餌からアンモニアへ
窒素のめぐり
魚が食べた窒素の大半は、水へもどります。体をつくるぶんとして残るのは一部で、あとはえらから溶けて出るか、糞と食べ残しに移ります。
何が何に変わるか
餌のたんぱく質は、魚の体になる窒素と、水へ出る窒素に分かれます。魚が体に残せるのは餌の窒素のおよそ30%という報告があり(Rafiee と Saad 2005、Eck ら 2019 が引用)、残りはえらから溶ける総アンモニア態窒素(TAN)と、糞や食べ残しに残る有機態の窒素になります。後者はアンモニア化を経てから水の数字に現れます。
どこで起きているか
分かれ道は魚の消化管とえらにあります。たんぱく質はアミノ酸まで分解され、余った窒素がえらの表面から水へ拡散します。うすい尿も体の後ろの排出口から出ます(Somerville ら 2014)。いっぽう糞と食べ残しは沈み、沈殿槽や培地の底に溜まります。同じ餌の窒素が、溶けた側と固形の側に置き分けられます。
速さを決めるもの
入る窒素の総量を決めるのは1日に与える餌の量です。FAO の小規模向け手引きは、たんぱく質32%の餌で育てる床1m²あたり葉物40〜50g、果菜50〜80gを1日の目安に置いています(Somerville ら 2014)。水温が上がれば魚の代謝も上がり、同じ餌でも出てくるのが早まります。餌の粒の大きさと食べ残しの量も効きます。
止まるとどうなるか
魚が食べる量が落ちると、この段の入りが細ります。餌は水に残り、床や槽の底で分解されながら酸素を使います。数字では総アンモニア態窒素(TAN)の出どころが固形物側に寄るので、水の値より先にえさを残すようになったの側から見えることがあります。逆に与えすぎれば、入る窒素がアンモニアから亜硝酸への受けきれる量を超え、硝化の側に行列ができます。
解説動画: Nitrogen in Aquaponics Systems/ZipGrow
入口は餌だけ: 動画は、この系に窒素が入ってくる形は餌のたんぱく質ひとつだけだと言い切ります。硝酸や化成の肥料を足して補うことは想定していません。だから入れた餌の量が、そのまま水に出てくる窒素の量につながるという意味で、窒素はいちばん扱いやすい養分で、困りごとの中心にはなりにくいと位置づけます。
腸の中で分かれる: 魚が餌を食べると、腸の中の微生物がたんぱく質をアミノ酸へ分け、さらに分解が進んでアンモニウムやアンモニアになると説明します。分けているのは魚そのものではなく腸の微生物だと動画はわざわざ断ります。アミノ酸は窒素を多く含む化合物で、そこから外れた窒素が水へ出る形です。行き先の形はpHしだいで動きます。
食べ残しも同じ: 魚を通らなくても同じことが起きると付け足します。水に残った餌は系の微生物に分解され、やはりアンモニウムかアンモニアになる。つまり口に入ったかどうかにかかわらず、与えた餌の窒素は水の側に現れるわけで、食べ残しを減らしても、入りの総量を決めているのは与えた餌の量そのものだということになります。
電荷の有無で毒: アンモニウムは電荷を持つ一方、電荷のないアンモニアは魚の体へ入り込んでしまうので毒になると分けます。pHを動かしてアンモニウム側へ寄せる手はあるが、pHをいじるのは最善ではないと述べます。水に増えてきたぶんがそのまま魚に戻ってくる形なので、非イオン性アンモニア(NH₃)を減らす別の道を次に挙げます。
硝酸まで運ばせる: 本筋はアンモニアから亜硝酸へと、その先の硝酸まで菌に運ばせることだと結びます。要るのは住み場所と酸素と水温の安定で、菌そのものは弱く壊れやすいと念を押します。担い手は代表として挙がる菌だけでなく何百種にもなりうると述べ、亜硝酸は毒が強いので低く保つと締めます。