地質と湧きかた図鑑

マグマだまり(火山の湯)

湯を温めているのは、地下にたまったマグマです。ただし湯になる水の大半は、地表から地中にしみ込んだ雨や雪で、マグマが液体のまま湧き出すわけではありません。第四紀の火山活動でできた温泉を火山性温泉と呼び、その熱を出しているのが地下のマグマだまりです。神奈川県温泉地学研究所は…

熱水希釈型温泉(火山の湯)

同じ火山の湯でも、濃さは湧く場所で違います。深いところの熱水が、浅いところの地下水にどれだけ薄められたかで中身が決まるためです。深部の熱水が上がってくる途中で浅い地下水と混ざり、薄まって湧く型です。別府温泉地球博物館は、世界の火山地域の本源的な熱水が塩化物泉型であることを挙げ…

蒸気加熱型温泉(火山の湯)

上がってきたのが気体なら、湯の中身は変わります。深いところの熱水から分かれた蒸気が、浅い地下水を温めてできる型です。深いところの熱水が沸騰して分かれた蒸気が、上の層にある地下水を温めます。熱水希釈型温泉との違いは、上がってきたものが液体か気体かの一点にあります。熱水そのものは下に留まり、動くのは蒸気だけなので…

火山ガス吹き込み型温泉(火山の湯)

火山ガスが、水に直接吹き込んでできる湯です。活動的な火山の山頂近くで表流水や浅い地下水にガスが入り、強い酸性を示します。活動的な火山の山頂近くで、火口から出る火山ガスが表流水や浅い地下水に直接吹き込みます。別府温泉地球博物館はこれを火山ガス吹き込み型と呼び、火山ガス加熱型という別名も挙げています。…

地熱貯留層(火山の湯)

熱水は、岩の割れ目に染み込んでたまっています。地下に湯の池があるのではなく、隙間の多い層とその上をふさぐ帽岩が、ためる構造を作ります。割れ目や隙間の多い層に熱水がたまり、その上を水を通しにくい帽岩がふたをしている構造です。ふたがあるために熱と圧力が逃げず、深いところの水が高い温度を保ったまま留まります。…

温泉余土(火山の湯)

白い粘土は、岩が湯に作り変えられた跡です。噴気や熱水が長く当たった岩石が、もとの組織を失って粘土に変わったものを温泉余土と呼びます。湯が湧く仕組みそのものではなく、湧いている場所の岩に起きることです。噴気や熱水に含まれる酸が岩石の長石や輝石を分解し、ナトリウムやカリウムなどが溶け出したあとに粘土鉱物が残ります。…

地温勾配(火山ではない湯)

火山が無くても、地下は深いほど熱くなります。この深さあたりの温度の上がり方が、火山ではない土地の温泉を成り立たせる土台です。地球の内部から地表へ、熱が絶えず流れ出ているためです。産業技術総合研究所 地質調査総合センターは、その上がり方を100mにつき平均約3℃とし、地表20℃なら1000mで50℃…

深層地下水型温泉(火山ではない湯)

雨や雪が、時間をかけて温まって戻ってきた湯です。火山の熱ではなく、深さの分だけ上がった地温で温められています。地表に降った雨や雪が地中にしみ込み、深いところをゆっくり流れる間に温まります。熱を与えるのは地温勾配と、古い火成活動の冷めのこりの熱です。別府温泉地球博物館は…

化石海水型温泉(火山ではない湯)

昔の海水が、そのまま出てくるわけではありません。地層に閉じ込められた海の水は、閉じ込められたあとの反応で組成を変えています。古い海水が地層のすきまに閉じ込められたまま残っている水が、湯の正体です。海だったところに砂や泥が積もると、粒のあいだの水も一緒に埋められ、地下深くへ運ばれます。そこは地温勾配のぶんだけ温かく…

有馬型深部流体(火山ではない湯)

火山がないのに、海水より濃い湯が高温で湧く型です。沈み込む海洋プレートから絞り出された水が、断層をつたって上がってきたものと考えられています。熱の出どころが、マグマだまりではなく沈み込む板の側にあります。海洋プレートが地下深くへ沈むとき、含水鉱物から水が絞り出され、その水が断層のような通り道を選んで上がってきます。…

割れ目系循環型温泉(火山ではない湯)

湯の道が、線で決まっている型です。断層や割れ目にしみ込んだ地下水が深くまで潜り、温まって同じ割れ目を上がってきます。地下水が割れ目という一本の道を通って深くまで潜り、地温勾配のぶんだけ温まって、同じ道を上がってきます。別府温泉地球博物館は、これを非火山性温泉の一類型として挙げています。…

花崗岩地帯の湯(火山ではない湯)

岩に含まれるウランが、湯の性格を決めます。花崗岩は他の岩石よりウランやトリウムを多く含み、その壊変でできるラドンが地下水に溶けます。花崗岩がウランとトリウムを多く含むことが出発点です。放射壊変の系列でラジウムができ、そこから生まれるラドンは気体なので、岩に触れている地下水に溶け込みます。…

かん水(火山ではない湯)

ガスを汲むための井戸から、湯が一緒に上がってきます。水溶性天然ガス田の地下水は塩分が濃く、温泉として使われることがあります。地層に閉じ込められた塩分の濃い地下水を、水溶性天然ガス田から汲み上げたものです。目的はまず水に溶けたメタンで、ガスと水は同じ井戸から一緒に上がってきます。村松 2018(温泉科学68)は…

フミン酸を含む湯(火山ではない湯)

湯の色は、地層に埋もれた植物から来ています。平野の堆積層に含まれる腐植物質が地下水に溶け、茶褐色の湯になります。地下に埋もれた植物起源の腐植物質が、地下水に溶け込んだ湯です。亜炭や泥炭をはさむ地層を水が通ると、フミン酸やフルボ酸が水の側へ移ります。神奈川県温泉地学研究所は…

自然湧出(湧かせ方と地上の見え方)

ポンプを使わずに、湯が地表まで出てくる状態です。地下の水がもともと持っている圧力だけで押し上げられている湧きかたを指します。地下の圧力だけで、湯が地表まで上がってきます。押し上げているのは、水がしみ込んだ高い土地と湧出口との水位の差で、水を通しにくい層にはさまれた帯水層がその差を保ちます。日本温泉協会は…

掘削自噴(湧かせ方と地上の見え方)

掘った井戸から、ポンプなしで湯が噴き上がります。人が穴を開けたという一点だけが自然湧出と違い、湯の出どころのほうは変わりません。圧力を持った層に、人が穴を通したときに起きます。水を通しにくい層にふたをされた帯水層は、押し上げる力を地下に閉じ込めたままになっています。そこへ井戸が届くと…

動力揚湯(湧かせ方と地上の見え方)

自分の力では地表に届かない湯を、機械で引き上げます。ポンプで押し上げるか井戸に空気を送り込むかの二通りがあり、汲み上げのあいだに湯の状態が変わります。地下水面が地表より低いところにある湯は、圧力だけでは地上まで上がってきません。そこへポンプを下ろして押し上げるか、井戸のなかに空気を送り込んで汲み上げるのがこの方式です。…

噴気地帯(湧かせ方と地上の見え方)

湧いているのが湯ではなく、水蒸気の一帯です。液体のまま地表に届く前に浅いところで沸騰し、気体だけが地面の割れ目から抜けています。地下の熱水が浅いところまで上がる途中で沸騰し、液体と気体に分かれます。液体は下に残り、水蒸気と揮発しやすいガスだけが岩の割れ目を伝って地表へ抜けます。もとの熱はマグマだまりから届いていて…

間欠泉(湧かせ方と地上の見え方)

出続けるのではなく、ためて噴く泉です。地下にたまった湯やガスが限界を超えたところでまとめて上がるため、噴出と休止が繰り返されます。湧き口までの道が細い管や地下の空洞になっていると、湯はいったんそこにたまってから一度に噴き上げます。鏡 2015(温泉科学65)は間欠泉の噴出機構の研究をまとめており、何が圧力をため…

石灰華(湧かせ方と地上の見え方)

湯が地上に出た跡が、そのまま岩になります。溶けていた炭酸カルシウムが、二酸化炭素の抜けた場所で沈殿して積もったものです。石灰華は湯ではなく、湯が出ていた場所に残る岩です。地下では二酸化炭素の圧力に支えられて炭酸カルシウムが水に溶けていられますが、地上に出てガスが抜けると溶けきれなくなり、その場で固体になって沈みます。…