心のクセ図鑑
損失回避(損を嫌う)
同じ1万円でも、失う痛みのほうが強い。1万円を得た喜びより、1万円を失った痛みのほうが2倍前後強く感じられる、という研究で知られる性質です。行動経済学のプロスペクト理論の中心にある考え方で、人は損得を対称には感じません。
処分効果(損を嫌う)
上がったものは早く売り、下がったものは持ち続ける。含み益のある銘柄は利益を確定したくなり、含み損のある銘柄は損を認めたくないので持ち続けるという傾向です。実際の売買データで繰り返し確認されている、最もよく知られたクセの一つです。
サンクコスト(損を嫌う)
取り返せないお金が、判断を縛る。すでに支払ってしまい、何をしても戻ってこない費用のことです。合理的に考えれば今後の判断に影響させるべきではないのに、人は「ここまで払ったのだから」と考えてしまいます。
心の会計(損を嫌う)
お金に色を付けてしまう。同じ金額でも、どこから来たかによって扱いを変えてしまう性質です。給与は慎重に使うのに、ボーナスや投資の利益は大胆に使う。生活費の口座と投資口座を別の世界のように考える。実際にはどれも同じお金です。
アンカリング(引っぱられる)
最初に見た数字が、基準になってしまう。先に提示された数字が、その後の判断の基準になってしまう性質です。無関係な数字でも影響することが実験で示されています。相場では「高値」や「自分の買値」が、強力なアンカーとして働きます。
直近効果(引っぱられる)
最近の出来事が、いちばん重く見える。最近起きたことが、これからも続くと感じてしまう性質です。上げ相場が2年続けば、それが普通の状態に思えます。下げ相場が続けば、二度と戻らない気がしてきます。
利用可能性ヒューリスティック(引っぱられる)
思い出しやすいことを、起こりやすいと感じる。鮮明な事例や、繰り返し目にした情報を、実際の頻度より高く見積もる性質です。飛行機事故のニュースを見た直後に飛行機を怖く感じるのと同じ仕組みが、投資判断でも働きます。
フレーミング(引っぱられる)
同じ内容でも、言い方で選択が変わる。「90%の確率で成功」と「10%の確率で失敗」は同じ内容ですが、人の選択は変わります。提示の枠組みが判断を左右するという性質です。
FOMO(乗り遅れる恐怖)(群れる)
自分だけ取り残される、という感覚。他人が利益を得ているのを見て、参加しないことが損に感じられる状態です。Fear of Missing Out の略。損失回避の一種ですが、対象が「得られなかった利益」である点が特殊です。
群集心理(群れる)
多くの人が同じことを言うと、正しく思える。自分の判断より、集団の判断を優先してしまう性質です。実験では、明らかに間違った答えでも、周囲全員が同じ答えを出すと同調する人が相当数出ることが示されています。
権威バイアス(群れる)
肩書きがあると、内容の検証をやめてしまう。発言の内容ではなく、発言者の肩書きや知名度で信じてしまう性質です。専門家の意見は参考になりますが、専門家であることは、その予測が当たることを意味しません。
身内の成功談(群れる)
いちばん断りにくい情報源。友人や家族から聞く「これで儲かった」という話です。悪意が無いぶん、疑うことに罪悪感が伴います。話し手も善意で勧めているので、双方が疑わない構図ができます。
自信過剰(自分を高く見る)
自分は平均より上だと感じる。大半の人が「自分は平均より判断が優れている」と考える、という性質です。運転技術から投資判断まで、幅広い領域で確認されています。全員が平均より上ということは、定義上ありえません。
確証バイアス(自分を高く見る)
自分の考えを支持する情報だけが目に入る。いったん意見を持つと、それを裏づける情報ばかりを集め、反する情報を軽視する性質です。意識的に公平に見ようとしても働きます。
後知恵バイアス(自分を高く見る)
起きた後は、予測できたように思える。結果を知った後で、自分は最初から分かっていたと感じる性質です。実際には予想していなかったことでも、記憶が書き換わります。
コントロール幻想(自分を高く見る)
自分の関与が、結果を変えると感じる。偶然に左右される事柄でも、自分が関わることで結果を良くできると感じる性質です。サイコロを自分で振ると当たる気がする、という感覚と同じものです。
現在バイアス(続けられない)
将来の大きな利益より、今日の小さな満足。遠い将来の価値を、実際より小さく感じてしまう性質です。30年後の1,000万円より、今日の10万円のほうが強く感じられます。老後資金の準備が後回しになる根本的な理由がここにあります。
見すぎることの害(続けられない)
確認の回数が増えるほど、判断は悪くなる。頻繁に損益を確認すると、短期の下落に触れる回数が増えます。1日単位で見れば下落する日は半分近くありますが、10年単位で見れば下落する期間はずっと少なくなります。見る頻度が、体感するリスクを決めています。
分散を退屈と感じる(続けられない)
正しくやっているほど、何も起きない。分散され、低コストで、放置されたポートフォリオは驚くほど退屈です。人は退屈に耐えられず、何かをしたくなります。投資において、その「何か」はたいてい成績を悪化させます。
リベンジ取引(続けられない)
取り返そうとした瞬間から、投資ではなくなる。損失を出した直後に、それを取り返すために普段より大きな金額を投じる行動です。判断の目的が「良い投資をすること」から「損を消すこと」に入れ替わっています。