現在バイアス
続けられない
効く場面: 持っている間
将来の大きな利益より、今日の小さな満足
どういうクセ?
遠い将来の価値を、実際より小さく感じてしまう性質です。老後資金の準備が後回しになる理由の一つです。「今すぐもらうか、増えた額を1か月後にもらうか」なら今すぐを選ぶ人が、同じ選択を12か月後と13か月後に置くと待つほうを選ぶことがあります。同じ1か月の差で選び方が入れ替わるのが目印だと、ボドゲ学の解説動画は説明しています。
相場で何が起きるか
投資を始めない、積立額を上げない、途中で使ってしまう。米国の幅広い層を調べた Goda ら(2015年)では、現在バイアスが強いほど退職資金が少ない関係が、IQ や金融の知識を考慮しても残りました。iDeCo(個人型確定拠出年金)は60歳まで引き出せず、Laibson(1997年)が論じた「すぐ売れない資産が自分を縛る」働きに近い仕組みです。
仕組みで防ぐ
意思の力に頼らず、仕組みにする。給与振込口座から自動で積立に回し、証券口座のアプリは消しておきます。Thaler と Benartzi(2004年)が考案した「Save More Tomorrow」は、将来の昇給分から積立額を上げると先に約束する方式で、本人たちの報告では導入例で平均の貯蓄率が3.5%から40か月で13.6%になりました。毎回決断しなくていい状態が土台です。
出典
- 論文・英語 Gopi Shah Goda, Matthew R. Levy, Colleen Flaherty Manchester, Aaron Sojourner, Joshua Tasoff(NBER Working Paper 21482)(2015) The Role of Time Preferences and Exponential-Growth Bias in Retirement Savings
- 論文・英語 David Laibson(The Quarterly Journal of Economics)(1997) Golden Eggs and Hyperbolic Discounting
- 論文・英語 Richard H. Thaler, Shlomo Benartzi(Journal of Political Economy)(2004) Save More Tomorrow™: Using Behavioral Economics to Increase Employee Saving
- 動画 ボドゲ学 【行動経済学入門】第1回「現在バイアス」【VOICEROID解説】
解説動画: ドル・コスト平均法とは/金融経済教育推進機構 (J-FLEC) チャンネル
いつ買うかは分からない: 値段が上がるか下がるかは誰にも分からない。高値で買ってしまったり、安値なのに買わなかったりという後悔がついて回る——そのショックを軽くするための考え方として時間分散が紹介される。
ドル・コスト平均法とは: 定期的に一定額を投資する方法。毎月10株ずつ買う人(定量購入)と、毎月1万円ずつ買う人(定額購入)を4か月比較する実例が出てくる。
実例の結果: 株価が上下した4か月で、10株ずつ買った人は40株、1万円ずつ買った人は46.7株。1株あたりの平均単価が143.5円安くなった、という数字で示される。値段が高い月は少なく、安い月は多く買えるためだ。
注意すること: 一方的に価格が下落していく場合は、時間分散をしても損をすると明確に断っている。平均単価を下げられるという効果であって、損をしない方法ではない。
解説動画: 松谷会長が聞く『行動経済学とはなにか?』/資産運用業協会チャンネル
今日と1週間後: 「今日1万円もらう」と「1週間後に1万100円もらう」——多くの人は今日の1万円を選ぶ。ところが「1年後に1万円」と「1年と1週間後に1万100円」だと、1年待つならあと1週間くらいと後者を選ぶ。
1年後に選択が変わる: ここに問題がある。今から1年経つと、2つ目の質問は1つ目の質問そのものになる。つまり1年と1週間後を選んだ人は、1年後には選択を変えたくなる。遠い将来については忍耐強い計画を立てられるのに、目前になるとせっかちになる——これが現在バイアス。
夏休みの宿題と同じ: 始まる前は最初にやるつもりで計画を立てるのに、始まると毎日先延ばしして最後の2日で片づける。伝統的な経済学は、人は計画どおり実行できるものだと考えていたという対比で締められる。