歸師勿遏、圍師必闕、窮寇勿迫

名句

篇: 軍争篇(中巻 第七)

歸師勿遏、圍師必闕、窮寇勿迫は、帰る軍は止めるな、囲む軍は逃げ道を空けよ、追い詰めた敵には迫るなと並ぶ、軍争篇の戒めの句。

原文と書き下し

「歸師勿遏、圍師必闕、窮寇勿迫、此用兵之法也」(帰師は遏むること勿かれ、囲師は必ず闕き、窮寇は迫ること勿かれ。此れ兵を用うるの法なり)。

原文の意味

原文は、帰ろうとしている軍を押しとどめないこと、囲んだ敵には必ず一方を空けておくこと、追い詰められた敵に迫らないことを、用兵の法として挙げる。「高陵には向かうこと勿かれ」など、同じ「勿かれ」の形の句が先に並び、この三句はその末尾にあたる。

篇の中での流れ

軍争篇の終わり近く、敵の気を避けてそれが衰えたところを撃つ話や、変化を治める話のあとに、用兵の法として並べられる。

注釈で読みが割れるところ

「圍師必闕」は、逃げ道を示すことと読む注が多い(曹操・李筌・梅堯臣)。杜佑は、平地では空け、険しい地では固く守るなど、地形で使い分けると説く。「窮寇勿迫」は、杜牧と何氏が、追い詰められた敵は死に物狂いで戦うので避けるべきだと説く。

よくある言い換えとのずれ

「窮鼠猫を噛む」「追い詰めすぎるな」という格言として引かれることがあるが、『孫子』には、自軍を死地に置いて力を出させるという句(九地篇)もあり、追い詰められた側が強くなるという見方は、敵に向けた戒めと、自軍に向けた策の両方に出てくる。