ダンベルプレス

胸

器具: ダンベル / 難易度: 初級

ダンベルプレスは、左右差を整えやすい基本のプレス

効く筋肉

大胸筋全体が主役で、上腕三頭筋と肩まわりが押す動きを助けます。左右が独立して動くため、利き手側だけが強くなる偏りを直しやすいのが特徴です。筋トレ経験のある男性12人の研究では、ダンベルはバーベルより最大重量(1RM)が17%軽く、上腕三頭筋の活動は低め、上腕二頭筋は安定を取るぶん高めで、大胸筋と三角筋前部には差がありませんでした。

やり方

ダンベルを膝に乗せて座り、膝を持ち上げながら後ろへ倒れてスタート位置へ運びます。肩甲骨を寄せたまま胸の横まで深く下ろし、肘が伸びきる手前で止めて押します。Scott Herman は、足を床に踏み手首をまっすぐにして、押すときに息を吐くと説明しています。10〜12回を3セットから始め、今古賀翔(トレーニング科学)は5回以下の高重量だと構えにくくふらつくとして、5回以上できる重さを勧めています。

フォームの注意点

下ろす位置が肩の真上より頭側になると、肩の前側に負担が集中します。トップでダンベル同士をぶつけるとそこで力が抜けるので、拳一つ分あけて止めます。今古賀翔(トレーニング科学)は、重くなるほど可動域が浅くなりやすいので、ダンベルが胸に着くかではなく腕が水平になるまで下ろすことを基準にするよう勧めています。水平まで下ろして肩が痛む人は脇が開きすぎていることがある、とも述べています。

バリエーション・代替種目

角度をつけたインクラインダンベルプレスや、肘を体側に寄せるフロアプレスと組み合わせると刺激を変えられます。ベンチがなくても床で同じ動きを再現できます。女性24人のダンベルでの研究では、三角筋前部の活動がベンチ、インクライン、ショルダープレスの順に高まりました。トレーニング経験者30人のベンチプレスでは、ベンチの角度が30度で大胸筋の上部が最大となり、45度を超えると三角筋前部が高まりました。

出典

  1. 論文・英語 Saeterbakken AH ほか(2011) A comparison of muscle activity and 1-RM strength of three chest-press exercises with different stability requirements
  2. 論文・英語 Luczak J ほか(2013) Shoulder Muscle Activation of Novice and Resistance Trained Women during Variations of Dumbbell Press Exercises
  3. 論文・英語 Rodríguez-Ridao D ほか(2020) Effect of Five Bench Inclinations on the Electromyographic Activity of the Pectoralis Major, Anterior Deltoid, and Triceps Brachii during the Bench Press Exercise
  4. 動画 今古賀翔【トレーニング科学】 【それNGです】ダンベルベンチプレス:5つのエラー動作と改善方法【筋トレ】
  5. 動画・英語 ScottHermanFitness How To: Dumbbell Chest Press
  6. 動画 VALX 山本義徳 筋トレ大学 【筋トレ】ダンベルベンチプレスはここに要注意!大胸筋にしっかり効かせるためのポイント

解説動画(海外・英語): STOP Doing Dumbbell Press Like This (5 Mistakes Slowing Your Chest Gains)/Jeremy Ethier

腕の軌道を胸の繊維に合わせる: よくあるのは肘を大きく開いて、ダンベルを真上に上げ下げする形。この形は楽に感じて重い重量を扱えるが、肩を痛めるリスクが高いうえ、胸への刺激が乏しい。胸に効かせるには腕の軌道を大胸筋の繊維が走る向きに合わせる必要がある。肘を大きく開いた軌道は三角筋前部と、胸の下にある烏口腕筋の向きに合ってしまう。これが「胸ではなく肩の前に効く」の正体。肘を体から45〜60度の角度にたたみ、握りも肘に合わせて少し内向きにする。この形にするとダンベルは真上下ではなく、下ろすときは胸の中央へ向かって前へ、上げるときは肩へ向かって後ろへという弧を描く。

前腕を垂直に保つ。曲げるとテコが短くなる: 見落とされやすいが同じくらい多いのが重くなるにつれて前腕が内側へ倒れていくこと。無意識にやってしまう代償動作で、胸の発達が伸び悩む人に特に多い。前腕を内へ倒すとテコが短くなって動作が楽になり、負荷が胸から抜けて三頭筋にも分散する。ごくわずかな傾きでも影響は大きく、重りが肩と肘の中間あたりに来るまで倒れると、胸にかかる負荷はおよそ半分になる(基本的な物理で見積もった概算)。重い重量は扱えるが刺激は増えず、関節へのストレスだけが増える。重量を落として、毎回の反復で前腕が肘の真上に垂直に立っている状態を保つ。

肩を前に丸めない(最も多い失敗): 猫背の姿勢が癖になっている人が多く、押すときに肩が前に丸まる。胸が弱い人ほど肩のほうが強いので、肩が動作を乗っ取ってしまい、胸ではなく三角筋前部ばかりが育つ。対策は2段構え。まずプレスの前にフォームローラーで背中を反らせ、オーバー&バックやバンドプルアパートで胸を開いておく。そのうえで動作中は、下ろすときは背中の筋肉でダンベルを胸へ引き寄せるつもりで肩甲骨を寄せ、上げるときは肩を前に丸めさせず、胸を張ったまま「二頭筋を胸の側面へ押し込む」意識で押す。毎回これを意識するだけで、働く場所が肩から胸へ移るのがすぐ分かる、としている。

トップで腕を寄せすぎない: 大胸筋の主な働きは水平内転(腕を体の前で閉じる動き)で、これがダンベルプレスを優れた胸の種目にしている。ここから「トップで腕を近づけるほど胸が働く」と考えて、ダンベル同士を当てる人がいるが逆効果。ダンベルにかかる力は重力なので真下向きで、腕が肩の真上に来た時点で腕を左右に引き離そうとする力は消える。それ以上寄せても胸への刺激は増えず、次の反復に回せるはずのエネルギーを捨てているだけ。腕が肩の真上に来たところで各回を止める。

ベンチの角度を分けて、胸の上部・中部・下部を埋める: 最後はフォームではなく角度の話。フラットのダンベルプレスは優れているが、成長の大半は胸の中央に出るので、上部と下部が取り残されやすい。2020年の論文では、インクラインベンチプレスを行った被験者は、フラットのみの被験者と比べて胸の上部の成長が2倍以上だった。そこで週1回はインクラインダンベルプレスも入れる。ただし角度は15〜30度のごく浅い傾きが最適で、多くのベンチで最低位置から1〜2段上げたあたり。これより起こすと三角筋前部が仕事を取ってしまう。人によってはベンチの端の下にプレートを1枚挟むだけの傾きで十分。下部はフラットでもよく入るが、反対側にプレートを挟んで軽いデクラインを作るとさらに効くという研究もある。なおこれらの修正を入れると扱える重量は確実に落ちるが、それは胸が仕事をするようになった証拠なので良い変化だとしている。