ベンチプレス

胸

器具: バーベル / 難易度: 中級

ベンチプレスは、上半身の押す力の基準になる種目

効く筋肉

主に働くのは大胸筋で、上腕三頭筋と三角筋の前部が補助に入ります。初心者と経験者の男性28人が握り幅を狭・中・広に変えて6RMを挙げた筋電図の研究では、握りが広いほど上腕二頭筋の活動が増え、広い握りは上腕三頭筋の活動が中・狭い握りより低く、6RMの重さは両群とも狭い握りが他より軽くなりました。Jeff Nippard は、狭い握りでは上腕三頭筋と大胸筋上部の関与が増えると説明しています。

やり方

肩甲骨を寄せて下げ、背中に軽いアーチを作り、親指をバーに回して握ります。Jeremy Ethier は、仰向けで肘を90度に曲げて脇へ寄せ、親指が下部の胸に揃う幅を握り幅の目安にすると説明しています。Jeff Nippard は、バーを乳頭のやや下へ下ろし、押し上げでは足で床を押し、バーを顔のほうへ戻すよう勧めています。8〜12回を3セットが目安です。

フォームの注意点

バーを胸で弾ませるのは避けます。疲労骨折歴のある24歳の女性スプリンターが、弾ませる技術を取り入れて第5肋骨の疲労骨折と診断された症例報告があります。筋力系競技の経験者10人の肩の負荷をモデルで推定した研究では、握りが肩峰間距離の1.5倍より狭いと肩鎖関節の圧迫が小さく、肩甲骨を寄せると肩の不安定さも下がりました。Jeremy Ethier は、肘を体から45〜70度に収めるよう勧めています。

バリエーション・代替種目

いきなり高重量を扱う前にスミスマシンベンチプレスで軌道に慣れると安全です。自宅なら腕立て伏せで代用でき、足を台に乗せると刺激を胸の上部寄りに移せます。

出典

  1. 論文・英語 Saeterbakken AH ほか(2021) The Effect of Grip Width on Muscle Strength and Electromyographic Activity in Bench Press among Novice- and Resistance-Trained Men
  2. 論文・英語 Noteboom L ほか(2024) Effects of bench press technique variations on musculoskeletal shoulder loads and potential injury risk
  3. 論文・英語 Fukuda Y ほか(2024) Rib stress fracture in a female athlete caused by bouncing the barbell in bench press exercise: A case report
  4. 動画・英語 Jeremy Ethier How to PROPERLY Bench Press for Growth (5 Easy Steps)
  5. 動画・英語 Jeff Nippard How To Get A Huge Bench Press with Perfect Technique

解説動画: 初心者のための正しいベンチプレス/今古賀翔【トレーニング科学】

概要:バーの握り方: サムレスグリップはバーを落とす危険があるため基本的に勧めない。親指を握り込むサムアラウンドで握る。さらに、まっすぐ握ると手首に負担がかかるので少し外に向け、下から見て八の字になる形にすると、手首ではなく前腕部分に重さが乗ってバーが安定する。

手幅は肩峰間の1.5倍以内: 適切な手幅は左右の肩峰の距離の1.5倍以内。動画の例では肩峰間45センチに対し1.5倍が67.5センチ、実際のグリップ幅は67センチで収まっている。広すぎると水平外転が起きて肩を痛める。1.5倍以内なら上腕と体の角度が45度から60度に収まる。

肩甲骨を寄せて下げ、脚で固定する: 肩甲骨はただ寄せるだけでなく寄せた肩甲骨を下げる。これで胸が張れて背中とベンチ台の間に隙間ができ、ブリッジになる。ブリッジは重い重量を上げるためだけでなく肩を保護する目的もある。固定できたら足で地面を蹴り、頭方向に力を入れて姿勢を固める。足は床につけ、力が入りやすい位置を自分で探す。

下ろす位置は前腕が垂直になるところ: ラックアウトしたバーは肩関節の真上、最も楽に保持できる位置で構える。下ろす位置は胸についたときに前腕が垂直になるところ。足方向すぎると肘が開いて肩に負担がかかり、頭方向すぎると肘が畳まれて肩と三頭筋ばかりに効いてしまう。腕の長さやグリップ幅で変わるので自分で探す。

よくある間違い: 戻すときは弧を描きながら、ただ押すだけでなく背中も一緒に押す意識を持つ。バーをバウンドさせたりお尻を浮かせたりすると筋肉の緊張が解けてしまうのでやめる。上げ切ったときに肩も一緒に上がり、肩甲骨の寄せが失われてブリッジが崩れるのもよくある失敗として挙げている。

解説動画(海外・英語): The Fastest Way To Blow Up Your Bench Press (4 Science-Based Steps) + Sample Program/Jeff Nippard

バーは真上ではなく、顔のほうへ戻しながら上げる: スクワットやデッドリフトはバーを垂直に動かすのが定石だが、ベンチプレスだけは真上に押してはいけないという話から入る。下ろすときはみぞおち寄りに少し前へ降りるので、そのまま真上に押すとバーと肩関節のあいだに距離(モーメントアーム)が残り、三角筋前部がフロントレイズをしているのと同じ負担を負う。だから胸から離した瞬間にまずバーを頭側へ押し戻し、それから上げる。こうすると肩の仕事が減って、胸の水平内転で押す形になるので同じ力でも挙がる重量が上がり、大胸筋にも効く。実際に、多くの人は下ろす軌道は正しいのに、挙げるときだけ真上に押していて、バーを戻してから上げているのは上級者だけだったという計測データ(McLaughlin)が紹介されている。自分の軌道は横からの動画で確かめるのが手っ取り早い。

グリップは指1本ぶんずつ広げていく: 世界のトップ選手はルール上限いっぱいの広さで握っていることが多い。広くするとバーの移動距離が短くなるうえ、中盤からロックアウトにかけて大胸筋が縮みきらないので楽になり、さらに肩甲骨を寄せて下げた姿勢を保ちやすく土台が安定する。ただし全員に合うわけではないので、1回のトレーニングごとに指1本ぶんずつ、数週間かけて広げるという進め方を勧めている。いきなり最大幅にすると肩を痛める。

頻度を上げる。ただし1日あたりの量は落とす: ベンチが伸びない人の多くは週1〜2回しか押していない。技術の習得はフリースローと同じで回数がものを言うので、フォームを直したうえで頻度を上げる。本人は週4〜5回のプログラムも組んできたが、多くの人には週3回がちょうどいいとしている。頻度だけ上げて1日の量も同じだとオーバートレーニングになるので、1日あたりのボリュームと強度は下げる。日ごとに狙いを変えるDUP(日ごとの波形)で、1日目は8回前後の筋肥大狙い、2日目は軽い重量で素早く挙げるパワー、3日目は5回前後の高重量。この組み方で1RMが伸びた研究(Zourdos)を根拠に挙げている。

週に1度だけ、重いトップセットを1本入れる: 重い重量を持つこと自体に慣れておくと、挙げられるという感覚がついてくる。週1回、その週いちばん重い日の最初に、1RMの90%前後で2〜3回を1セットだけ行い、そのあと通常のメニューに落とす。毎回1RMに挑戦するのは回復を削るだけなので勧めない。狙いは記録更新ではなく、重さへの慣れを絶やさないこと。