声とからだ図鑑
声帯(声が出るしくみ)
のどの奥で息を音に変える二枚のひだ。のどぼとけの裏側に、左右一枚ずつのひだが向かい合っています。息が通ると1秒に100〜1000回ほど開いたり閉じたりして空気を震わせ、その振動が声のもとになります。長さは大人で1.3〜2.4cmほど、粘膜におおわれた柔らかい組織なので、こすれれば腫れます。…
声の高さが決まるもの(声が出るしくみ)
声帯の長さと張り具合で決まる音の高低。高さは声帯が1秒に何回震えるかで決まります。弦楽器と同じで、薄く引き伸ばして張るほど回数が上がって高くなり、ゆるめれば低くなります。引き伸ばすのは喉の内側の小さな筋肉で、力で鍛えるというより動かし方を覚える種類のもの。息を強く吐けば少しは上がりますが…
共鳴腔(声が出るしくみ)
声を大きく色づける喉と口と鼻の空間。声帯が作る音そのものは、素っ気ないブザーのような音でしかありません。それが喉の奥、口の中、鼻の奥という空洞を通るあいだに一部の響きだけが増幅され、声の大きさと音色が決まります。同じ声帯でも口の開きと舌の位置が変われば別人のように聞こえますし、鼻腔共鳴もこの空間の使い分けの一つです。
音域(声が出るしくみ)
無理なく出せる一番低い音から高い音まで。出せる一番低い音から一番高い音までの幅のことです。叫べば届く音まで数えた全体と、歌詞を乗せて何度でも出せる幅は別もので、後者はふつう半音3〜5個分狭くなります。大人はおおむね2オクターブ前後、裏声を足せばもう少し広がります。低い側は伸びにくく、練習で動くのは多くが上側です。
声質と体つき(声が出るしくみ)
体の作りで決まる声の個性と変えられる幅。声の個性は、声帯の長さと厚み、喉の空間の広さ、骨格の組み合わせでおおよそ決まります。体格が大きい人ほど低い側が出やすい傾向はありますが、例外だらけで身長からは測れません。土台は変えられない代わりに、響かせ方と息の使い方は変えられて、人に届く聞こえ方はここでかなり動きます。
加齢による声の変化(声が出るしくみ)
年齢とともに動く声の高さと張りの強さ。年を重ねると声帯の粘膜が硬くなり、支える筋肉も細くなります。閉じ方が甘くなるぶん息が漏れて、声量が落ちてかすれやすくなります。傾向としては男性は高く、女性は低く寄っていき、40代から少しずつ、はっきりしてくるのは60代以降が多いようです。個人差はとても大きい部分です。
ウォームアップ(歌う前)
歌い出す前に声と体をならす下準備。寝起きの声帯はむくんでいて、いきなり高い音を出すと閉じ方が雑になるまま鳴ります。ウォームアップは粘膜と筋肉を歌える状態に戻す作業です。体温が上がるほど動きはなめらかになるので、低い音から順に鳴らして息と声の当たり方をそろえると、同じ曲でも出しやすさが変わります。しくみは声帯へ。
姿勢とストレッチ(歌う前)
息が深く入る体の形をつくる数分。声は息で鳴るので、肋骨と横隔膜が動ける形かどうかで音量も安定も決まります。ソファに深く沈むと骨盤が後ろに倒れて肺の下のほうがふくらみません。かといって胸を張りすぎれば肩に力が入ります。歌う前に体をほどいておくと、同じ息の量で長いフレーズが持ちやすくなります。
飲み物の選び方(歌う前)
歌う日に選びたい飲み物と避けたい飲み物。飲んだものが声帯に直接かかるわけではありません。液体は食道へ流れていくので、効いているのは体じゅうの水分量と唾液のほうです。だから一気に飲んでも即効性はなく、歌う30分ほど前から少しずつ入れておくほうが粘膜はしっとりします。温度は常温がいちばん無難です。
食事のタイミング(歌う前)
いつ何をどれだけ食べておくかの目安。満腹だと胃が横隔膜を押し上げ、息を深く入れる余地がなくなります。逆に空腹すぎても集中が切れ、声を支える力が抜けます。食べてすぐ歌うと胃酸が上がって喉がイガイガする人もいて、これは前かがみで画面をのぞく姿勢とも重なります。どちらに転んでも歌いにくくなります。
乾燥への備え(歌う前)
喉の粘膜を乾かさないための手当て。声帯は粘膜の潤いがあってこそ滑らかに閉じます。乾くとこすれる感じが増えて声がかすれ、同じ音でも息が余計に要ります。カラオケの部屋は空調が効いているぶん、冬場は湿度30%台まで落ちることも珍しくありません。口を開けて歌うほど乾き方は早まります。
喉が痛むサイン(歌っている間)
これ以上歌うと危ないという体の合図。炎症が起きていても、痛みは遅れて出てくることが多い合図です。先に出るのは、高い音だけ急に出ない、声が二重に割れる、息が漏れて音にならない、といった変化のほうです。声帯がむくんで厚くなると同じ高さに届かなくなるため、キーが下がったように感じられます。
力みに気づく(歌っている間)
入れたつもりのない力を自分で見つける。高い音や大きな声を出そうとすると首と顎と肩に力が入り、喉仏そのものが持ち上がります。本人には頑張っている手ごたえとして感じられるので気づきにくいのですが、声は硬くなり、音程は上ずるか届かなくなる方向へずれます。長く歌うほど差が開くのもやっかいなところです。
マイクとの距離のとり方(歌っている間)
声の大きさに合わせてマイクを動かす。マイクは近づくほど低音が持ち上がり、離すほど細く軽い音になります。距離を変えずに歌うと音量差がそのまま出るので、山も谷もそのまま部屋に響きます。逆に距離で調整できるようになると、小さい声でも埋もれず、張ったところだけ割れることも起きにくくなります。
休憩の取り方(歌っている間)
歌い続けないための間のつくり方。声帯は歌っている間、1秒に100回以上という速さで触れ合っています。続けて歌うほど粘膜はむくみ、同じ音に要る息の圧が上がっていきます。この疲れは自覚より先に進むので、調子がいいうちに止めるのが結局はいちばん長く歌えます。喉には筋肉痛のようなわかりやすい合図がありません。
クールダウン(歌ったあと・日ごろ)
歌い終わりに声を戻すための短い手当て。歌ったあとの喉は、走ったあとの脚に近い状態です。声帯まわりの筋肉が縮んだまま固まり、話し声がかすれたり、翌日だけ高い音が出なくなったりします。使ったぶんを楽な高さへ戻す時間を置くと、次に歌うときの戻りが早くなり、翌朝の枯れも軽くなります。二次会まで声を張り続けた日と…
声枯れからの戻し方(歌ったあと・日ごろ)
かすれた声を無理なく戻すまでの数日。声枯れは、声帯がむくんで厚くなり、閉じ方が甘くなった状態です。だから高い音から先に出なくなり、息が漏れてかすれます。ここで出そうと力むとむくみの上にさらに負担が重なり、戻るまでが長くなります。軽ければ半日から2日で戻りますが、限界まで歌い切った日の枯れは1週間残ることもあり…
声帯のトラブル(歌ったあと・日ごろ)
声のかすれが長引くときに起きていること。声を出しているあいだ、声帯は1秒に100〜1000回ほどぶつかり合っています。無理な出し方や使い過ぎが重なると、当たる場所が硬くなることや腫れが引かないことがあり、声が戻りにくくなります。痛みが出ないまま進むものもあるので、痛くないから平気とは言えません。…
飲酒と喫煙の影響(歌ったあと・日ごろ)
お酒とたばこが声にしていること。お酒は血管を広げて声帯をむくませ、同時に痛みの感覚を鈍らせます。気づかないまま歌い続けられるのが、いちばんの危なさです。たばこの煙は熱と刺激を粘膜に当て続け、年単位で声を低く硬くしていくことがあります。どちらもその場では調子よく感じることがあり…
ふだんの話し声(歌ったあと・日ごろ)
歌より長い時間、声を使っている場面。歌う時間が月に数時間でも、話す時間は1日に数時間あります。声を痛めるのは歌より日常の使い方だったという例は多く、騒がしい店での会話、長電話、遠くへの呼びかけが積み上がります。とくに張り上げた地声は歌のどのフレーズより負担が大きく、週末だけ休んでも追いつかない状態になりがちです。
睡眠と声(歌ったあと・日ごろ)
眠りが足りない日の声に起きること。眠りが足りない日は、まず高い音の伸びと支えから落ちます。体の水分の巡りが偏って粘膜が乾き、腹まわりの筋肉も反応が鈍くなるためです。声そのものが変わるというより、同じ声を出すのに余計な力がいる状態になり、力みや音程のぶれとして表に出ます。声が低く感じる朝は、たいてい前の晩が短い日です。