亂生於治、怯生於勇、弱生於彊
名句
篇: 勢篇(中巻 第五)
亂生於治、怯生於勇、弱生於彊は、乱れは整いから、怯えは勇ましさから、弱さは強さから生じると言い、その三組を数・勢・形に分ける一句。
原文と書き下し
「亂生於治、怯生於勇、弱生於彊。治亂、數也;勇怯、勢也;彊弱、形也」(乱は治に生じ、怯は勇に生じ、弱は強に生ず。治乱は数なり。勇怯は勢なり。強弱は形なり)。
原文の意味
原文は、乱れが整った状態から、怯えが勇ましさから、弱さが強さから生じると並べ、そのうえで、整うか乱れるかは「数」、勇ましいか怯えるかは「勢」、強いか弱いかは「形」によると三組に分ける。「生ず」がどういう仕組みなのかは、句の中では説明されていない。
篇の中での流れ
勢篇の中盤、軍が乱れないことを述べた句のあとに置かれ、続いて、敵を動かすには形を見せるという話へ進む。
注釈で読みが割れるところ
注の多くは、この句を、整っている者が乱れを、勇ましい者が怯えを、強い者が弱さを装うこと、つまり実情を隠して敵に見せかける話として読む。曹操は「形を毀ち情を匿す」と短くまとめ、杜牧は乱れの形を偽って敵を誘うことと言い、梅堯臣は整った状態から偽って乱れを作れると説く。数・勢・形の三語の区別は、杜牧と梅堯臣が分けて説く。
よくある言い換えとのずれ
「強さの中に弱さの芽がある」という盛衰の戒めとして引かれることがあるが、開いた範囲の十一家注は、実情を隠して見せかけるという偽装の話に重心があり、状態がひとりでに入れ替わる道理として読むのは、注の主流ではない。