ケーブルフライ
胸
全可動域で張力が抜けないフライ
効く筋肉
大胸筋の中央から内側にかけて働き、閉じきった位置でも負荷が抜けません。三角筋前部は姿勢を支える役に回るので、胸の収縮感を最も得やすい種目といえます。
やり方
滑車を肩の高さに合わせて両手にグリップを持ち、片足を前に出して構えます。肘を軽く曲げたまま胸の前で手が交差する手前まで閉じ、1秒静止してから戻します。12〜15回を3セット。
フォームの注意
体を前に倒しながら腕を振ると、肩だけの動きになり胸の張りが消えます。体幹は立てたまま固定し、肩を落として胸を張った姿勢を最後まで保ちます。
バリエーション・代替
滑車を高くすればケーブルクロスオーバー、低くすれば胸の上部狙いに変わります。マシンが空いていなければペックデック、自宅ではチューブを柱の高い位置に掛ければ同じ軌道をなぞれます。
解説動画: ケーブルで大胸筋の上部・中部・下部を打ち分けるやり方/GENT Fitness
概要: 大胸筋を上部・中部・下部の3つに分けて狙い分ける解説。上部は鎖骨の内側から、中部は胸骨から、下部は肋骨側から、いずれも上腕骨に向かって走っている。滑車の高さと押す方向をそれぞれの走行に合わせることで、同じケーブル1台で3方向から胸を攻められる。胸をひとくくりにせず、立体的に作るために3つを打ち分けたい。
下部は滑車を一番上にして真横から: 下部は肩関節の内転で働くので、滑車は一番上に設定する。よくある間違いはケーブルより体が前に出てしまう形で、こうなると内転ではなく肩関節の伸展が入り、下部の作用が弱まる。肩が痛い人や体の硬い人には怪我のリスクもあるため、ケーブルがほぼ真横から来る位置に立つ。脇を開いた位置から肘の内側を胸の外側へ押し込むイメージで、割り箸を挟むくらい強く寄せる。
中部は肘が戻る位置の延長線上に合わせる: 中部を狙うときは一歩前に出て肩を落とし胸を張り、その姿勢で肘が戻ってくる位置の延長線上に滑車を合わせる。足はどちらでもよいので支えやすいほうを前に出す。押す先に自分だけの目印を決め、そこへ向けて上腕骨を胸の内側へ最短距離で近づけていく。胸の張りが甘くなると腕や肩に負荷が逃げるので、張りを保ったまま動作する。
上部は鎖骨の内側へ肘を上げる: 上部は鎖骨の内側から上腕骨に付いているので、その延長線上に滑車をセットし、肩関節を屈曲させながら押し上げる。一番下の穴から引くと初動で手先を使いすぎ、引っかかって腰を痛めることもあるため、肘を曲げた延長線上の高さで十分。胸を張って肩を落としたまま鎖骨の内側へ肘を上げていく。体が硬い人は先に胸椎のストレッチを済ませておきたい。
手先を先に合わせない: どの高さでも共通なのが、手先から寄せにいかないこと。手が先に触れてしまうと一番寄せたい上腕骨が寄り切らない。上腕骨を胸へ最短距離で近づけるのを最優先にし、きつくなってきたら腕先の力を足していく。戻す側もストレッチを深く取りすぎると肩関節への負担が増えるので、収縮を狙う種目と割り切る。
解説動画(海外・英語): Stop Doing Chest Flys - I'm Begging You!!/ATHLEAN-X™
ベンチの上のフライを「埋め直したい」という主張: ATHLEAN-Xのジェフ・カバリエは、この動画でダンベルフライを「一度掘り起こして、もう一度埋め直すため」に実演すると宣言し、代わりにケーブルやバンドで行うフライを勧める。種目を叩きたいのではなく、もっと良い代替があると伝えたいという立場で、理由を4つ挙げていく。1つ目は姿勢の危険性で、ベンチに寝て行うフライは一番下の位置で腕を支えるものが何も無い。床に寝て行うフロアフライなら床が受け止めてくれるが、ベンチでは伸ばされ過ぎを止めるものがない。弱い位置に合わせて重量を落としていても、失敗すれば肩の前面、とくに前方の関節包に余計なストレスがかかると説明する。肩に痛みや既往がある場合は自己判断せず医療者に相談したい。
重さのかかり方が上下で逆になっている: 2つ目の理由はてこの関係。腕を横に開くほど、肩から重りまでの距離(モーメントアーム)が伸びるので、同じ重量でもフライの下の位置では重く感じる。大胸筋はダンベルが体から遠ざかるほど力を発揮しにくくなるため、その弱い位置に合わせて重量を下げるしかなくなる。閉じた上の位置ではもっと重い物を扱えるのに、下で支えられないから使えない、という状態になるわけだ。3つ目の理由はその裏返しで、一番上ではほとんど、あるいはまったく大胸筋に負荷がかかっていない。カバリエは「ここでならいつまでも止めていられる」と言う。大胸筋が最も強く収縮している位置、できれば正中線を越えて閉じ切りたいその位置こそ負荷が欲しいのに、そこが空になっているのが問題だとする。
あのストレッチ感は大胸筋のものではない: 4つ目は「胸がよく伸びる」という感覚の正体。大胸筋は胸骨から上腕骨の上部に付いていて、指でたどれば付着部を自分で触って確かめられる。カバリエはその2点を示したうえで、ベンチの一番下で肘を開いても、この2点間の距離はほとんど伸びないと主張する。腕を少し下げても変化は極めてわずかだという。ではあの伸び感は何かというと、肋骨まわりの軟骨が引き伸ばされる感覚と、烏口腕筋という別の筋肉のストレッチだとする。烏口腕筋は肩の奥の烏口突起から同じ上腕骨の少し下まで走っていて、腕を開くとこの2点の距離は確かに伸びる。大きくはないが、はっきり感じ取れる程度には伸びるという説明だ。だから「フライは胸のストレッチが効く」という主張は錯覚だとし、胸をしっかり伸ばしたいなら別の種目のボトムのほうが深い——具体例としてディップスの一番下を挙げている。
ケーブルやバンドなら負荷曲線が反転する: では代わりに何をするか。フライという種目はベンチに寝て腕を横に開く形に縛られているわけではなく、本質は肩の水平内転(腕を体の前で閉じる動き)で、それが大胸筋の主な働きそのものだとカバリエは整理する。そこでケーブルマシンを使う。マシンが無ければトレーニングチューブをどこかに固定しても同じことができる。腕を開いた開始位置では力の向きが上腕とほぼ平行になるため、胸にかかる負荷がほぼゼロになる。つまり最も弱い位置で負荷が最も小さいので、軽い重量に縛られずに済む。そのぶん重い負荷を選べて、閉じ切った収縮位置にピークの負荷がかかる。「下で支えられないから軽くするしかない」という制約が消えるのが、ケーブルにする最大の実利だという。
正中線を越えて閉じ切れるかどうかが決定的な差: 最後に付け足される5つ目の論点が、ダンベルフライでは上で内転に抵抗がかからないこと。閉じる局面ではダンベルは横向きに動いているのに重力は下向きにしか働かないので、抵抗が残らない。ケーブルやバンドなら正中線を越えるところまで抵抗を受け続けられるため、胸への刺激が明らかに大きくなる。カバリエの結論は、内転の動き自体は必要不可欠で絶対に外せない、ただしダンベルフライはその内転を劣った形でしか与えてくれない、というもの。だから「支えの無いチェストフライは埋葬する時だ」と言い、同じ動きをケーブルかバンドで行えば結果は良くなると締めくくる。ただしこれは科学的根拠を重視すると謳う一チャンネルの主張で、ダンベルフライを全面的に否定する見方が一般的というわけではない点は踏まえておきたい。