構図と光の図鑑
三分割法(構図)
中心を外して画面が動き出す。画面の縦と横をそれぞれ三等分し、その4本の線と、線どうしが交わる4つの点に主役や地平線を置く型。1797年にイギリスのジョン・トマス・スミスが名づけたとされ、明暗の量を1対2に配ると心地よい、という考えが元になっている。今はカメラのグリッド表示として、はじめから画面に引かれていることが多い。
日の丸構図(構図)
主役を中央に置いて迷いを消す。主役を画面の中央に大きく置く型。日本では日の丸の旗に見立ててこう呼ぶ。初心者がやりがちな失敗の代表として語られることが多いが、主役が丸い、左右対称、こちらを向いている、のどれかに当てはまるときは中央がいちばん強い。迷いのなさがそのまま画面の強さになる。
対角線構図(構図)
斜めの線で画面に速さを出す。主役や主要な線を、画面の角から角へ斜めに通す型。水平と垂直が安定して見えるのに対し、斜めの線は倒れかけた状態に見えるため、止まっている画面の中にも動きが出る。坂道、階段、腕や視線の向き、雨足など、もともと斜めのものを探して対角に合わせるのが早い。傾きそのものが動きになる。
三角構図(構図)
底辺を広く取って安定させる。主役の集まりが三角形に見えるように置く型。下が広く上が狭い形は倒れにくく見えるため、画面全体が落ち着く。人物なら座らせて衣の裾を広げ、風景なら山や木の形をそのまま使う。ルネサンスの聖母子像で繰り返し用いられ、モナ・リザも組んだ手を底辺、頭を頂点とする三角形として読まれることが多い。
シンメトリー構図(構図)
左右をそろえて静けさを作る。画面の中心線をはさんで左右、または上下がほぼ同じになるように置く型。人の目は左右対称を一瞬で整っていると受け取るため、説明がいらないほど強い。建物の正面、水面の映り込み、儀式の場面などで自然に成立する。秩序と静けさが出る代わりに、動きはほとんど消える。
額縁構図(構図)
手前の枠で主役を囲って見せる。窓枠、戸口、アーチ、垂れ下がる枝といった手前のものを枠に使い、その中に主役を収める型。フレームインフレームとも呼ぶ。枠が画面の端を締めるので、明るい主役が抜けて見える。ダヴィッドのホラティウス兄弟の誓いは、背後の3つのアーチが人物の群れをそれぞれ枠取っている。
S字構図(構図)
曲がる道で奥まで連れていく。川、道、砂浜の波打ち際、人の背中の反りなど、ゆるやかなS字の曲線を画面に通す型。ホガースが1753年の『美の分析』で、S字にうねる線を美しさを生む線として論じて以来、絵でも写真でも繰り返し使われてきた。直線より道のりが長いぶん、同じ画面でも奥行きが増える。
リーディングライン(視線の導き方)
線を引いて視線を目的地へ運ぶ。画面の中にある線を使って、見る人の視線を主役まで運ぶ考え方。道、線路、川、塀、影、並木、手すりなど、材料はどこにでもある。線そのものを見せるのではなく、線の行き着く先に主役を置くのが要で、置かなければ視線はそのまま画面の外へ抜けてしまう。
一点透視(視線の導き方)
奥の一点にすべての線を集める。奥行きへ向かう線を、画面の中の1点(消失点)にすべて集める遠近法。15世紀初めのフィレンツェでブルネレスキが原理を示し、1435年にアルベルティが『絵画論』で誰にでも使える形にまとめた。消失点が1つなので画面は正面向きになり、整った静けさが出る。
視線の抜け(視線の導き方)
向いている側を広く空ける。人や動物が向いている方向、進んでいる方向に空きを作る置き方。写真ではノーズルーム、リードルームとも呼ぶ。顔を右へ向けているなら右を広く、走っているなら進む先を広く取る。空けた側はこれから起きることの置き場になり、詰めると壁に突き当たったように見える。
反復とパターン(視線の導き方)
同じ形を並べてリズムを作る。同じ形・同じ間隔のものを画面に並べる型。窓、柱、階段、花、人の列など、繰り返せるものなら何でもいい。1つずつは平凡でも、数がそろうと模様として見え始める。並びをどこで切り、どこで崩すかまでが型のうちに入る。
逆光(光)
光を正面から受けて輪郭を光らせる。被写体の向こう側に光源がある状態。正面は影になり、輪郭に光の縁ができる。空や水面は明るく飛び、手前は暗く沈むので、画面が明暗の2層にはっきり分かれる。扱いの難しい光と言われるが、いちばん劇的な光でもある。
順光(光)
正面から当てて色をいちばん濃く出す。撮る人・描く人の背中側に光があり、被写体の正面がまるごと照らされる状態。影は被写体の裏に隠れて見えなくなる。色が濁らず、いちばん素直な明るさで出るのがこの光の取り柄で、失敗の少ない当て方でもある。
サイド光(光)
横から当てて凹凸を浮き立たせる。光が被写体の真横、あるいは斜め前から当たっている状態。片側が明るく、反対側に影ができる。面の向きが変わるところに必ず明暗の境目が出るので、絵でも写真でも、いちばん形が読み取りやすい光になる。
窓の光(光)
室内でいちばん扱いやすい大きな光。屋内で窓から入ってくる自然光。ガラス面がそのまま大きな光源になるので、直射日光より柔らかく、それでいて向きははっきりしている。機材を何も足さずに、方向のある光が手に入る。室内で撮る絵と写真の基本になる光。
拡散光(光)
影の縁がぼける柔らかい光。光が雲や布、障子などを通って散らばり、あちこちから当たっている状態。曇りの日、建物の日陰、白い壁の部屋の中がこれにあたる。影の縁がぼけて、明るい所と暗い所の差が小さくなるのが共通の特徴。
補色(色)
向かい合う色を組んで互いを立てる。色相環で正反対に位置する色どうしの組み合わせ。絵の具の環では赤と緑、黄と紫、青と橙が向かい合う。色の体系によって相手は少しずれるので、厳密な1組を覚えるより「反対側にある色」と捉えるほうが使いやすい。
類似色(色)
隣り合う色でまとめて静かにする。色相環で隣り合う2〜3色だけでまとめる組み方。青と青緑と緑、黄と橙と赤といった並びになる。色の数が減るぶん画面がまとまり、落ち着いた印象になる。派手さは出ないが、配色としては失敗がいちばん少ない。
モノトーン(色)
色を捨てて明るさの差だけで見せる。色相を1つに絞る、あるいは色を使わず明るさの差だけで描く組み方。墨だけの絵、白黒写真、セピア1色の画面などが当てはまる。色という手がかりが消えるので、残るのは明暗と形と質感だけになる。
暖色と寒色(色)
温度の差で奥行きと空気を作る。赤・橙・黄を暖色、青・青緑・青紫を寒色と呼び、緑と紫はその中間に置かれる。暖色は手前に出て、寒色は奥へ引くように見える性質があり、画面の同じ平面に並べた色どうしでも、前後が分かれて見える。