視線の抜け
視線の導き方
向いている側を広く空ける
どんな型か
人や動物が向いている方向、進んでいる方向に空きを作る置き方。写真ではノーズルーム、リードルームとも呼ぶ。顔を右へ向けているなら右を広く、走っているなら進む先を広く取る。空けた側はこれから起きることの置き場になり、詰めると壁に突き当たったように見える。
何が起きるか
人の目は視線の先を追うようにできているため、空きがあればその先を想像し、無いと息苦しく感じる。同じ人物写真でも、抜けを取れば穏やかに、詰めれば緊張した画面になる。窮屈さも道具として使えるので、圧迫感を出したい場面ではあえて詰める。
使い方
絵では顔の向きを決めてから背景の量を割り振る。写真は三分割法の縦線に人物を寄せ、視線の側に三分の二を残すと収まりがよい。横位置なら左右、縦位置なら上下の余白で調整する。あとで切り直す前提で、はじめは広めに撮っておくと逃げが利く。
やりがちなミス
抜け側に電柱や別の人が入ると、視線がそこで止まって空きが働かない。空けすぎると人物が小さく端へ押しやられ、何の写真か分からなくなる。向いていない側を広く空けると落ち着かない画面になり、これがいちばん多い失敗。正面を向いた顔には向きが無いので、日の丸構図に切り替える。
解説動画: 主役を小さくして視線の先を空ける余白の作り方/かつきしょうへい
余白をどう捉えているか: 余白は空間を足すのではなく、主役を小さくした分だけ残るもの、つまり引き算だと説明している。同じ睡蓮でも、寄れば赤い花が咲いているという説明の写真になり、引いて周りごと写すと静けさや余韻が出る。何も写っていない部分が主役を引き立てるという見方を示す。
向いている側・進む先を空ける: 左を向いて歩く雀の作例では、進んでいく左側に大きく空きを取っている。そうすることでこの先どこへ行くのかという物語が生まれるという。人物でも同じで、見ている方向を空けると、見る人の想像がその空間へ流れていく。逆に進む先を詰めて後ろ側を空けると、窮屈で行き止まりに見えると注意している。
効かせるための条件: 背景がうるさいと余白は働かないため、空や水面、ぼけた緑のように込み入っていない場所を選ぶよう勧めている。撮ったあとの扱いも同じで、青いもみじに一匹だけいるてんとう虫を大きく切り出すと、ただのアップになって意味が消える。切り詰めず、余白ごと一枚として見る。画角の決まった単焦点レンズのほうが周りが写り込むぶん余白を作りやすいとも述べている。
余白が正解でない場面: 余白は正解ではなく選択肢の一つだとし、質感や迫力を見せたいときは体の一部が切れても寄ると話す。誰がどんな表情かを残す家族写真では主役を中央に大きく置く日の丸構図のほうが断然多く、そこに引いた一枚を混ぜているという。スマホの小さい画面では余白が多いと主役が小さくなりすぎるので、どこで誰に見せるかで主役の大きさを変えるよう勧めている。