根が使う酸素
酸素のめぐり
根も呼吸していて、水に溶けた酸素を使います。水に浸かった根へ酸素が届かないところから、吸う力と根の色が変わります。
何が何に変わるか
根は糖を酸素で酸化してエネルギー(ATP)を取り出し、二酸化炭素を水へ返します。養分を根の中へ引き込む働きはこのエネルギーに頼るため、酸素が減ると呼吸そのものより先に吸収のほうが落ちます(Scott ら 2026 がまとめた総説)。株の上の姿が変わるより早く、植物が吸う窒素が細りはじめます。
どこで起きているか
起きているのは根の表面と、水に触れている細い根の内側です。メディアベッドなら培地の空気のすき間、NFT(薄膜水耕)なら薄い水の膜と空気の境、DWC(浮き床の水耕)なら送り込んだ気泡が供給口になります。根が茂るほど水の通り道は狭まり、流れの下流ほど薄くなっていきます。止まった水のあるところから先に切れるので、酸素は場所ごとに見るものになります。
速さを決めるもの
水温と根の量、流れの速さで決まります。土を使わないイチゴ栽培の実測では、冬から春にかけて溶存酸素が約4割下がったと報告されています——水温の上がり方と、根が増えて酸素を使う量が増えたことが重なるためです(Palencia ら 2021、Scott ら 2026 より)。商業栽培で置かれている下限は5 mg/Lとされています。
止まるとどうなるか
止まると、株の見た目に出るより先に吸収が落ちます。根の膜が傷んで出す物質が変わり、ピシウムの遊走子を呼び寄せると報告されています(Scott ら 2026)。水の側では根が茶色くぬめるとして現れ、養分が水にあるのに株は足りない顔つきになります。ただしイチゴで、ここを下回ると落ちるという値そのものは、まだ決まっていません。
解説動画: 【裏庭の水耕菜園#59】知識を高めよう!エアレーション(溶存酸素DO)と野菜の生育関係/裏庭の水耕栽培ライフ
溶けている酸素: 動画はまず溶存酸素(DO)を、水に溶け込んでいる酸素のことだと言い直します。低すぎも高すぎもしない幅なら野菜は普通に育ち、送気を止めると酸素が乏しくなって嫌気性の菌が増え、根腐れにつながると説明します。家庭の自作装置でも、最低限のエアレーションは入れておきたいと置きます。
たまり水の落とし穴: 自作装置の振り返りとして、エアストーンを溶液タンクに落とし込むだけでは足りなかった話が出ます。酸素が上がるのは上澄みばかりで、ポンプが送り出すのは底にたまった値の低い液になる。そこでポンプを浮きに付けて上澄みを吸わせたが、それで野菜の育ちが目に見えて変わるわけではなく設計のこだわりだったと述べます。
実験の組み立て: 後半は、米国の省庁とその研究機関が支援し、アリゾナ州立大学の学生が公開した資料の紹介です。屋内のDWC(浮き床の水耕)でホウレンソウとルッコラを育て、送気を貯水槽か栽培トレイか両方かに置いた5通りと、送気なしの0番を比べます。原本の転載ではなく独自の解釈だと断ったうえで進みます。
置き場所で差が出る: 結果は、送気なしの0番が酸素飽和度で68%、3番を除く全ケースがそれを上回りました。酸素発生器でもエアポンプでも、貯水槽より栽培トレイに送気したほうが値は高いという、研究メンバーの予想どおりの並びです。動画はここから、送気は栽培トレイ側に置くほうが効くとまとめます。
上げれば良くはない: ただし育ちが良かったのは飽和度78%の4番と77%の5番で、それより高い1番と2番は25日後の収穫量が伸びていません。高すぎると成長に悪い影響が出ることも実験から分かったとして、効く幅は案外狭いと結びます。水に浸かった根へどれだけ届いているかを、場所ごとに見る話です。