インクラインベンチプレス
胸
器具: バーベル / 難易度: 中級
インクラインベンチプレスは、胸の上部を厚くする角度付きプレス
効く筋肉
大胸筋の上部は、トレーニング経験のある成人30人が0〜60度の5段階で60%1RMを挙げた筋電図の研究で、30度のときに最も高く働きました。三角筋前部は60度で最大で、上腕三頭筋は角度が変わっても同程度でした。未経験の男性47人が週1回・8週間続けた別の研究では、筋力の伸びは水平・インクライン・併用の3群で同程度で、大胸筋の第2肋間の厚みの増加はインクライン群が最大でした。
やり方
ベンチは30度前後に設定し、肩甲骨を寄せて下げたままバーを握ります。ScottHermanFitnessは、手幅を肩幅のすぐ外にすると肘を手首の真下に保ちやすく、胸を締めやすいと説明しています。GENT Fitnessは、スミスマシンの解説でバーを下ろす位置を鎖骨と乳首の間あたりとしています。8〜12回を3セットが目安です。
フォームの注意点
角度を立てすぎると、肩の前が働きやすくなります。男女20人が70%1RMで行った研究では、インクラインのバーベルはデクラインのバーベルやダンベルより三角筋前部の活動が高くなりました。ScottHermanFitnessは、肘を横に張ると力が逃げて肩に余計な負担がかかると説明しています。GENT Fitnessは、肩甲骨を寄せるだけで脇が開くと肩を痛めやすいので、肩を落として胸を張るよう勧めています。
バリエーション・代替種目
ダンベルに替えたインクラインダンベルプレスなら可動域を広く取れます。ベンチが空いていないときは足を台に乗せたデクラインプッシュアップでも胸の上部を狙えます。
出典
- 論文・英語 Rodríguez-Ridao D ほか(2020) Effect of Five Bench Inclinations on the Electromyographic Activity of the Pectoralis Major, Anterior Deltoid, and Triceps Brachii during the Bench Press Exercise
- 論文・英語 Chaves SFN ほか(2020) Effects of Horizontal and Incline Bench Press on Neuromuscular Adaptations in Untrained Young Men
- 論文・英語 Christian JR ほか(2023) Analysis of the Activation of Upper-Extremity Muscles During Various Chest Press Modalities
- 動画・英語 ScottHermanFitness How To: Incline Barbell Bench Press | 3 GOLDEN RULES! (MADE BETTER!)
- 動画 GENT Fitness 肩を痛めないインクラインベンチプレスのやり方!大胸筋上部
解説動画: スミスマシンのインクラインプレスで大胸筋上部を作る/山澤礼明【筋肉チャンネル】
なぜスミスマシンで行うのか: 大会に向けて胸を作る1種目目として、フリーウエイトのベンチプレスではなくスミスマシンのインクラインプレスを選んでいる。本人はベンチプレスを基本的に行わないといい、理由は軌道が固定されていて日によってフォームがぶれないこと、そして怪我をしにくいこと。フリーウエイトだと日によって動く方向が変わってしまうと説明している。
角度と下ろす位置: ベンチの角度は60度前後とかなり急に立てる。胸を張ると上体が起きて実質の角度は浅くなるため、一般的なインクラインやチェストプレスマシンの設定では上部のつもりが中部に効いてしまうという考え方。肩の前側も少し入るくらいの角度にし、鎖骨のあたりを狙ってバーを下ろす。
胸に近い最後の5cmを丁寧に扱う: スミスマシンの弱点は、バーが体に当たった反動である程度上げられてしまうこと。そのため当てにいくのではなく触れるように下ろし、胸に近い最後の5cmをいちばん大事に動かす。負荷が最大にかかる区間を味わうように動かす流儀で、あえて伸張反射を使って素早く動かすやり方とは対照的だと語っている。
重量とレップの決め方: 最初に一番重い重量を扱い、上がらなくなったら落としていくディセンディング式。ただし回数を減らして重さを維持するのではなく、毎セット10回ぎりぎりになる重量へ合わせていく。最後の1レップが上がるか上がらないかまで追い込めれば、その日の胸トレはほぼ完了としている。
解説動画(海外・英語): Bench Press for Upper Chest - (2 BIG MISTAKES!)/ATHLEAN-X™
問題は「三角筋前部に持っていかれる」こと: ATHLEAN-X による解説。インクラインベンチプレスは胸の上部を狙う最良の種目の一つだが、それは三角筋前部が動作を支配しないようにできればという条件付き。三角筋前部と大胸筋上部の繊維は互いにすぐ近くにあり、やり方しだいでどちらかが主役を奪う。日常生活でも他の種目でも前部は十分に使われているので、ここでは胸に寄せたい、という前提から角度と肩の位置の2点に絞って話している。
角度:60度でも45度でもなく、30度: 直立してのショルダープレス(実質90度)は、重力に真っ向から逆らうので三角筋前部が最大限に働く。そこからベンチを倒していくほど、狙いは下へ移る。よく使われる60度ではまだ前部寄りで、胸上部の中央に焦点が来ない。45度でもまだ足りない。研究では、胸の上部を狙うのに最適なのは30度。反対の端として0度(フラット)は胸の中部。
肩甲骨を「後ろへ、そして下へ」: 30度が効くのは肩の位置とも結び付いている。三角筋前部が優位になっている人は肩が前に丸まっていて、その位置だと前部が胸より先に、素早く力を出せる状態になっている。これを黙らせるには押すたびに肩甲骨を後ろへ、そして下へ寄せる。こうすると三角筋前部が本来の位置に戻り、胸の上部が押す力を出しやすい位置に入る。角度を寝かせるほどこれが自然に起きやすくなるが、ベンチの角度任せにせず、意識して肩甲骨を締め続ける必要がある。疲れてくるほど前部の助けを借りようとして、そこで形が崩れる。