S字構図
構図
曲がる道で奥まで連れていく
どんな型か
川、道、砂浜の波打ち際、人の背中の反りなど、ゆるやかなS字の曲線を画面に通す型。ホガースが1753年の『美の分析』で、S字にうねる線を美しさを生む線として論じて以来、絵でも写真でも繰り返し使われてきた。直線より道のりが長いぶん、同じ画面でも奥行きが増える。
何が起きるか
目は曲線の上を止まらずに滑り、手前から奥へ運ばれていく。直線が最短で奥へ突き抜けるのに対し、S字は左右に振れながら進むため、画面の中を歩いたような時間が生まれる。曲線には角がなくやわらかいので、人物や花、水辺のように穏やかな主題と相性がよい。
使い方
絵では手前を太く、奥を細く描くと自然に遠近が付く。写真は高さが要で、少し高い場所に立って見下ろすと道や川のうねりが見えてくる。同じ道でも目線の高さでは直線に潰れる。曲線の終わりに小さく主役を置くと、そのままリーディングラインとして働く。
やりがちなミス
S字を探して地面すれすれや不安定な足場に立つのは危ない。曲線が画面の端で切れて行き先が分からないと、視線が迷子になる。うねりが強すぎるとくどく、主役より道のほうが目立つ。直線的で硬い被写体や、緊張を出したい場面には対角線構図のほうが合う。
解説動画: 名画と写真に共通するS字の曲線の見つけ方/TokyoCameraClub
S字構図をどう説明しているか: 被写体がアルファベットのSの字を描くように並ぶ配置だと説明している。左右が反転した逆S字でも構わず、うねりが2回である必要もなく、3回曲がっても成立するという。厳密な形を当てはめるより、名画で使われている型を写真に持ち込むという立場で紹介している。
名画での例: 葛飾北斎の《富嶽三十六景 駿州江尻》では、S字の先に富士山が来て線と主役がつながり、自然に奥行きが出ると見ている。滝を描いた《諸国瀧廻り》やチャーチの《ナイアガラ》も挙げ、水の流れはS字になりやすいとする。ヨーロッパは滝が少ないので昔の名画に滝はあまり出てこないが、日本は滝が多く昔から描かれてきた、という話も添えている。
写真でS字を探す場所: 川や滝、群生する花畑、海の波打ち際のように蛇行するものはS字構図の狙い目だと勧めている。高速道路の陸橋や線路も例に挙げ、夜は長時間露光で電車のライトの軌跡が線として残るため、暗くて見えない線路がS字になって現れると説明する。色の乏しい冬景色でも、青い滝がS字に走ることで奥行きが立ち上がるという。
一本の線としてつなげる: 一つの被写体だけでS字を完結させず、別々のものをつないで一本の線として見る見方を勧めている。海岸線と天の川がつながって見える作例を挙げ、そこまで意識すると線が見つかるという。さらに近景・中景・遠景の三層や、遠くが霞む空気遠近法、手前に黄色・奥に青を置く色彩遠近法と重ねると、スケール感がいっそう強まるとしている。