共鳴腔
声が出るしくみ
いつのこと: 日ごろ
共鳴腔は、声を大きく色づける喉と口と鼻の空間。
どういうこと?
声帯が作る音そのものは、素っ気ないブザーのような音でしかありません。それが喉の奥、口の中、鼻の奥という空洞を通るあいだに一部の響きだけが増幅され、声の大きさと音色が決まります。耳鼻咽喉科医の斉田晴仁は、歌声づくりを呼気・喉頭・声道の3段階で説明し、声道の形が音色を決める役目を持つとまとめています。訓練を受けた歌手40人と未訓練の人40人を比べた研究では、歌手のほうがある帯域に強い響きを集めていました。
どうするか
「あー」と5秒伸ばしながら、途中であくびの入り口の形を作ってみてください。奥が広がった瞬間に声が太く前へ出やすくなります。次に鼻をつまんで「まー」、離してもう一度「まー」。この2回の差が鼻の響きの量です。歌う前に1分試すだけで、自分がどの空間を使えていないか見当がつきます。海外のボイストレーナー Singgeek は、あごを軽く下げ頬を上げる口の形を作ると、鼻でなく上あご側で響きを感じやすいと勧めています。
注意
奥を広げるつもりで舌の根を押し下げると、太いのではなくこもった声になります。録音して言葉が聞き取れないなら、たいていこれです。エコーを上げると響いた気になりますが、それは機械が足した残響で、自分の共鳴が増えたわけではありません。一度エコーを下げて確かめてください。鼻腔共鳴の動画解説(MVCstudio)は、口を閉じたままハミングすると音が口の中にこもって鼻に響かないと注意しています。口を開けたままハミングし、鼻の響きを確かめるのが近道です。
出典
- 論文 斉田晴仁/音声言語医学(2023) 歌声の調節機構―発声状態を客観的に評価するための3ステップ―
- 論文・英語 Oliveira Barrichelo VM・Heuer RJ・Dean CM・Sataloff RT/Journal of Voice(2001) Comparison of singer's formant, speaker's ring, and LTA spectrum among classical singers and untrained normal speakers
- 動画・英語 Ronja Peterson/Singgeek Vocal Resonance: Definition and How to Exercises
- 動画 神出あや/MVCstudio 【鼻腔共鳴】この発声法さえ身につければプロにグッと近づく!?いい声になる魔法の発声法 【MVC channel #2】
解説動画: 【ボイトレ】最も重要!口腔共鳴のやり方完全版【歌うま】【ボイストレーニング】【カラオケ】/東本ボイストレーニング
響かせる空間は3つ: 声帯で生まれた音を響かせる空間として、動画は鼻の奥の空間・口の中の空間・声帯までの筒状の奥の空間の3つを挙げる。中でも口の中の響きは、使えている人とそうでない人で差が大きいという。日本語はどの音でも口の中が狭いまま発音できてしまうので、歌に要る広さは日常会話で作ったことがない、と前置きする。
声は必ず上顎に当たる: 説明の軸は、声帯で作られた音は必ず上顎のどこかに一度ぶつかる、という点。舌先でなぞると、前歯の裏から続く骨っぽい硬口蓋、その奥の肉が乗った軟口蓋、そして境目の一点をボイスポジションと呼び分ける。広さの比はおおよそ硬口蓋が7割、軟口蓋が3割で、手前から順に探すと距離が長すぎる、と言う。
当たる場所を口の形で動かす: 極端な「イ」の口で息だけの「ヒ」を出すと前歯の裏側に、極端な「オ」の口で「ホ」を出すとかなり奥に当たる。ヒ→ヘ→ホと変えると当たる位置が後ろへ移るのが分かる。音色も、硬口蓋は硬く前へ飛ぶ音、軟口蓋は柔らかくこもった音、ボイスポジションは両方が混ざり、部屋の残響が明らかに増えると実演で比べる。
あくびで奥を上げ、舌だけ戻す: 練習はまず一番奥の軟口蓋に当てるところから。大あくびで上顎の奥を引き上げ、上顎はキープしたまま舌だけ元の位置へ戻す。ここで舌に力が入ると軟口蓋が上がらず、当たる位置も変わって練習にならないので、舌の脱力だけは徹底する。その形で「イ」の口のまま「ヒ」と出し、奥まってこもった声になれば成功。
下げながら一番響く点を探す: 上げきった軟口蓋を少しずつ下げながら、硬さと柔らかさが両立して最も響く点を探す。下げすぎると硬口蓋に戻ってしまい意味がなくなる。うまくいかない人には、普通の口のまま「ハッ」と息を吸った瞬間の上顎の形を保って声を出す方法も示す。顎などの力みは当面気にしなくてよく、慣れれば不要な力は抜けるという。