心のクセ図鑑

損失回避(損を嫌う)

同じ1万円でも、失う痛みのほうが強い。1万円を得た喜びより、1万円を失った痛みのほうが2倍前後強く感じられる性質です。Kahneman と Tversky(1979年)のプロスペクト理論は、価値は最終的な資産額でなく増減に付き、その曲線は一般に得より損のほうで急だと示しました。…

処分効果(損を嫌う)

上がったものは早く売り、下がったものは持ち続ける。含み益のある銘柄は利益を確定したくなり、含み損のある銘柄は損を認めたくないので持ち続けるという傾向です。Shefrin と Statman(1985年)が名付け、プロスペクト理論に加え、心の会計・後悔を避けたい気持ち・自制の弱さの組み合わせで説明しました。…

サンクコスト(損を嫌う)

取り返せないお金が、判断を縛る。すでに支払ってしまい、何をしても戻ってこない費用のことです。どの選択をしても失う額は同じなので、比べるのはこれから先の得失のはずですが、人は「ここまで払ったのだから」と考えます。Roth ら(2014年)は、お金の埋没費用を扱った研究から98件の効果量を集めたメタ分析で…

心の会計(損を嫌う)

お金に色を付けてしまう。同じ金額でも、どこから来たかによって扱いを変えてしまう性質です。給与は慎重に使うのに、ボーナスや投資の利益は大胆に使う。実際にはどれも同じお金です。Li と Feldman(2025年)は、Thaler(1999年)が振り返った17の古典的な問題を…

アンカリング(引っぱられる)

最初に見た数字が、基準になってしまう。先に示された数字が、その後の判断の基準になってしまう性質です。Tversky と Kahneman(1974年)は、不確かな判断に使う近道の一つに「起点からの調整」を挙げ、便利だが、系統的で予測できる誤りを生むと論じました。Sprouts は、コロンビア大学の教授の授業で…

直近効果(引っぱられる)

最近の出来事が、いちばん重く見える。最近起きたことが、これからも続くと感じてしまう性質です。上げ相場が2年続けば、それが普通の状態に思えます。下げ相場が続けば、二度と戻らない気がしてきます。Malmendier と Nagel(2009年)は、米国の家計の金融調査(1964〜2004年)で…

利用可能性ヒューリスティック(引っぱられる)

思い出しやすいことを、起こりやすいと感じる。鮮明な事例や、繰り返し目にした情報を、実際の頻度より高く見積もる性質です。Tversky と Kahneman(1974年)は、事例や場面の思い出しやすさで頻度やある展開のもっともらしさを判断するやり方を、代表性・起点からの調整と並ぶ3つの近道の1つに挙げ…

フレーミング(引っぱられる)

同じ内容でも、言い方で選択が変わる。「90%の確率で成功」と「10%の確率で失敗」は同じ内容ですが、人の選択は変わります。Tversky と Kahneman(1981年)の実験では、病気の対策を「200人が助かる」と示すと72%が確実な案を選び、同じ結果を「400人が亡くなる」と示すと22%でした。…

FOMO(乗り遅れる恐怖)(群れる)

自分だけ取り残される、という感覚。他人が利益を得ているのを見て、参加しないことが損に感じられる状態です。Fear of Missing Out の略。損失回避の一種ですが、対象が「得られなかった利益」である点が特殊です。Friederich ら(2024年)は暗号資産の実験で、外から乗り遅れをあおる訴えが…

群集心理(群れる)

多くの人が同じことを言うと、正しく思える。自分の判断より、集団の判断を優先してしまう性質です。単純な図形を答える実験で、周囲全員が違う答えを言うと、明らかな誤りでも同調する人が相当数出ました。Berns ら(2005年)は、脳の画像を使った実験で、集団に逆らって自分の判断を通すと扁桃体と尾状核の活動が強まり…

権威バイアス(群れる)

肩書きがあると、内容の検証をやめてしまう。発言の内容ではなく、発言者の肩書きや知名度で信じてしまう性質です。Hovland と Weiss(1951年)の実験では、同じ主張でも、信頼性の低い情報源だと聞いた直後は割り引かれても、数週間後には情報源を忘れて内容だけが信じられやすくなる現象が見られました。…

身内の成功談(群れる)

いちばん断りにくい情報源。友人や家族から聞く「これで儲かった」という話です。悪意が無いぶん、疑うことに罪悪感が伴います。話し手も善意で勧めているので、双方が疑わない構図ができます。Bursztyn ら(2014年)は、証券会社と組んだ現場実験で、組にした相手が買いたがっていると知らされると…

自信過剰(自分を高く見る)

自分は平均より上だと感じる。「自分は平均より判断が優れている」と考える人が多い、という性質です。ただし一様ではなく、Moore と Healy(2008年)の実験では、難しい課題で人は自分の成績を高く見積もる一方、他人より下だとも考え、易しい課題ではその逆でした。予想の幅を狭く見すぎる傾向は…

確証バイアス(自分を高く見る)

自分の考えを支持する情報だけが目に入る。いったん意見を持つと、それを裏づける情報ばかりを集め、反する情報を軽視する性質です。Nickerson(1998年)のレビューは、手元の仮説や信念に都合のよい形で証拠を探し、解釈することを指すと説明しています。判断課題の直後の脳を測った実験(Rollwage ら…

後知恵バイアス(自分を高く見る)

起きた後は、予測できたように思える。結果を知った後で、自分は最初から分かっていたと感じる性質です。実際には予想していなかったことでも、記憶が書き換わります。心理学のレビュー(Roese と Vohs、2012年)は、記憶のゆがみ、出来事の起こりやすさの見方、自分の予測力への思い込み、という3つの面のどれか…

コントロール幻想(自分を高く見る)

自分の関与が、結果を変えると感じる。偶然に左右される事柄でも、自分が関わることで結果を良くできると感じる性質です。サイコロを自分で振ると当たる気がする、という感覚がその例です。Langer(1975年)は、選ぶ・慣れる・競うといった技能の場面の要素を運だけの課題に持ち込むと…

現在バイアス(続けられない)

将来の大きな利益より、今日の小さな満足。遠い将来の価値を、実際より小さく感じてしまう性質です。老後資金の準備が後回しになる理由の一つです。「今すぐもらうか、増えた額を1か月後にもらうか」なら今すぐを選ぶ人が、同じ選択を12か月後と13か月後に置くと待つほうを選ぶことがあります。…

見すぎることの害(続けられない)

確認の回数が増えるほど、判断は悪くなる。頻繁に損益を確認すると、短期の下落に触れる回数が増えます。損失に敏感なまま頻繁に評価することを、Benartzi と Thaler(1995年)は近視眼的な損失回避と呼びました。Gneezy と Potters(1997年)の賭けは、1回ごとには3分の2の確率で負けますが…

分散を退屈と感じる(続けられない)

正しくやっているほど、何も起きない。分散され、低コストで、放置されたポートフォリオは驚くほど退屈です。人は何もしない時間が苦手で、Wilson ら(2014年)の11の実験では、6〜15分ひとりで考えるだけの部屋を楽しめない人が多く、電気ショックを自分に与えるほうを選ぶ人もいました。投資ではなく実験室の話ですが…

リベンジ取引(続けられない)

取り返そうとした瞬間から、投資ではなくなる。損失を出した直後に、それを取り返すために普段より大きな金額を投じる行動です。判断の目的が「良い投資をすること」から「損を消すこと」に入れ替わっています。Thaler と Johnson(1990年)は、実際のお金を使った実験で…