兵貴勝、不貴久

名句

篇: 作戦篇(上巻 第二)

兵貴勝、不貴久は、戦は勝つことを重んじ、長引かせることは重んじないと、作戦篇の議論を結ぶ一句。

原文と書き下し

「故兵貴勝、不貴久」(故に兵は勝つを貴び、久しきを貴ばず)。続く「故知兵之將、生民之司命、國家安危之主也」(故に兵を知る将は、生民の司命、国家安危の主なり)。

原文の意味

原文は、戦では勝つことを重んじ、長引かせることは重んじないと述べ、続けて、兵を理解している将は、人々の命運を司り、国の安危を主る者だと結ぶ。句の中に「速さ」という語は出てこず、勝つことと長引かせないことが対になっている。

篇の中での流れ

作戦篇の最後に置かれ、戦費の規模、長期戦の害、敵地での食糧調達といった議論を受けて、篇全体をまとめる。

注釈で読みが割れるところ

注は、速さを重んじる読みと、長引かせる害を数える読みで重心が違う。李筌と孟氏は、速く勝って速く帰ることを貴ぶという趣旨で短く注し、曹操は、長引けば不利で、兵は火のようなものだから収めなければ自ら焼けると言う。杜牧は、速ければ財用を省き民力を休められると言い、張預は、長引けば軍が疲れ財が尽きて変事が起きやすいと、具体的な害を挙げる。

よくある言い換えとのずれ

「兵は神速を貴ぶ」と同じ意味で引かれることがあるが、この句は「勝つを貴び久しきを貴ばず」で、「神速」の語は含まない。「兵は神速を貴ぶ」が『孫子』の句ではないことは、原典とのずれ図鑑の項目で確かめられる。速さを主とする『孫子』の句は、九地篇の「兵の情は速きを主とす」で、別に立てている。