十則圍之、五則攻之、倍則分之
名句
篇: 謀攻篇(上巻 第三)
十則圍之、五則攻之、倍則分之は、敵と比べた兵力に応じて、囲む・攻める・分ける・戦う・退く・避けると段階で並べた一句。
原文と書き下し
「故用兵之法、十則圍之、五則攻之、倍則分之、敵則能戰之、少則能逃之、不若則能避之」(故に兵を用うるの法は、十なれば則ち之を囲み、五なれば則ち之を攻め、倍すれば則ち之を分かち、敵すれば則ち能く之と戦い、少なければ則ち能く之を逃れ、若かざれば則ち能く之を避く)。
原文の意味
原文は、敵に比べた兵力に応じてとる動きを、十倍なら包囲し、五倍なら攻め、倍(曹操は二倍と注する)なら兵を分け、同じなら戦い、少なければ退き、及ばなければ避ける、という段階で並べる。数の大小で動きを変えるという書き方で、「分ける」ときの分け方は原文に書かれていない。
篇の中での流れ
謀攻篇で、全国を保って勝つことを最上とし、伐謀・伐交・伐兵・攻城の序列を示したあと、それでも戦うときの兵力比による動き方として置かれる。続いて、将と君主の関係の話へ進む。
注釈で読みが割れるところ
「倍則分之」「敵則能戦之」の読みが注で割れる。曹操は、将の智勇や兵の鋭さが釣り合っていることを前提に、兵力比で動きを選ぶ表として読む。杜牧と李筌は、分けた兵の一方を正、一方を奇として使うと説く。同数のときの「能く之と戦う」は、曹操が伏兵など奇の備えを設けて戦うことと注し、王晳は奇や伏で勝つのは将の智が優れているところだと言い、張預は正と奇を変化させて敵に測らせないことを言う。
よくある言い換えとのずれ
「十倍で囲め、五倍で攻めよ」と数字の段階だけが取り出され、兵力さえ揃えれば勝てるという式のように語られることがあるが、曹操も王晳も、将の智勇や兵の鋭さが同等であることを前提にした数として読んでいる。