分量・火加減・時間の言葉が、何を指しているか。
レシピの「小さじ1」「強火で3分」という言葉は、どれも目安です。同じ言葉でも、使う道具や材料の量、火元の種類で指す中身が変わります。読むときは、分量・火加減・時間を分けて考えると、信じてよい数字と、自分の環境に置き換える数字の違いが見えてきます。
分量の単位は、デジタルスケール・計量スプーンで量ることが多く、小さじ1は5mL、大さじ1は15mLという体積の約束を指します。ただし、大さじ・小さじ12種の寸法と、水・小麦粉・塩・油を量った重さを比べた調理科学の発表では、スプーンごとの測定値に差があり、底の浅い形は重量表の値より2割近く少なくなりました(大阪国際大学)。市販の計量スプーンを比べた別の調査でも、メーカーごとの形の違いで計量差が生じ、1〜2g程度の差で味が変わる料理にはデジタル秤を使うよう勧めています(名古屋文理短期大学)。小さじ・大さじの数字は、手元のスプーンでそのまま量れば同じ重さになるとは限らない目安だと知っておくと、味がぶれたときの手がかりになります。
材料の大きさも、時間の言葉が指す中身を変えます。同じ「10分煮る」でも、乱切りのように大きく切った根菜と、千切りのように細く切った野菜では、中心まで熱が入る時間が違います。そぎ切りや繊維に沿うか断つかで厚みや繊維の向きを変えたときも同じで、レシピの時間は、レシピに書かれた切り方を前提にした数字だと考えると、手元の切り方に合わせて延ばすか詰めるか判断しやすくなります。
火加減の「強火」「中火」「弱火」も、コンロの種類やフライパンの大きさで実際の温度が変わる、相対的な言葉です。強火で予熱したフライパンと卵焼き器の温度を比べた実験では、同じ強火の設定でも、ガスのほうがIHより鍋底と側面の温度が高く均一になり、炒飯やほうれん草炒め、厚焼き卵の仕上がりにも差が出ました(中部大学などのチーム)。強火で短時間仕上げることと弱火でじっくり火を入れることは、この強火と弱火をどちらの仕上げに使うかを分けた技で、焼き色とメイラード反応にあるとおり、色の変化で火の入り具合を確かめれば、コンロの違いを時間だけで埋め合わせずに済みます。
煮る・蒸す・揚げるの時間も、時計の数字より先に、状態を見る合図として書かれていることがあります。下ゆでや沸かさずに火を入れるの「◯分」は、鍋の大きさや火加減で前後する目安で、落とし蓋の有無でも変わります。油温の見分け方は時間ではなく泡の出方や衣の浮き方で判断する技で、二度揚げの2回目は、1回目で切った油を休ませたあとの余熱まで含めた仕上げです。下ごしらえの湯通し・霜降りや塩を振って水を出すの時間も、表面の色や出てくる水分の量を見て切り上げる目安です。
レシピを読むときは、分量は手元のはかる道具で、火加減は自分のコンロとフライパンで、時間は仕上がりの様子で、それぞれ置き換えて確かめると、書いてある数字と実際の仕上がりのずれを減らせます。
出典
- 論文 伊藤知子, 上野龍司(2012) 形状の異なる計量スプーンの精度の比較
- 論文 猪飼弘子, 内田初代, 鈴木梨江, 宮澤節子, 芳木信子(2005) 形状の異なる計量スプーンを用いた場合の調味料の重量比較
- 論文 小川宣子, 小林由実, 山中なつみ(2021) ガス加熱とIHの違いが炒め加熱調理と焼き加熱調理に及ぼす影響 ―炒飯, ほうれん草炒め, 厚焼き卵の仕上がりの比較―














