ムクノキ
公園と庭の木
触れたときの扱い: 特に知られた刺激はない / 見ごろ: 一年中
葉に触れると、指先がやすりに触れたようにざらつきます。この手ざわりは花や実の季節を選ばず、葉さえ出ていれば確かめられる数少ない決め手です。
ひと目の手がかり
見分けの起点は目ではなく指です。葉の表を軽くなでると紙やすりのようなざらつきが返ります。葉の毛に珪酸がたまるためで、街の落葉高木では他にまず出ません。国土技術政策総合研究所「わが国の街路樹」の上位樹種には現れませんが、社寺林と公園の大木としてはケヤキエノキと並ぶ顔ぶれです。高い枝に届かないときは、幹から出た若い枝の葉で確かめられます。冬に葉を落とすと使えない決め手でもあります。
葉と樹皮
葉は長さ4〜10cmほどの細長い卵形で、先が長く伸びます。鋸歯は基部近くから先端まで縁全体に並び、側脈がそれぞれの鋸歯の先へまっすぐ届くのがエノキとの差です。表裏とも短い毛でざらつき、乾いた葉ほど指に引っかかります。樹皮は若木では灰白色でなめらか、老木になると縦に細長い短冊状にはがれ、幹の下部には板状の張り出しが出ます。
季節の見どころ(花・実・紅葉・冬芽)
4月から5月、葉の伸びと同時に淡い緑の小花が咲きますが、目に留まるほどではありません。9月から10月には直径7〜12mmほどの実が黒く熟し、ムクドリやヒヨドリが枝に集まります。黄葉は淡く、落葉後の冬は短冊状にはがれた樹皮と太い根張りがよく見えます。花も実も派手ではないぶん季節の当たり外れが小さく、葉が出ている間は手ざわりで引ける木です。
触れたらどうなるか
話は葉の表面に限られます。珪酸を含む短い毛に覆われるため、なでると指先にざらつきが残りますが、刺さる毛でも汁でもなく、皮膚の反応は知られていません。この硬さから、乾いた葉が木地や角を磨く材料として使われた記録があります。強くこすれば手の皮膚もこすれるので、確かめるのは指の腹で軽く1回にとどめます。実や樹液についての報告も見当たりません。
まちがえやすい木
相手はエノキです。分ける順番は、まず葉のふちを根元までたどること。ムクノキは鋸歯が縁全体に並び、エノキは先半分だけです。次に側脈の行き先を見ると、ムクノキでは脈が鋸歯の先端に達し、エノキでは縁の手前で曲がります。それでも迷うなら葉の表をなでます。ざらつけばムクノキです。樹皮も、短冊状にはがれるムクノキと、なめらかに残るエノキで分かれます。