利用可能性ヒューリスティック

引っぱられる

効く場面: 買うとき

思い出しやすいことを、起こりやすいと感じる

どういうクセ?

鮮明な事例や、繰り返し目にした情報を、実際の頻度より高く見積もる性質です。Tversky と Kahneman(1974年)は、事例や場面の思い出しやすさで頻度やある展開のもっともらしさを判断するやり方を、代表性・起点からの調整と並ぶ3つの近道の1つに挙げ、たいていは役に立つが、系統的で予測できる誤りを生むと論じています。投資判断にも同じ近道が入り込みます。

相場で何が起きるか

成功談は語られ、失敗談は語られません。損失は静かに消え(生存者バイアス(消えたファンド))、成功の確率が高く見えます。Kliger と Kudryavtsev(2010年)は、アナリストの推奨の変更への株価の反応が、同じ日の市場の収益がプラスなら引き上げで、マイナスなら引き下げで強かったと報告しています。著者は市場の収益を、成功や損の思い出しやすさの代わりの指標にしています。

仕組みで防ぐ

個別の話ではなく、全体の統計を探す。「この手法で成功した人」ではなく「この手法を使った人全体の分布」を見てください。前者はいくらでも見つかります。Lichtenstein ら(1978年)の実験では、死因の頻度の判断は一貫しつつ系統的に偏り、偏りの源を避けるよう具体的に指示されても被験者は補正できませんでした。気をつけるだけに頼らず、統計を見る手順を先に決めておきます。

出典

  1. 論文・英語 Amos Tversky, Daniel Kahneman(1974) Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases
  2. 論文・英語 Doron Kliger, Andrey Kudryavtsev(2010) The Availability Heuristic and Investors' Reaction to Company-Specific Events
  3. 論文・英語 Sarah Lichtenstein, Paul Slovic, Baruch Fischhoff, Mark Layman, Barbara Harris Combs(1978) Judged frequency of lethal events

解説動画: 行動経済学の魔法!あなたの脳が数値予測を外す理由(利用可能性ヒューリスティクス)【行動経済学4】/中川先生のやさしいビジネス研究

クイズから始まる: 「Rから始まる単語」と「Rで終わる単語」はどちらが多いか——この問いが、人間の判断のクセを知る例として置かれる。思い出しやすいほうを多いと感じてしまう、というのが利用可能性ヒューリスティックの核心。

速さと引き換えに何を失うか: ヒューリスティックの働きによって、人はパッと短時間で答えを出せる。しかしそのスピードのために正確さを犠牲にしている。この交換が起きていることに気づけるかどうかが分かれ目になる。

なぜ投資で効くか: 行動経済学は「人間らしい意思決定がどう行われるか」を分析する学問だと定義される。日常の経済的な判断がどう下されているかを扱う以上、投資判断もその対象そのものになる。