和紙
紙・支持体
長い繊維でにじみを受ける紙
どんな道具か
楮・三椏・雁皮といった靭皮(じんぴ)繊維から漉いた紙。繊維が長く絡むので薄くても丈夫で、木材パルプを原料とする洋紙より繊維が格段に長い。原料で性格が変わり、楮はよくにじみ、雁皮は線がにじまずに止まる。墨と組み合わせて初めて本領が出る紙。
選び方
にじませたいのか、止めたいのかで選ぶ。墨で線を練習するなら楮系の安い紙を束で買う。1枚数円の書道用半紙でも十分に足りる。細い線を保ちたいなら三椏・雁皮系へ。手漉きのものは片面がなめらかで、そちらが表になる。
使い方のコツ
水分をよく吸うので、筆を止めた場所からにじみが広がり続ける。線は迷わず引き切る。にじみを抑えたいときは礬水(どうさ)という膠と明礬の液を引く。大はしあたけの夕立のような多色摺りの版画も、この処理をした紙に色を重ねている。
手入れ・注意
湿気と直射日光に弱い。乾いた暗い場所に平らに置き、虫が付くので防虫剤を添える。折ると繊維が切れて跡が残るので、折らずに巻くか平らのまま扱う。手の脂も残るため、作品にする紙は縁を持って動かす。
解説動画: 手漉き和紙の作り方と、長い繊維が生む丈夫さ/ガリレオ Ch
どう作られる紙か: 楮の皮を処理して繊維だけを取り出し、トロロアオイの根から取った粘液と混ぜ、簀桁を動かして繊維同士を絡めながら一枚ずつ漉き上げる、と工程を追っている。この手漉きの技術はおよそ1300年前から受け継がれ、2014年に本美濃紙・細川紙・石州半紙がユネスコの無形文化遺産に登録された。
丈夫さと保存性の理由: 違いは原料の繊維の長さだと説明している。楮は平均9mmあるのに対し、木材パルプは針葉樹で約3mm、広葉樹で約1mm。長い繊維は多少傷んでも実用に耐えるため、俗に和紙は千年、洋紙は百年と言われる寿命の差が生まれる、という研究者の話を紹介している。
修復に使われる理由: 国立公文書館では、虫食いで傷んだ古文書を和紙で繕っている。元の紙の厚みに合った手漉き和紙を選び、穴の形に合わせてちぎり、小麦粉のでんぷん糊で裏から貼る。保存性の高さに加えて対象になじみやすいのが利点で、仏像や壁画、絵画の表面保護や汚れ取りにも国内外で使われていると伝える。
自分で漉いてから描く: 美術大学が学内に紙漉きの工房を設け、学生が自ら漉いた紙で作品をつくる取り組みを紹介している。自分の使う紙がどんな素材でどんな性質か、何年もつのかを実感として掴んでほしいという狙い。人の力と木と水だけでできる身近さと、買ってきた紙と違い作品もちゃんとしたものにしようという意識になるという学生の声を伝えている。