窒素とめぐり図鑑

餌からアンモニアへ(窒素のめぐり)

魚が食べた窒素の大半は、水へもどります。体をつくるぶんとして残るのは一部で、あとはえらから溶けて出るか、糞と食べ残しに移ります。餌のたんぱく質は、魚の体になる窒素と、水へ出る窒素に分かれます。魚が体に残せるのは餌の窒素のおよそ30%という報告があり(Rafiee と Saad 2005、Eck ら 2019 が引用)…

アンモニア化(窒素のめぐり)

糞と食べ残しに残った窒素は、分解されてアンモニアになります。溶けている窒素より遅れて出てくるので、固形物をいつ取り除くかで水の値が変わります。糞と食べ残しの中の有機態の窒素を、従属栄養の細菌がアミノ酸まで崩し、アンモニアとして水へ戻します(Eck ら 2019)。えらから直に溶ける窒素と違い…

アンモニアから亜硝酸へ(窒素のめぐり)

硝化の一段目で、アンモニアは亜硝酸に変わります。酸素を使う反応なので、酸素とpHと水温が下がると、変わりきらないアンモニアが水に残ります。アンモニウムイオンとアンモニアが、酸素と結びついて亜硝酸に変わります。担い手はアンモニア酸化細菌で、この酸化から得たエネルギーで生きています(Somerville ら 2014)。…

亜硝酸から硝酸へ(窒素のめぐり)

硝化の二段目で、亜硝酸は硝酸に変わります。一段目より遅れて立ち上がるため、立ち上げの途中では亜硝酸だけが高い時期が生まれます。亜硝酸がさらに酸素と結びついて硝酸に変わります。担い手は亜硝酸酸化細菌で、Nitrobacter や Nitrospira が知られています。…

硝化が出す酸(窒素のめぐり)

硝化は酸を出し、水のアルカリ度を削ります。補わないままだとpHが下がり続け、やがて硝化そのものが鈍ります。硝化はアンモニアを硝酸に変えるだけでなく、水素イオンを一緒に出します。硝酸ができるのと同時に酸ができる形で、水のアルカリ度(KH)が削られます。反応式の上ではアンモニア態窒素1gにつき酸素4.57g…

植物が吸う窒素(窒素のめぐり)

植物は主に硝酸を吸い、アンモニウムも少しは吸います。吸われたぶんだけ水から窒素が減るので、株の量と魚の数は釣り合いの話になります。根は硝酸とアンモニウムの両方を引き取れますが、形で扱いが違います。硝酸は速く吸われ、体の中を動きやすく、貯めても害が出にくい。アンモニウムは少量しか吸えず…

脱窒(窒素のめぐり)

酸素の無いところで、硝酸は窒素ガスに変わって水から抜けます。硝酸を減らす道であると同時に、汚泥の底で意図せず進んでいることもあります。酸素の無いところで、細菌が硝酸を呼吸の相手に使います。硝酸は亜硝酸、一酸化窒素、一酸化二窒素と姿を変え、最後は窒素ガスになって水から抜けます(Eck ら 2019)。…

系から出ていく窒素(窒素のめぐり)

入った窒素は、魚の体・収穫・汚泥・気体に分かれて出ていきます。どこにも向かわないぶんが硝酸として水に残るので、溜まり方は収支で読めます。餌で入った窒素は、魚の体・収穫した株・抜いた汚泥・大気へ逃げる気体に分かれて出ます。どれにも向かわなかったぶんが硝酸として水に残るので、溜まり方は差し引きで読めます。…

硝化に要る酸素(酸素のめぐり)

硝化菌は、窒素1gの酸化に酸素4.57gを使います。魚と同じ水から取るので、酸素の薄い水では魚より先に硝化のほうが鈍ります。硝化はアンモニウムを酸素で酸化していく反応で、一段目に亜硝酸、二段目に硝酸へ変わります。式の上では窒素1molあたり一段目に酸素1.5mol、二段目に0.5molが要り…

魚が使う酸素(酸素のめぐり)

魚の酸素消費は、水温が上がるほど増えます。水が溶かしていられる量のほうは逆に減るので、夏はえらの側から先に足りなくなります。魚は水に溶けた酸素をえらから血へ取り込み、体の中で使ってから、二酸化炭素を水へ返します。取り込んだ酸素は泳ぐことにも、餌を体に変える働きにも回るので、食べる量が増えれば使う量も増えます。…

根が使う酸素(酸素のめぐり)

根も呼吸していて、水に溶けた酸素を使います。水に浸かった根へ酸素が届かないところから、吸う力と根の色が変わります。根は糖を酸素で酸化してエネルギー(ATP)を取り出し、二酸化炭素を水へ返します。養分を根の中へ引き込む働きはこのエネルギーに頼るため…

分解が奪う酸素(酸素のめぐり)

有機物を分解する菌は、硝化菌より速く酸素を使います。固形物が溜まった水では、酸素と場所の取り合いで硝化のほうが押しのけられます。食べ残しや糞、枯れた根といった有機物を、それを養分にする菌が酸素で分解し、二酸化炭素と水にします。同じ流れの中で、そこに含まれていた窒素はアンモニア化でアンモニウムへ戻ります。…

気体の出入り(水面と気泡)(酸素のめぐり)

酸素は水面と気泡から入り、二酸化炭素は同じ道から出ます。溶けられる上限は水温と気圧で決まるので、足りないぶんは水と空気を動かして補います。空気の側の酸素が水へ溶け、水の側の二酸化炭素が空気へ抜けます。向きを決めるのは水と空気それぞれの分圧の差で、溶けていられる上限、つまり飽和は水温と気圧で決まります。循環式の設計では…

酸素が尽きた場所(酸素のめぐり)

底に溜まった汚泥の中では、酸素が尽きています。そこでは脱窒や硫化物の生成が進み、水をかき混ぜた拍子に本流へ出てきます。酸素が尽きると、菌は代わりの受け取り手へ乗り換えます。硝酸を使えば脱窒が進んで窒素ガスが抜け、硫酸を使うと硫化水素——卵の腐ったにおいの気体ができます。後者は硫酸還元菌が有機物を分解しながら…

生物ろ過の担い手(立ち上げと安定)

硝化を担うのは、ろ材の膜に住みつく微生物です。教科書に載る2属だけでなく、両方の段を1種で行うコマモックス・ニトロスピラが優占するという報告があります。アンモニアから亜硝酸へと亜硝酸から硝酸への二段を、別々の微生物が受け持つ——長くそう説明されてきました。…

フィッシュレスサイクリング(立ち上げと安定)

魚を入れる前に、アンモニアを与えて菌を育てる立ち上げ方です。アンモニアと亜硝酸が下がって硝酸だけが残るまで、水温しだいで数週間かかります。魚の代わりにアンモニアそのものを与えて、菌の食い扶持を先に用意します。細かく砕いた餌、アンモニウム系の肥料、混ぜ物のないアンモニア水などが源になり…

新水槽症候群(立ち上げと安定)

立ち上がっていない水では、アンモニアと亜硝酸が順に山を作ります。ろ過が追いつくまでの一時の形ですが、その間に魚へ害が出る濃度まで上がります。魚を先に入れた水で起きることです。餌からアンモニアへの道だけが動き、受け取る菌がまだ膜になっていないので、アンモニアが最初の山をつくり…

生物ろ過が崩れるとき(立ち上げと安定)

菌はろ材の膜にいるので、洗い方ひとつで減ります。水温の低下、pHの落ち込み、餌の急な増やしすぎ、停電でも同じことが起き、まずアンモニアから戻ります。働いていた膜が失われて、アンモニアから亜硝酸へと亜硝酸から硝酸への能力が落ちる出来事です。餌から入る窒素の量は変わらないまま受け皿だけが小さくなるので…