墨
絵の具・描画材
一色だけで濃淡をつくる黒
どんな道具か
煤(すす)を膠(にかわ)で練り固めた黒。原料で色が変わり、松を焼いた松煙は青みを帯びた黒になりやすく、菜種油などを焼いた油煙はつやと深みのある黒になる。硯で水と磨り合わせて濃さを自分で決めるので、一色のまま濃淡がいくらでもつくれる。水墨画はこの一点の上に立っている。
選び方
最初は液状の墨液でいい。700〜1500円ほど。固形墨は磨る手間がかかるが、濃さを自分で決められる。書ではなく絵に使うなら、にじみの読みやすい油煙系から。硯は小さくてよく、紙は和紙の練習用を束で買う。
使い方のコツ
濃墨・中墨・淡墨を先に別の皿へ作っておくと迷わない。筆は根元まで水を含ませてから穂先だけ濃い墨を付けると、一筆の中で濃淡が出る。にじみは紙の吸い込みと運筆の速さで決まるので、本番の紙で試してから描く。松林図屏風の霧の部分も、薄い墨と塗り残しだけでできている。
手入れ・注意
固形墨は磨ったあと水気を拭き取る。濡れた硯に置いたままだとひび割れる。硯も洗って乾かす。墨液は防腐剤入りでも夏場は傷むので、皿に出したぶんは瓶に戻さない。筆は墨が固まる前に、ぬるま湯で根元まで洗う。
解説動画: 固形墨と液体の墨は何が違うのかを比べる/有隣堂しか知らない世界
墨は二つに分かれる: 墨は固形墨と液体の墨に分かれると整理している。二千年ほど前に今の棒の形になってから形が変わっていないこと、日本へは飛鳥時代に伝わったことを挙げ、液体の墨は百年ほど前に学生向けとして出たものだと説明している。値段は数百円から数十万円まで幅がある。
濃く使っているうちは差が出ない: 真っ黒に濃く使っているあいだは、固形墨でも液体の墨でも大きくは変わらないとしている。違いが出るのは水を足して薄めたときで、固形墨は輪郭ににじみの層ができ、それが持ち味だという。液体の墨は合成樹脂で固めてあるぶん、同じ出方にはなりにくいと説明している。
磨り方: 硯の平らなところに五百円玉ほどの水を垂らし、その上で円を描くようにして、とにかく優しく磨るよう教えている。最初に水を多く入れると時間がかかるので、濃くなってきたら少しずつ足していく。濃い墨ができたら、そこから段階的に水を加えて薄い墨も作っておく。
線が重なったところ: 先に引いた線には後の墨が入っていかないので、あとの線が下に潜って見える。固形墨ならこの重なりがそのまま出るのに対し、安価な液体の墨では交差した部分が束になると、二本の線を引き比べて見せている。同じ黒でも、線が重なる場所で違いが出るという。