろ下へ落としていく。三頭筋がより広い可動域を通るので張力が乗る。肩に寄せたいなら足を高い台に上げる、またはパイクプッシュアップ。ベンチの角度を上げていくのと同じ理屈で、肩の屈曲が増えるほど胸や三頭筋から肩へ張力が移る。

肩をすくめない・速く行わない: 手の位置が正しくても、疲れてくると肩が耳のほうへすくみ上がる。張力が胸から僧帽筋へ移り、安定と押す力を大きく失う。広背筋を使って肩を耳から引き下げ、固定した位置を毎回保つ。最後がテンポで、経験者ほど自重の腕立てを速く数をこなしがちだが、筋肥大目的なら速いテンポは損。テンポを比べた研究では、1回1.5秒→2秒→2.5秒と遅くするほど、胸の活動が増え、三頭筋と三角筋後部の活動は有意に増えた(2.5秒が最大)。さらに深刻なのが関節で、速いテンポでは肘関節へのせん断力が135%、トルクが163%も大きくなった。腕立ては量をこなす種目なので、この差が積み重なる。