画材と機材図鑑

油彩(絵の具・描画材)

ゆっくり乾く、重ねて深める絵の具。顔料を乾性油で練った絵の具。乾くのは水が飛ぶからではなく、油が空気と結びついて固まる反応なので、表面が乾くまで数日かかる。そのぶん画面の上で色を混ぜ続けられ、塗り重ねて深い階調をつくれるのが他の絵の具との最大の違いになる。15世紀のネーデルラントで技法が磨かれ…

水彩(絵の具・描画材)

紙の白を残して光をつくる絵の具。顔料をアラビアゴムで練った絵の具。水で薄めるほど下の色や紙が透ける。透明水彩ではいちばん明るい場所を塗らずに残すのが基本で、白い絵の具で明るくするのではなく、塗らないことで光をつくる。顔料の比率を上げ、白い体質顔料を加えた不透明タイプ(ガッシュ)は下を覆い隠せるので…

アクリル絵の具(絵の具・描画材)

水で描けて、乾けば水に強い絵の具。顔料をアクリル樹脂のエマルションで練った絵の具。水性のものが市販されたのは1950年代半ばで、画材としてはかなり新しい。水で薄めて描けるのに乾くと耐水性の膜になるのが最大の性質で、薄く延ばせば水彩のように透け、盛れば油彩のように厚みも出る。紙・板・カンヴァス・布と下地を選ばない。

テンペラ(絵の具・描画材)

卵で練る、速く乾く古い絵の具。顔料を卵黄で練った絵の具。油彩が広まる前、ヨーロッパの板絵はほとんどこれで描かれていた。乾きが速く、置いた色をあとから混ぜられないので、細い線を並べて調子をつくることになる。プリマヴェーラやヴィーナスの誕生の輪郭のはっきりした明るい肌は、この性質と結びつけて見ると分かりやすい。

パステル(絵の具・描画材)

顔料をそのまま紙に置く棒。顔料を最小限の固着剤で棒に固めた画材。水にも油にも溶かさないので、削れた粉がそのまま紙に残るぶん発色が直接的になる。柔らかいソフト、角で細い線が引けるハード、蝋と油で練ったオイルパステルがあり、前の二つは描くほど粉が落ちる。エトワールの舞台の光もこの画材で置かれている。

墨(絵の具・描画材)

一色だけで濃淡をつくる黒。煤(すす)を膠(にかわ)で練り固めた黒。原料で色が変わり、松を焼いた松煙は青みを帯びた黒になりやすく、菜種油などを焼いた油煙はつやと深みのある黒になる。硯で水と磨り合わせて濃さを自分で決めるので、一色のまま濃淡がいくらでもつくれる。水墨画はこの一点の上に立っている。

カンヴァス(紙・支持体)

布を木枠に張った絵の支持体。麻や綿の布を木枠に張り、地塗りをした支持体。板に比べて軽く、大きくでき、丸めて運べるため、15〜16世紀のイタリアから急速に広まった。ヴィーナスの誕生は布に描かれた初期の例で、ウルビーノのヴィーナスのころには油彩とカンヴァスの組み合わせが標準になっている。

水彩紙(紙・支持体)

水を受け止め、白を残す紙。水をたっぷり乗せても波打たず、置いた絵の具をその場に留めるように作られた紙。表面のにじみ止め(サイジング)の強さと、繊維がコットンか木材パルプかで別物になる。水彩は塗り残しが白として働く画材なので、紙の白さと肌理がそのままハイライトになる。

和紙(紙・支持体)

長い繊維でにじみを受ける紙。楮・三椏・雁皮といった靭皮(じんぴ)繊維から漉いた紙。繊維が長く絡むので薄くても丈夫で、木材パルプを原料とする洋紙より繊維が格段に長い。原料で性格が変わり、楮はよくにじみ、雁皮は線がにじまずに止まる。墨と組み合わせて初めて本領が出る紙。

絵筆(筆・道具)

毛と形で画面の表情が変わる道具。毛の硬さ・形・大きさの三つで選ぶ道具。硬い豚毛は絵の具を押し出すので筆あとがそのまま残り、油彩やアクリル絵の具に向く。柔らかいイタチ・テン系や合成毛は水を多く含んでなめらかに流れるため水彩向き。絵の具が同じでも、筆を替えると画面の表情がいちばん大きく動く。

パレット(筆・道具)

絵の具を出して色をつくる台。絵の具を出しておき、その上で色をつくるための板。チューブから出したままの色を使うこともあるが、たいていは描く前にここで一度混ぜる。素材は木・紙・プラスチック・陶器があり、油彩は不透明な木や紙、水彩は白い陶器やプラスチックと、絵の具の性質で向き不向きが分かれる。…

パレットナイフ(筆・道具)

絵の具を練り、盛り、削ぐ金属のヘラ。パレットの上で絵の具を練るための金属のヘラ。刃は先が丸められていて切れず、押すとしなる。混ぜるためのパレットナイフと、画面に絵の具を置くための柄が折れ曲がったペインティングナイフは別物で、描画に使うのは後者。油彩は粘りが強く筆だけでは色が均一に混ざらないので、先に練ってから筆を持つ。

イーゼル(筆・道具)

絵を立てて、離れて見るための台。カンヴァスや板を立てて支える台。机に寝かせて描くと画面をいつも斜めから見ることになり、形も明度の判断も狂う。立てて正面から見れば、描いている面と、完成後に人が見る面が一致する。一歩下がって全体を見られることのほうが効果としては大きく、細部に寄りすぎた目を戻すための道具でもある。

ミラーレスカメラ(カメラ・レンズ)

レンズを替えて撮る、いまの標準機。レンズを交換できるカメラのうち、内部に鏡とプリズムを持たないもの。一眼レフはレンズからの光を鏡で覗き穴へ導くが、ミラーレスはセンサーが受けた像をそのまま電子ファインダーや背面画面に出す。明るさや色が撮る前の画面に反映されるのが大きな違いで…

スマホカメラ(カメラ・レンズ)

いちばん持ち歩いていて、いちばん撮るカメラ。毎日持ち歩いているぶん、実際にいちばん多く使うカメラ。センサーは小指の爪ほどで、大きい機種の標準カメラで1/1.3型ほど、超広角や望遠はさらに小さい。それでも見られる写真になるのは、複数枚を一瞬で撮って合成する処理が入っているから。…

単焦点レンズ(カメラ・レンズ)

ズームできない代わりに明るく写るレンズ。焦点距離が一つに固定されたレンズ。ズームできないぶん構造が単純で、同じ値段ならズームより明るく、写りも素直になる。開放F1.8前後まで開くので暗い室内でも手ブレしにくく、背景も大きくぼける。被写界深度の浅さを自分で選べるようになるのが、最初に体感できる変化。

広角レンズ(カメラ・レンズ)

広く写し、奥行きを強く見せるレンズ。35mm換算でおよそ35mmより短いレンズ。24mmで対角約84度と、目で見るより広い範囲が一枚に入る。ただし本当の効き目は「広く写る」ことより、近くのものが大きく遠くのものが小さく写ることのほう。前に置いたものと背景の差が開き、遠近法の効いた奥行きが強く出る。

望遠レンズ(カメラ・レンズ)

遠くを引き寄せ、背景を整理するレンズ。35mm換算でおよそ85mmより長いレンズ。200mmで対角約12度と、切り取る画角がかなり狭い。遠くのものを大きく写せるほか、背景のごく一部だけを大きく引き伸ばして写すので、余計なものが画面から消える。背景を選んで整理できることのほうが、遠くが撮れることより効く場面は多い。

絞り(撮影の設定)

レンズの穴の大きさ。ぼけを決める。レンズの中で光の通る穴を開け閉めする仕組み。F値で表し、数字が小さいほど穴は大きい。開ければ明るく撮れて背景がぼけ、絞れば暗くなる代わりに手前から奥までピントが合う。明るさとぼけの両方を同時に動かす設定なので、露出と被写界深度がちょうど交わる場所にある。

シャッタースピード(撮影の設定)

光を受ける時間。動きの写り方を決める。センサーが光を受ける時間の長さ。カメラの目盛りは30秒から1/4000秒あたりが多く、機種によっては1/8000秒まで伸びる。短くすれば動きが止まり、長くすれば動いたものが流れて写る。明るさも同時に変わるため、露出をつくる三つの数字の一つでもある。時間そのものを写し込む設定で…

ISO感度(撮影の設定)

暗い場所で明るく撮るための増幅。センサーが受け取った光の信号を、どれだけ増幅するかの設定。露出を決める三つのうち、絞りとシャッタースピードが入ってくる光の量そのものを変えるのに対し、ISOは入った光の扱い方を変える。数字を倍にすれば明るさも倍になるが、その分画面のざらつきも出やすくなる。

ホワイトバランス(撮影の設定)

光の色みを打ち消して白を白にする。その場の光が持つ色みを打ち消して、白いものが白く写るようにする設定。単位は色温度と同じケルビン(K)で、設定値を上げると写真は暖かく、下げると冷たくなる。人の目は光の色にすぐ慣れてしまうので、カメラのほうが光の色に正直。思ったより青く写ったときは、まずここを疑うといい。