化石海水型温泉
火山ではない湯
昔の海水が、そのまま出てくるわけではありません。地層に閉じ込められた海の水は、閉じ込められたあとの反応で組成を変えています。
どうして湯が湧くか
古い海水が地層のすきまに閉じ込められたまま残っている水が、湯の正体です。海だったところに砂や泥が積もると、粒のあいだの水も一緒に埋められ、地下深くへ運ばれます。そこは地温勾配のぶんだけ温かく、汲み上げれば湯になります。神奈川県温泉地学研究所は、この型が塩化物泉の姿をとり、25℃以下であっても溶けている成分の量で温泉法上の温泉に入ると説明しています。
地下で何が起きているか
閉じ込められたあとに、水のほうが変わっていきます。村松 2018(温泉科学68)はかん水と塩化物泉をまとめて論じ、埋没続成変質という言葉でこの過程を整理しました。硫酸還元で硫酸イオンが減ること、方解石が沈殿してカルシウムが抜けること、粘土鉱物が変わるときにイオンの入れ替えが起きることが挙げられています。海水がそのまま保存されている、という像は当たりません。
出てくる湯の成分の傾向
ナトリウムと塩化物イオンが主で、掲示では塩化物泉として出ます。海水と違うのは硫酸イオンがほとんど残らない点で、硫酸還元がそこまで進んだしるしになります。かわりによう素・臭素・アンモニウムイオンが濃くなり、量が届けば含よう素泉が併記されます。有機物に由来する色を帯びるものもあり、そちらはフミン酸を含む湯と重なります。
地上での見え方
地上には、何も出ていません。この型が分布するのは平野や丘陵の堆積層が厚い土地で、露頭も湯けむりもなく、掘削自噴か動力揚湯で初めて姿を見せます。汲み上げた湯は泉温が低いままのことが多く、掲示では冷鉱泉や低温泉の区分が付きます。空気に触れて鉄が酸化し、色が変わってから湯船に届くものもあります。