酸素が尽きた場所

酸素のめぐり

底に溜まった汚泥の中では、酸素が尽きています。そこでは脱窒や硫化物の生成が進み、水をかき混ぜた拍子に本流へ出てきます。

何が何に変わるか

酸素が尽きると、菌は代わりの受け取り手へ乗り換えます。硝酸を使えば脱窒が進んで窒素ガスが抜け、硫酸を使うと硫化水素——卵の腐ったにおいの気体ができます。後者は硫酸還元菌が有機物を分解しながら、硫酸を最後の受け取り手にあてる反応です(Alipio ら 2022)。どちらも、酸素の代わりを探した結果として起きています。

どこで起きているか

できるのは沈殿の底、目詰まりしたろ材の内側、培地の底、そして流れの止まった隅です。厚い膜の内側にも、酸素の届かない層ができます(Navada ら 2020)。どれも水が動かず、有機物が留まり続けている場所という点で共通しています。培地の底に黒い泥がたまる、卵の腐ったにおいがするは、この層が育っているという合図です。

速さを決めるもの

溜まった有機物の量と、そこへ届く酸素の量の差で決まります。炭素が多いほど膜が厚くなり、酸素の取り合いが増えて嫌気の反応が優勢になります(Navada ら 2020)。硫化水素は海水と汽水の循環式でろ過槽が発生源になりうると報告され、淡水でも起きるが起こりやすさは低いとされています(Rojas-Tirado ら 2021)。

止まるとどうなるか

この層は、崩した拍子に本流へ出ます。溜まっていた有機物と硫化水素が一度に流れ出し、溶存酸素(DO)が急に落ちます。同じ日に底を全部さらうと、濁りもにおいも一度に出ます。掃除を一度に全部やらず、区画を分けて日を空けるのはこのためです。致死に至らない濃度でも、えらや肝臓の傷みが報告されています(Alipio ら 2022)。

解説動画: The TOUGH TRUTHS About DEEP SAND SUBSTRATE Aquariums. Using Deep Sand Beds & Caps in Planted Tanks7/FISHTORY

砂は魔法ではない: 動画は、厚く敷いた砂そのものに養分は無く、使っているのは物理的な性質だけだと前置きします。水と酸素を層で切り分け、下のものを閉じ込め、株を支える道具にすぎない。生き物の出したものが泥として積もり、下の層が働き出すまでには半年から1年半かかると述べ、待てるかどうかが先だと言います。

橙の線が境目: 6年動かした水槽の断面を横から見せ、鉄と硫黄が酸化した橙色の線を指します。開発の担当者から教わった見方として、その線から下では酸素が尽きていると説明します。境目は掘らなくても横から見えるわけです。厚く密に積もった床は、どんな組み方をしてもいずれ酸素の届かない層になると言い切ります。

止まってはいない: 酸素が無い層でも、水がまったく止まっているわけではないと述べます。温度の差による動きがあり、巻貝や小さな生き物が掘って混ぜるぶんもある。その層の菌の性質が、ゆっくり水の側へ移ってくるという見方で、下水処理に使われる緩やかな流れの装置を組まなくても、同じところへ行き着くと話します。

掘ると出てくる: 層を一色でまとめて厚く積むと、下はリンとアンモニアの貯めこみになり、掘った拍子に上へ出てくると警告します。だから株は砂の層に挿すだけにとどめ、下の層まで根を押し込まないと述べます。培地の底に黒い泥がたまるのと同じことが水槽の床で起きていて、崩し方しだいで水の側に返ってきます。

酸素は根が運ぶ: 下の層に酸素があるとすれば根のまわりだけで、株が自分の茎や根を通して運び込んだぶんだと述べます。だからこの床は放っておいて仕上がるものではなく、年の単位の時間と組み方の見当が要ると言います。物理と生き物の決まりを超えた働きを期待しないこと、何が起きている層かを知って作ることに結びます。