分解が奪う酸素

酸素のめぐり

有機物を分解する菌は、硝化菌より速く酸素を使います。固形物が溜まった水では、酸素と場所の取り合いで硝化のほうが押しのけられます。

何が何に変わるか

食べ残しや糞、枯れた根といった有機物を、それを養分にする菌が酸素で分解し、二酸化炭素と水にします。同じ流れの中で、そこに含まれていた窒素はアンモニア化でアンモニウムへ戻ります。酸素を使う点は硝化と同じですが、こちらは有機物そのものを燃やす反応です。この分解に要る酸素の量をまとめて指すのが、BOD(生物化学的酸素要求量)という言い方になります。

どこで起きているか

沈殿の底、ろ材を覆う膜の外側、培地のすき間、配管のぬめり——固形物が留まるところのすべてです。同じ膜の上で硝化菌と場所を分け合うので、外側を分解する菌に覆われると硝化菌へ酸素が届きません。膜の外側ほど有機物が濃く、硝化菌は内側へ押し込まれる並びになります。配管や培地がぬるつくのは、その膜が厚くなったという合図です。

速さを決めるもの

有機炭素の量(C/N比)と水温で決まります。移動床の生物ろ過を2基、外から炭素を入れる側と入れない側で4か月ならして比べた実験では、急に炭素を増やしたとき、炭素慣れした側の硝化は10倍強く抑えられました。続けて増やすと、アンモニアの酸化が14〜22%落ちています(Navada ら 2020)。

止まるとどうなるか

酸素を使い切った側から酸素が尽きた場所に変わり、硝化のほうが押し出されます。水に残るのは総アンモニア態窒素(TAN)と亜硝酸態窒素(NO₂-N)で、二段目のほうが先に鈍るぶん亜硝酸が溜まりやすい形です。固形物を先に分けておくと、この取り合いは起きにくくなります(沈殿槽)。餌の量を落とせば、入ってくる側からもゆるみます。

解説動画: 水質指標入門#8【生物化学的酸素要求量 BODー溶存酸素の消費量を表すものー】/気象研究クラブ【Alexaスキル開発・天気図用紙販売】

BODという言い方: 動画は水質の指標としてBOD(生物化学的酸素要求量)を扱います。水中の物質を微生物が分解するときに消費される酸素の量を表すもので、酸素の量なので単位はmg/L。BODが10 mg/Lの水は、1Lあたり10 mgの酸素が使われるという意味だと言い換えて示します。

汚れと酸素は裏表: 物質の濃度が高い、つまり汚れている水ではたくさん分解が起きて酸素も多く使われるのでBODは高くなり、きれいな水では低い。私たちの出す生活排水のBODは高く、そのまま川へ出れば流れ込んだ先の酸素をたくさん使ってしまう。溶存酸素(DO)が減る側の話につながると述べます。

5日間の差で測る: 測り方は専用の瓶を使います。測りたい水を入れ、微生物が足りなければ下水などを足し、外から酸素が入らないように密封して、同じものを2本つくる。1本はすぐに開けてそのときの溶存酸素を測り、もう1本は5日後に開けて測る。その差がそのままBODになる、という手順です。

9から4を引く: 例として、はじめが9 mg/L、5日後が4 mg/Lなら、消費された5 mg/LがBODになると示します。何日後に測るべきかについて明確な根拠はなく、5日というのは慣習だとも断ります。下水処理は、このBODを下げてから川へ出すための仕組みだと位置づけて締めます。

欲しがる量の数字: この本の側から読み直すと、BODはその水がどれだけ酸素を欲しがるかを表した数字です。動画の言い方に沿えば、餌の残りやフンで汚れているほど分解がたくさん起こり、そのぶん酸素が使われて溶存酸素は減る。同じ水を魚と菌と根で使うこの本では、硝化に要る酸素と並べて読む数字にあたります。