後知恵バイアス
自分を高く見る
効く場面: 暴落時
起きた後は、予測できたように思える
どういうクセ?
結果を知った後で、自分は最初から分かっていたと感じる性質です。実際には予想していなかったことでも、記憶が書き換わります。心理学のレビュー(Roese と Vohs、2012年)は、記憶のゆがみ、出来事の起こりやすさの見方、自分の予測力への思い込み、という3つの面のどれか、またはその組み合わせとして現れると整理しています。
相場で何が起きるか
暴落の後には「あの兆候は明らかだった」という解説が並びます。同じ兆候は、暴落しなかった年にも何度も出ていました。この錯覚が「次は当てられる」という自信につながり、自信過剰を強化します。Biais と Weber(2009年)の実験では、学生66人で変動の見積もりが小さくなり、ロンドンとフランクフルトの投資銀行員85人ではバイアスが強い人ほど成績が低い傾向でした。
仕組みで防ぐ
予想を、日付を付けて記録する。知っているだけでは防げません。Fischhoff(2025年)は、50年の研究を振り返り、このバイアスを警告しても目立った効果はなかったと述べています。記録が無ければ、記憶は自分に有利な方向へ書き換わりやすくなります。読み返すのは気まずい作業ですが、その気まずさが正確さの証拠です。予想を確率で書く方法も、ある解説動画(【行動経済学と投資】チャンネル)が勧めています。
出典
- 論文・英語 Neal J. Roese, Kathleen D. Vohs(Perspectives on Psychological Science)(2012) Hindsight Bias
- 論文・英語 Bruno Biais, Martin Weber(Management Science)(2009) Hindsight Bias, Risk Perception, and Investment Performance
- 論文・英語 Baruch Fischhoff(Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance)(2025) Fifty years of hindsight bias research—Reflection on Fischhoff (1975)
- 動画 【行動経済学と投資】感情に左右されない取引を学ぶチャンネル 「この株、売らなきゃよかった…」という後悔を減らす『後知恵バイアス』を解説
解説動画: 後知恵バイアスに気をつけよう。ついつい、人の失敗や結果はあとからわかりきっていると思いがちです。/勝間和代が徹底的にマニアックな話をするYouTube
後から見ると分かりきって見える: 何かが起こってから「そうなると思っていた」「分かりきっていた」と感じるのが後知恵バイアス。大きな事件の後には、そう見える情報が事後的にいくらでも見つかる——しかし事が起きない限り、個々の断片からそれを見抜くのは極めて難しい。
組織で起きること: 失敗の報告に対して「分かりきっていただろう」と叱責する上司の例が挙げられる。後から情報をつなげれば分かるだけで、事前に見抜くのは別の難しさ。そして叱責が続くと誰も失敗を報告しなくなる。
覚えておく形: 起きる前から見た光景と、起きた後から見た光景はまったく違う。後ろから見た景色は前から見た景色と同じとは限らない——この一文をそのまま持っておくと、自分の予測の記憶を修正しにくくなる。