声質と体つき

声が出るしくみ

いつのこと: 日ごろ

声質と体つきは、体の作りで決まる声の個性と、練習で変えられる幅。

どういうこと?

声の個性は、声帯の長さと厚み、喉の空間の広さ、骨格の組み合わせでおおよそ決まります。2〜25歳129人をMRIで測った研究(Fitch ら, 1999)では、声帯から唇までの空間(声道)の長さが身長・体重と正の相関で、声楽学生のX線画像132枚(Roers ら, 2009)でも声種ごとに声道の長さが違いました。土台は変えられない代わりに、響かせ方と息の使い方は練習で動かせます。

どうするか

スマホで30秒、同じ歌い出しを地声寄り、息多め、鼻に当て気味の三通りで録り分けて聞き比べます。米国の国立衛生研究所(NIH)の解説動画は、声帯が作った基本の音を舌・あご・唇などの動きで言葉の音に変えると説明していて、口の開きを変えた1本を足す手もあります。自分がいちばん聞きやすかったものを起点に、声質に合う曲の探し方をたどると、無理に高い曲を追わなくても得意な一曲が見つかります。

注意

憧れの人に寄せようとのどを締めて似せると、自分の良さが消えるうえに傷めます。まねるなら声色より間の取り方や強弱です。大学の声楽専攻14人を4学期追った研究(Mendes ら, 2003)では、訓練で音域の幅と高い側の声量が有意に増えた一方、ビブラートなどの変化は検出されませんでした。生まれつきではないガラガラ声が数週間続くときは体質ではない場合があるので、耳鼻咽喉科で見てもらってください。

出典

  1. 論文・英語 Fitch WT・Giedd J/The Journal of the Acoustical Society of America(1999) Morphology and development of the human vocal tract: a study using magnetic resonance imaging
  2. 論文・英語 Roers F・Mürbe D・Sundberg J/The Journal of the Acoustical Society of America(2009) Voice classification and vocal tract of singers: a study of x-ray images and morphology
  3. 論文・英語 Mendes AP・Rothman HB・Sapienza C・Brown WS/Journal of Voice(2003) Effects of vocal training on the acoustic parameters of the singing voice
  4. 動画・英語 National Institutes of Health (NIH) How Does the Human Body Produce Voice and Speech?

解説動画: "いい歌声"の正体は「倍音」です。【歌うのが楽しくなるボイトレ講座】/しらスタ【歌唱力向上委員会】

声は基音と倍音でできている: ピアノでドを1つ押すと、その音だけでなく振動数が2倍・3倍・4倍・5倍と重なった音が同時に鳴っている。動画はこれをカレーに例え、土台の音を基音=ルー、上に重なる成分を倍音=具材やスパイスと呼ぶ。声もピアノも音である以上、仕組みは同じだと説明する。

いい声はある程度定義できる: 歌のうまさで最も重視される要素を尋ねると、多くの人が声質と答える。話し手は、みんな違ってみんないいと言いたいところだと前置きしつつ、いい歌声はある程度はっきり定義できると言い切る。その正体が倍音で、成分が豊かなほどマイク乗りがよく、居酒屋で店員を呼ぶときの声の通りも変わる。

崩れ方でこもる/キンキンする: 倍音のどこかの波が削れていると、じゃがいもの抜けたカレーのようにこもった声になり、下手だ・うまく扱えていないと受け取られることがあるという。逆に倍音自体はとても豊かなのに、その中の一部の波だけが尖るとキンキンした癖の強い声になる。抜けと突出で、崩れ方が逆になるという説明。

地声・裏声・ノイズの声: 地声は倍音が豊かで、具材が多いぶん誰の声か聞き分けられる。裏声は基音の比率が高く具材がほぼ無いので、誰が出しても似た音になり個性が出にくい。カレーに入るはずのないブルーベリーのような音、つまり整数倍から外れた成分は脳がノイズとして処理する。ウィスパーボイスやしゃがれた声がこれで、味と取るか聞き取りづらいと取るかは好みが分かれると言う。

音域を広げるより先に: うまくなりたいと思うとどれだけ高い音が出るかに意識が向きがちだが、音域を広げるなとは言わないと断ったうえで、先に得意な音域で倍音の豊かな声を鍛えるほうが歌唱力や表現力は上がると話す。倍音が豊かだと自分の声が自分に聞こえやすく、音程が安定してフラットしたりハモリに釣られたりしにくい。初心者こそ目指していいと述べている。